第32話 誰も決断しなくなった
異常なのは、街じゃない。
人だ。
昨日から、
この場所では――
誰も決断しない。
◆ 会議が終わらない
「……で、どうする?」
円卓を囲んで、
誰かが言った。
だが、
その先が続かない。
「いや……
もう少し状況を見てから」
「そうだな……
焦る必要はない」
「一度持ち帰るか?」
(持ち帰る場所、
もうないだろ)
俺は、壁際で立っていた。
後ろ。
定位置。
発言権は、
最初からない。
(助かる)
◆ 視線だけは来る
誰かが、
ちらっと俺を見る。
別の誰かも、
また見る。
だが――
何も聞いてこない。
(聞くなよ
何も答えられないから)
沈黙が、
じわじわ延びていく。
◆ 本来なら起きること
本来なら。
この空気は、
爆発する。
「もういい、
俺が決める!」
「責任は俺が取る!」
誰かが、
そう言い出すはずだ。
だが。
誰も言わない。
◆ 理由(無自覚)
「……ここで
無理に動くのは、
危険だ」
誰かが、
ぽつりと呟く。
「そうだな」
「慎重に行こう」
「……ああ」
そのやり取りの端で、
俺は思っていた。
(俺、
関係ないよな?)
◆ 決断しない結果
会議は、
結論が出ないまま終わった。
だが。
怒号はない。
衝突もない。
街は、
今日も壊れなかった。
被害も、
増えていない。
(……あれ?)
◆ 主人公の実感
夕方。
通りを歩きながら、
俺はぼんやり考えていた。
(決断しないって、
こんなに
平和なんだな)
もちろん、
いつまでもは無理だ。
だが、
今日一日は持った。
それだけで、
この街にとっては
十分すぎる成果だった。
◆ 小さな勘違い
「……今日も、
大きな混乱はなかったな」
誰かが言う。
「リオが
来てから、
空気が違う」
(だから関係ない)
俺は、
聞こえないふりをした。
◆ エンディング
夜。
宿の屋上で、
俺は空を見ていた。
街はまだ、
息をしている。
ギリギリだが、
確かに生きている。
「……今日は、
本当に何もしてない」
そう呟くと、
少しだけ安心した。
だが。
何も決断しなかったことが、
どれほど異常か。
それを、
理解しているのは――
俺だけだった。
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