第16話 真似したら死ぬやつ
最近、俺は気づいていた。
(……俺、見られてるな)
視線の質が、
これまでと違う。
好奇心じゃない。
警戒でもない。
――研究対象を見る目だ。
(やめてくれ)
◆ 張り合う者、現れる
「……なあ」
休憩中、
少し離れたところで声がした。
「リオの動き、真似してみないか?」
何人かが集まっている。
(やめろ)
「ほら、あいつ」
「動かないだろ?」
「無駄がないって言われてるし」
(言われてない
言われてるけど)
俺は、聞こえないふりをした。
関わると、
巻き込まれる。
◆ 偽物の“何もしない”
次の訓練は、
単純な反復行動。
時間が長い。
地味にきつい。
俺は、いつも通りだ。
力を抜く
速さは一定
無理はしない
……というより、
やる気がない。
だが。
「……よし」
声が聞こえた。
数人が、動きを変えた。
俺と同じくらいの速度。
同じくらいの力加減。
(やめろ)
◆ ズレ始める
最初は、うまくいっていた。
「……いけるぞ」
「楽じゃないか?」
(そりゃ最初はな)
だが、
無理が出始める。
理由は簡単だ。
俺は、
最初から全力を出していない。
だが、彼らは――
全力を抑えている。
(それ、きついだろ)
◆ 崩壊
「……っ」
一人が、膝をついた。
「どうした?」
「いや……なんか……」
別の一人も、動きが乱れる。
「……集中力が」
「変に力が入る……!」
教官が、眉をひそめる。
「……お前たち、どうした」
答えは、すぐ出た。
疲労の蓄積。
変なところに、力が入っている。
◆ 教官の誤解(確定)
教官が、俺を見る。
(見るな)
「……リオ」
「はい」
「今の動き、
真似できるものじゃないな」
(真似するな)
「意図的に“抜いている”」
(抜いてない
入れてない)
「しかも、
無意識でやっている」
(無意識なのは合ってる)
教官は、ため息をついた。
「……これは、
簡単に教えられるものじゃない」
(教えない)
◆ 張り合った側の評価
膝をついた一人が、悔しそうに言う。
「……同じことを
してるつもりだったのに」
教官が、静かに答える。
「同じ“形”でも、
中身が違う」
全員が、納得した顔をする。
(するな)
◆ 主人公の内心
俺は、ただ思っていた。
(だから、
真似するなって)
俺は特別じゃない。
ただ、
頑張ってないだけだ。
だが、その言葉は、
誰にも届かない。
◆ エンディング
訓練後。
俺は、木陰で座っていた。
フィンが、少し離れて立っている。
「……やっぱりですね」
「何が」
「リオさんの“何もしなさ”は、
真似できない」
(そんな能力、いらない)
遠くで、
張り合った数人が肩を落としている。
俺は、空を見上げた。
「……俺、
普通にしてるだけなんだけどな」
だが、
“普通”はもう、
比較対象として使われるものではなくなっていた。
この日を境に。
誰も、俺を真似しなくなった。
――代わりに。
「触らない方がいい存在」
として、
完全に定着した。
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