第19話 記録される側になった
その日、俺は一つだけ違いに気づいた。
(……人、増えてないか?)
正確には、
一人増えていた。
◆ 新しい人
「……リオ」
教官に呼ばれる。
「今日から、
こちらの者が同行する」
紹介されたのは、
眼鏡をかけた青年だった。
無表情。
手には、分厚い記録帳。
「……記録係のサムです」
淡々とした声。
(嫌な役職だな)
◆ 記録の内容
「何を、記録するんですか?」
俺が聞くと、
サムは即答した。
「あなたの行動全てです」
(全部)
「歩く速度」
「立ち位置」
「発言」
「沈黙の時間」
淡々と読み上げられる。
(やめろ)
◆ 主人公の反応
正直に言うと。
「……楽だな」
サムが、顔を上げる。
「?」
「俺、何もしなくていいんだろ?」
サムは、少し考えてから頷いた。
「……はい」
俺は、納得した。
(じゃあ、いい)
◆ 訓練開始
訓練が始まる。
俺は、いつも通りだ。
端に立つ
無理しない
何も言わない
サムのペンが、動く。
「……記録中」
(言わなくていい)
◆ 周囲の反応(悪化)
問題は、周囲だった。
「……見られてる」
「リオだけ、
記録が付いてる……」
空気が、
さらに硬くなる。
(俺のせいか?)
◆ 記録係の無自覚爆弾
休憩中。
サムが、ぽつりと言った。
「……興味深い」
「何が?」
「あなたがいると、
他の記録量が減ります」
(知らん)
「事故も、指示も、混乱もない」
「……理想的です」
(理想、低くない?)
◆ 教官の判断
教官が、サムの記録を見る。
「……確かに」
「この班、
異常に安定している」
視線が、俺に集まる。
(見るな)
「やはり、
同行は正解だな」
(正解じゃない)
◆ 主人公の小さな抵抗
「……あの」
俺は、勇気を出して言った。
「俺、
記録されるほどのこと、
してないです」
サムは、即答した。
「していないことを含めて、
重要です」
(含めるな)
◆ エンディング
その日の終わり。
サムは、記録帳を閉じた。
「……本日の特記事項」
嫌な予感。
「特になし」
教官が、満足そうに頷く。
「よし」
(よし、じゃない)
俺は、空を見上げた。
(何もしない
=記録される
=重要)
もう、
訳が分からない。
だが、一つだけ確かなことがある。
世界は、
俺を“観測対象”として
手放す気がない。
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