第21話 噂は勝手に育つ
場所は、ここではない。
リオが木陰で何もせず、
記録係に見られている頃――
別の場所では、
まったく別の話が進んでいた。
◆ 外部組織の会話
「……聞いたか?」
石造りの建物。
長机を囲む数人の大人たち。
「測定不能の子の話だろ」
「そう」
一人が、紙を机に置いた。
「最近、
事故率ゼロの訓練班がある」
「……偶然では?」
別の男が首を傾げる。
「そう思った」
「だが、
その班には必ず――」
指で、名前が叩かれる。
「リオ」
沈黙。
◆ 噂の歪み
「何をした?」
「……何もしていない」
「……は?」
「後方に立ち、
発言も最小限」
「それで?」
「何も起きない」
誰かが、低く笑った。
「……一番信用できない報告だな」
◆ 別視点:別学園
別の場所。
若い指導官が、報告書を読んでいる。
「測定不能……」
「価値ゼロ判定……?」
隣の者が言う。
「だが、
要注意対象として管理中だそうだ」
「……矛盾している」
指導官は、紙を伏せた。
「矛盾しているものは、
だいたい厄介だ」
◆ 憶測が始まる
「力を隠している?」
「無自覚な影響型?」
「場を安定させる資質?」
言葉だけが、
先行していく。
誰も、
本人を見ていない。
誰も、
本人の声を聞いていない。
◆ 結論だけが共有される
「一つだけ、確かなことがある」
年配の男が言った。
「放置できない」
全員が、頷いた。
「刺激は避ける」
「だが、観測は続ける」
「可能なら、実地で見たい」
誰かが、ぽつりと呟く。
「……かわいそうに」
だが、その言葉は、
すぐに流された。
◆ 主人公、知らず
その頃。
リオは、指定された範囲で
空を見上げていた。
「……今日も、何も起きないな」
それが、
一番危険な状態だと
彼は知らない。
◆ エンディング
噂は、
事実よりも速く、
正確さよりも強く、
広がっていく。
そして、
噂が一定量を超えたとき。
世界は、
確認せずにはいられなくなる。
次に動くのは――
彼ではない。
彼を、動かそうとする側だ。
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