第7話 価値ゼロ、再確認の儀
「では次。
“参考枠”として――リオ」
教官がそう言った瞬間、
訓練場に集まった視線が、一斉に俺へ向いた。
(参考枠って何だ)
今日は公開訓練日。
村の大人、役人、他の教官まで見に来ている。
つまり――
(人前)
最悪だ。
◆ 公開の場に引きずり出される
俺は、できるだけ目立たない歩幅で前に出た。
ざわざわ。
「……あれが測定不能?」
「価値ゼロの?」
「噂ほどでも……」
聞こえている。
全部、聞こえている。
(帰りたい)
教官が説明する。
「今日は“簡易対応試験”だ。
突発事態への反応を見る」
突発。
事態。
(やめて)
◆ 敵役、満を持して登場
「……ああ、噂の子か」
鼻にかかった声。
振り向くと、
年上の少年が腕を組んで立っていた。
成績上位。
態度に自信あり。
明らかに“できる側”。
――レオン。
「測定不能?
はは。要するに、何もできないってことだろ」
周囲が、くすっと笑う。
(うん、正解)
レオンは、俺を見下ろすように言った。
「安心しろよ。
今日は“ちゃんと”見せてやる」
何をだ。
◆ 嘲笑タイム、開始
試験内容は簡単だった。
複数人で簡易陣を組み、
指定位置まで“模擬魔力塊”を運ぶ。
バランスが悪いと、暴発する。
――当然、レオンが指揮を取る。
「おい、測定不能。
お前はそこに立ってろ」
端っこを指される。
(助かった)
「動くと邪魔だからな」
(助かった……?)
周囲が、笑う。
「価値ゼロは価値ゼロらしくしてろってさ」
「ははは」
俺は、反論しなかった。
反論すると、目立つ。
立っているだけなら、怒られない。
完璧だ。
◆ 主人公、何もしていない
作業が始まる。
レオンは的確だ。
指示も的確。
周囲も、それに従う。
(……普通に優秀だな)
俺は、言われた通り、端に立っていた。
何もせず。
何も考えず。
……いや、少し考えていた。
(これ、近づくと危ないな)
だから、一歩だけ下がった。
それだけだ。
◆ 違和感の芽
「……おい」
レオンが、眉をひそめる。
「なんで下がった?」
「……言われてないけど」
俺は、正直に答えた。
「近いと、邪魔かなって」
失笑。
「はは。
お前が何かできるとでも?」
(できない)
だが、その直後――
模擬魔力塊が、不安定に揺れた。
「……?」
誰かが声を上げる。
揺れが、増幅する。
「ちょ、待て……!」
レオンが指示を飛ばすが、
全員が動きすぎて、逆に乱れる。
◆ 敵、自分で詰む
「落ち着け!
俺の指示を――」
その瞬間。
――バチン!
模擬魔力塊が、暴発した。
小規模。
だが、派手。
煙。
衝撃。
悲鳴。
そして。
俺だけ、無傷。
なぜなら――
下がっていたから。
◆ 公開処刑(敵)
煙が晴れる。
全員、転んでいる。
レオンも、尻もち。
俺は、端で立っていた。
……立っていただけだ。
沈黙。
「……あれ?」
誰かが、言った。
「リオ、無事だぞ」
教官が、ゆっくりこちらを見る。
「……なぜ、下がった?」
俺は、答えた。
「……なんとなく」
その瞬間。
空気が凍った。
フィンが、息を呑む。
「……最初から、危険域を外していた……」
(違う)
レオンが、青ざめる。
「ば、馬鹿な……」
周囲が、ざわつく。
「指示に従わなかったのに……」
「結果、一人だけ……」
◆ 主人公の内心
俺は、心の底から思った。
(俺、立ってただけなんだけど)
だが、誰もそれを信じない。
視線が、
畏怖に変わっている。
教官が、低い声で言った。
「……試験は中止だ」
誰も反対しなかった。
レオンは、
その場で完全に評価を落とした。
俺は、帰り道で、フィンに言った。
「なあ」
「はい!」
「俺、何もしてないよな?」
フィンは、真剣な顔で答えた。
「“何もしなかった”んです」
……違う。
だが、それ以上は言えなかった。
次の瞬間、
俺は確信した。
――これは、もう逃げられない。
そして。
明日、
決定的な一言が下される。
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