第14話 黙っているだけで意味が出る
その日は、話し合いから始まった。
――最悪だ。
◆ 意見を求められる場
「では、次の訓練配置について意見はあるか」
教官の一言で、
子どもたちが顔を見合わせる。
数人が、恐る恐る手を挙げた。
「前衛を増やした方が……」
「いや、後方を……」
意見は割れる。
そして。
「……リオはどう思う?」
来た。
(来るな)
◆ 主人公、黙る
俺は、何も言わなかった。
理由は簡単だ。
(分からん)
それだけだ。
適当に言えば、
面倒が増える。
黙っていれば、
少なくとも怒られない。
だから、黙った。
◆ 沈黙が、重い
……数秒。
空気が、
異様に重くなる。
誰も、次の言葉を発しない。
フィンが、息を呑む。
「……まだ、判断材料が足りない?」
(違う)
教官が、顎に手を当てる。
「……確かに、
今決めるのは早いかもしれん」
(そういうことじゃない)
◆ 勝手に補完される意味
「リオが黙っている、ということは……」
誰かが言い出す。
(言うな)
「どちらにも致命的な欠点がある?」
(知らん)
「あるいは、
第三の案がある……?」
(ない)
俺は、心の中で叫んだ。
(誰か決めろ!)
◆ 教官、誤解を採用
「よし」
教官が、手を叩く。
「今日は、結論を出すのをやめよう」
(助かった)
「リオの反応を見る限り、
拙速だった」
(俺、反応してない)
全員が、深く頷く。
「確かに……」
「慎重になるべきだな」
◆ 主人公の敗北
話し合いは、解散した。
何も決まっていない。
でも、誰も不満を言わない。
理由は一つ。
「リオが黙っていたから」
俺は、椅子から立ち上がりながら思った。
(これ、
もう俺の沈黙が
ブレーキ役になってないか?)
◆ フィンの一言(致命傷)
廊下に出たところで、
フィンが追いついてきた。
「……すごかったですね」
「何が」
「沈黙の使い方です」
(使ってない)
「無理に意見を出さず、
全体に考える時間を与える」
(そんな配慮してない)
俺は、力なく言った。
「……喋らなかっただけだ」
フィンは、微笑んだ。
「それが、一番難しいんです」
俺は、何も言えなかった。
――言うと、意味が増えるからだ。
◆ エンディング
その日の夜。
俺は、布団の中で天井を見ていた。
(これ、
喋ったら負けじゃないか?)
喋らない。
動かない。
関わらない。
その全てが、
“高度な判断”として処理される世界。
俺は、小さく呟いた。
「……普通って、
こんなに難しかったっけ」
答えは、もちろん――なかった。
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