第6話 本人不在で話が進んでいく
その頃、俺は――
「……ふぁ」
日当たりのいい物置の裏で、
昼寝をしていた。
理由は簡単だ。
(今日は俺、特にやることないって言われたし)
教官にそう言われたのだから仕方ない。
命令には従う主義だ。
木箱を枕にして横になり、
俺は平和にまぶたを閉じていた。
――この時点で、
自分の評価が別の場所で爆上がりしているとは、
知る由もない。
◆ 一方その頃・教官会議
「……で、その件だが」
訓練場の詰所。
数名の教官と、村の役人が集まっていた。
「昨日の混乱、覚えているな」
「ええ。道具箱の件ですね」
「幸い、事故は起きなかった」
全員が、無言で頷く。
だが、沈黙の理由は一つだった。
「……リオの動きだ」
その名前が出た瞬間、
空気が一段、引き締まる。
◆ 勝手に整理される評価
「彼は、騒ぎが起きる前に下がっていた」
「しかも、最も安全な位置だ」
「指示も出さず、注意も引かず……」
誰かが、ぽつりと言う。
「あれで五歳だろ?」
場が、ざわっとする。
「普通は、慌てて動く」
「もしくは、野次馬になる」
「だが、彼は違った」
教官の一人が、顎に手を当てる。
「……状況が確定するまで、
“動かない”ことを選んだ」
完全に、違う。
俺はただ、
面倒を避けただけだ。
◆ 「測定不能」の再解釈
「測定不能、という結果も……」
年配の教官が、ゆっくり言う。
「今思えば、納得できる」
「魔力がないのではない」
「表に出さないだけだ」
「あるいは……」
そこで、一瞬の間。
「出す必要がない場面では、出さない」
誰かが、深く息を吐いた。
「……怖いな」
「だが、合理的だ」
評価が、どんどん“整えられていく”。
◆ フィン、無自覚に決定打を打つ
「……すみません」
その場に、フィンがいた。
なぜか、呼ばれてもいないのに。
「彼の近くにいる者として、一言」
(いるな)
教官たちは、頷いて続きを促す。
フィンは、真剣な顔で言った。
「リオさんは、“判断するための情報”が揃うまで、
絶対に動きません」
(違う
怖いから動けないだけ)
「でも、一度“安全”と判断したら、
最短で抜けます」
(寝てただけ)
「だから、無駄がない」
場が、静まる。
そして――
「……なるほど」
誰かが、完全に納得した声を出した。
(やめろ)
◆ 結論が出る(勝手に)
教官のまとめ。
「よし。方針を決めよう」
――嫌な言葉だ。
「リオは、
積極的に前へ出さない」
「だが、
集団の基準点として扱う」
全員が、同意する。
「測定不能者を、
不用意に刺激する必要はない」
「むしろ……」
教官は、低い声で言った。
「“動かない者がいる”という前提で、
他を動かす」
それは、完全に
戦術枠の扱いだった。
◆ 主人公、何も知らない
その頃、俺は寝返りを打っていた。
(平和だ……)
誰にも呼ばれない。
誰にも見られない。
最高だ。
その後、訓練終了の鐘が鳴る。
俺は、のそのそと起き上がり、
詰所に向かった。
「……あ、リオ」
教官が、いつもより優しい声で言う。
嫌な予感しかしない。
「今日はもう上がっていい」
「……はい」
俺は即答した。
(余計なこと、聞かない)
フィンが、横で小さく頷いている。
なぜか、誇らしげに。
◆ エンディング
家に帰る途中、俺は空を見上げた。
「……なんか、今日は平和だったな」
間違っていない。
俺の視点では。
だが、同じ空の下で、
俺の評価は――
・動かない基準
・刺激厳禁
・要観察枠
という、
非常に面倒なラベルを貼られていた。
それを知るのは、
もう少し先の話だ。
俺は、その夜も安らかに眠った。
次の日、
公開の場に引きずり出されることも知らずに。
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