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〜*桜梅*〜

作者: 紫陽花

高校と中学校の間に一本の坂道がありました。


そこは春になると満開の桜と一本の梅の花が咲くのです。


私達はその思い出の場所を『桜梅並木通り』と呼ぶのです。


  


時は、平成14年。

私は14歳。

中学2年生の私はまだ子供でした。

その頃、好きな子がいて私はたくさんアピールをして、彼に迷惑ばかりかけていた―――


「あの〜…これ。」

私の手には小さな袋がぶら下がっていた。

この記憶はバレンタイン

私が初めて経験した苦いけど、ちょっと甘酸っぱい思い出。

「………ありがとう」

彼は、おもむろに手を伸ばし袋を受け取った。

その場所は、あの『桜梅並木通り』



「あの頃は楽しかったなぁ…青春してたべ。」

時は平成17年の春。今の私は言葉もがさつになっている。

だから、なのか青春まっただ中の年齢なのにババ臭く思えた。

「うちは、今は青春してるよ〜ねえさんは本当に誰もいないわけぇ〜?」

ねえさんとは私のあだ名。

この一緒にしゃべっている子はタメの早耶。私たちはいつもと同じように教室の前側の窓側の席でだべっている。

意気投合の仲ではないが、何でも話せる良い友達。

そんな私たちは最近彼氏が欲しいと常々話していた。

「ねえさん、やっぱり好きな人作んなきゃ彼氏できないと思いますよォ〜。」

当たり前のことを横目で言う。

自分でも納得できる答えにそっけなく頷いた。

「まぁ、そうなんだけどねぇ〜。あっねぇ見て見てっ!」

私は、話を逸らすように目に付いた人の話をふった。

そして私は、目で早耶に位置を教える。

「ん?あ〜あいつねぇ〜キングかぁ〜とうとう彼女できたんだねぇ。うちら遅れてる〜♪」

笑いながら早耶は言う。でも、本当は独りでいるのが寂しいのである。

『登校』

『下校』

『デート』

『手をつなぐ』

『キスをする』


なんて…


色々したい。でも、好きな人じゃなきゃヤだ。なんて、子供なのかな…と想像していた。



『私は、何を思って恋を望んでいるのか?人生それだけじゃないと、どうして思わないのか?私はただの人間としての生き方を全うしなくちゃならないんだろう。』

言い聞かせる言葉は山ほどあっても理解をしようとしても思考が追いつかなかった。


「好きな人かぁ…。」


「そう言えば、ねえさん、キングのこと好きだったよねぇ?」

早耶は気にする様子もなく言う。

私は、それだけに自分が気にしているのを言い出せないタイミングとなった。

「う〜ん。そだね。過去の人だよ。」


「ふ〜ん」

にやにやしていると自分の心が読まれたんじゃないかと冷や冷やする。

「あっなんかキングと一緒にいた子って彼女じゃないんだってさぁ〜。」


私は一瞬ドキッとした。

「へぇ〜なんだぁつまんないなぁ。」

「まだ、気になってたりするんじゃないの?」

早耶が追い込もうとするが、私は冗談じゃないと言わんばかりの声色で言った。

「なぁ〜んだ。こちらもつまらんねぇ。」

ババ臭くわざと言う早耶は感づいたらしい。

「妙に勘ぐったりしないよーに!!」

「はぁ〜い。ねえさん。」


キング…彼は赤本君という、私が好きだった人。

『キング』というのは、彼が中学校の頃トランプ好きで、いつものようにキングのカードが最後まで残って負けるというのが有名だったので、『キング』とあだ名がついた。


私は、あのバレンタインから動けないまま高校生になっていたのかもしれない。

中学校の頃にいた彼女とも別れたとは聞いていたけど、私の彼への気持ちはなくなっていたとばかり思っていた。

それに私は同じ高校に行きたくなかったのに一緒になってしまった。

その間に気になる人なんて独りもいなかった。

なのに、彼を何度も見つけてしまう自分に今まで気付きもしなかった。



「ねえさ〜ん。」

早耶が深刻そうな顔をしてやってきた。

「どした?」

「…うち、どうすればいいんだかわかんない。」

「ん?」

「好きな人に彼女ができてたぁ〜」

早耶は、涙を浮かべて抱きついてきた。

「早耶は、それでどうしたいの?気持ち伝えるの?諦めんの?」

早耶は鼻をすすりながら首を振る。

「ヤだよ。気持ち伝えようと思ったの、でもあいつが『キング』が!!」

「なにそれ?」

早耶は順番通りに落ち着きながら話していった。

「うちが、ねえさんのために購買でプリン買っていってあげようかなって思ったら誰かに手を引っ張られたの。その手を引っ張った人の顔を見たらキングで…なんか、話があるって言われたの。そんで、後にしてって言ったら、私の好きな人がいて女の子と楽しそうに話してて…その手をつかまれたままのところを見られたの。そしたら、彼がこっちにきてキングと彼が話をしていたら彼がダブルデートでもしようか?って。キングがうちの彼氏ってことになっちゃって…。」


