第33話 彼は人ではない
その会議に、
彼はいなかった。
呼ぶ理由が、
もうなかったからだ。
◆ 静かな会議室
「……報告は以上だ」
淡々とした声。
机の上には、
分厚い資料が積まれている。
地図。
記録。
被害想定。
だが、
実績欄だけが――
妙に静かだった。
「……被害、
想定より少なすぎるな」
「いや、
ほぼ“なし”だ」
誰かが、
喉を鳴らす。
◆ 誰も成果を説明できない
「誰が、
何をした?」
その問いに、
即答はなかった。
「……誰も、
決断していない」
「だが、
崩壊もしなかった」
「英雄はいない」
「責任者も、いない」
沈黙。
その沈黙が、
答えだった。
◆ 名前が出る
「……リオは?」
誰かが、
ようやく口にする。
「後方配置」
「発言なし」
「指示なし」
「介入なし」
報告は、
淡々としている。
「……だが」
一拍。
「彼がいる間、
誰も暴走しなかった」
◆ 結論への道筋
「人材、
という言葉は違うな」
年配の男が言った。
「才能でもない」
「技能でもない」
「再現もできない」
誰かが、
小さく笑う。
「……厄介だな」
◆ 世界の結論
「彼は――」
静かな声。
「人ではない」
否定でも、
侮辱でもない。
ただの、
分類だった。
「彼は、
“安全”という状態だ」
「配置すると、
皆が慎重になる」
「判断が遅れる」
「だが、
壊れない」
誰も、反論しない。
◆ 使えないという結論
「……使えば、
確かに便利だ」
「だが」
一拍。
「使い続ければ、
意味が壊れる」
「依存が始まる」
「判断を放棄する」
「それは、
世界として危険だ」
結論は、
自然にまとまった。
◆ 決定事項
「これ以上、
前線に出すべきではない」
「独占も、
囲い込みも不可」
「……手放そう」
誰も、
異論を唱えなかった。
それは、
敗北宣言だった。
物語として、
これ以上使えない存在
だと認めたのだ。
◆ エンディング
会議は、静かに終わった。
資料は、
正式記録から外される。
名前は、
表に出ない。
だが――
判断を迷った時、
人々は思い出す。
何もしない誰かが、
そこにいた頃のことを。
その誰かは、
もう、物語の外にいる。
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