第13話 俺の席が決まらない
その日、俺は訓練場に入って、立ち尽くした。
「……あれ?」
席がない。
いや、正確に言うと――
どこにも“俺の席”が決まっていない。
◆ 座ろうとすると止められる
空いている席を見つけ、
俺は何も考えずに歩いた。
「……あ、そこは」
教官の声。
立ち止まる。
「?」
「そこは……」
言葉を探すような間。
「……視界が狭い」
(見えりゃいいだろ)
じゃあ、と一つ隣へ移動する。
「……そこは」
別の教官。
「……風向きが、少し」
(屋内だぞ)
もう一つ隣。
「……足場が」
(全部同じだ)
◆ 結果、端に追いやられる
最終的に案内されたのは、
全体から一歩引いた端の席だった。
「ここなら……」
教官が、深く頷く。
「何も起きない」
俺は、座りながら思った。
(起こす気もない)
周囲を見ると、
誰も俺の隣に座っていない。
空白が、くっきり。
(指定席:危険物)
◆ フィンの解説
「安心ですね」
フィンが、少し離れた位置から言う。
「何が?」
「ここは、全体の流れを乱しません」
(俺が流れを乱したことあるか?)
「視界・導線・間合い……
全てが最適です」
(偶然だ)
◆ 試しに動いてみる
俺は、ふと思った。
(ここまで来たら、実験だ)
俺は、席を立った。
――ざわっ。
全体が、息を呑む。
(大げさだろ)
一歩、前に出る。
「……待て」
教官の声。
(なんでだよ)
「判断が終わるまで、動くな」
(判断って何だ)
俺は、そっと元の席に戻った。
空気が、緩む。
「……よし」
(何がだ)
◆ 主人公、悟る(二度目)
ここで、完全に理解した。
(俺、
“動かない置物”として
最適化されてる)
もう、席の問題じゃない。
俺の存在が、
家具扱いだ。
◆ 座席問題、最終形
その日の終わり。
教官が、ぽつりと言った。
「……明日から、席は固定にしよう」
嫌な予感しかしない。
「リオは、あそこだ」
指されたのは、
今日と同じ端の席。
「……はい」
反論しなかった。
反論すると、
理由が増える。
理由が増えると、
配慮が増える。
俺は、学んだ。
◆ エンディング
帰り道、俺は呟いた。
「……俺の席、
俺が決められないのか」
フィンが、真顔で答える。
「はい」
(即答すな)
「でも、それが一番安全です」
俺は、空を見上げた。
「……安全って、
何だろうな」
答えは、なかった。
ただ一つ確かなのは――
俺の居場所は、
俺の意思と関係なく、
世界に決められ始めている
ということだった。
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