私は、早耶の話に聞き入っていた。

『キングは早耶が好きかもしれない。』

『だけど、友達じゃん。役に立ってあげなきゃいけないじゃん。』

色々頭のなか巡ったけど、『今のことをなんとかしなくちゃ。』

「早耶、キングとはいつ話すの?」

「放課後…。」

「じゃあ、あんたは放課後に好きな人に気持ち言いに行きなさい。」

早耶は驚いた顔をして私を見た。

「キングは私に任せなさい。」

自分でいうのもなんだけど姉御肌って言うか、やっぱり『ねえさん』ってやつが性分なんだろうなぁ…。

「ねえさん、ありがとう。でも、本当に平気?」

「なんとかなるよ。早耶は自分のことだけ考えなさいっ!!」

「うん。」


私は、何をしようとしているのだろうか?

『キングに思いを告げる?』

そんなこと思ってはいないけど。

もし、チャンスがあるのならって過去の自分は思っていたんだと思う。

過去の自分も、今の自分も、未来の自分もみんな同じなら…彼への気持ちも変わらないんじゃないって。なんとなく思った。




「赤本…。」

「…あれ、木下。古森は?」

彼の普通な態度、望みなんてこれっぽっちもないのが良くわかる。

でも、今日は気持ちを伝えるんじゃなくて早耶のため。

「早耶は、今好きな人に気持ち伝えに行ってる。」

「へぇ〜。そうか。宮田にだろ?」

案外普通…?

早耶が好きじゃなかったの?

なんで平気なの?

わかんないよ…

「…うん。宮田君。赤本は早耶のこと好きなんじゃないの?」

「まぁ、友達としてはな。いいやつだし。」

あれ?

「え、じゃあなんでこんなとこに早耶呼んだの?」

「ん〜…いや〜…ちょっと相談があって。」

…?

相談?

なんで?

「そうなんだ〜。宮田君のところ行っちゃってるから来ないと思うんだ。それを伝えに来ただけだから…」

私は、こんなチャンスを逃していいのか?なんて思って…

話し終わってから少し沈黙があった。

変に思われたかな?

「木下、相談に乗ってくれる?」

私は、ちょっと笑みがこぼれそうになった。

「うん。いいよ。」




「宮田君」

「古森?なに?」

「うち、宮田君が前から好きだったの。赤本君のは誤解で、だから…その…あの…。』

「そっか〜奇遇だなぁ〜俺も古森のこと好きなんだけど、勘違いしてた?」

「へ?」

「そうだな〜ダブルデートいつにしようか?」

「え?」

「だから、俺と古森と――――



「俺、好きなやつがいて…なんも答えてやんなかったんだ。本当は好きなのに、俺が友達といるときにバレンタイン渡すんだもんな〜。あっちもなんも言わないもんだから、なんもいえなかったし、ホワイトデー渡せばよかったのに、今更どうすればいいものかと思ってたら…いつのまにかその子とは別の子で彼女がいるってことになってて焦った〜。そんで、その誤解と、そのせっかちで無口な子にどう説明したらいいんだかってのが悩みなんだよ。」

…好きな子がいるんだ。

また、失恋だ。

でも、こんなチャンスないよ。

『言え、私。前も言えなかったじゃん。』

「きっと、その子は赤本のことが好きで好きでたまらなかったんだよ。だから、正直に今の気持ちを伝えればいいんだよ。」

「さすが、ねえさん。」

「どうし致しまして。」

なにが、ねえさんなんだか…でも、少し前の感じに戻れた気がする。

「じゃあ、聞いて。」

「え?」

「俺、木下が前から好きだったんだ。中学の頃は本当にごめん。俺、子供だったから…ちゃんと答えることも助けることも出来なくて。」

「…うそ・・・・」



「ダブルデートは俺と古森と赤本と木下のことだよ。」



『桜梅並木通り』には、今年も満開に咲きました。

只今は、夏に向かい青い葉を茂らせて来年に備えているのです。


梅は桜に負けずに今年も咲いたのです。

満開の桜に見劣られることもあるけれど、だれかは必ずあなとのことを見つけられる。


あの『桜梅並木通り』は私の恋の始まりでした。


だから、これからも次の恋を叶える為に―――


凄く、ハッピーエンドです。自分でも恥かしい限りですが、この話を読んで幸せを感じでくれたら良いと思います。単純な話ですが、私は自分の作品が始めて好きだなぁ〜と思いました。

読んでくださった方が幸せでありますように。

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― 新着の感想 ―
[一言]  文法・文章評価に関して星が三つなのは、書き始めを一字さげて書かないてん(短編なので、わざとかも知れませんが)はマイナスだと思います。それから、三点リーダーが統一されていなかったりするので、…
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