第11話 特別扱いしないという特別扱い
その日の昼前。
俺は、教官に呼ばれた。
「……リオ、少し来い」
(はい来た
面倒なやつ)
逃げ道はない。
俺は、観念してついていった。
◆ 呼び出し部屋の空気が重い
通されたのは、
訓練場の奥にある小さな部屋。
中には、教官が三人。
それから――
見覚えのある白ひげ。
「……あ」
魔術師ノインだ。
(まだいたのか)
全員が、俺を見る。
視線が、重い。
だが、誰もすぐには話さない。
(沈黙、やめてくれ)
◆ 「心配しているだけです」
最初に口を開いたのは、年配の教官だった。
「リオ」
「はい」
「まず、安心してほしい」
嫌な前振りだ。
「我々は――」
一拍。
「お前を、特別扱いするつもりはない」
俺は、思った。
(もうしてる)
だが、黙って聞く。
「ただし」
はい来た。
「配慮は必要だ」
(それが特別扱いでは?)
◆ ノインの言葉(分かりにくい)
ノインが、静かに言う。
「測定不能という結果はな、リオ」
「はい」
「“何もない”という意味ではない」
(それは知ってる)
「“こちらの枠に収まらない”という意味だ」
(分からない)
ノインは、図を描く。
枠。
枠の外。
そして、空白。
「君は、ここだ」
空白を指す。
(いや、分かりにくい)
◆ 教官たちの結論
別の教官が続ける。
「だから、決めた」
嫌な言葉ランキング上位だ。
「リオには、
無理に集団に合わせてもらわない」
(ありがたい)
「だが」
やめろ。
「無理に外すこともしない」
(それが一番困る)
「要するに――」
教官は、真顔で言った。
「普通に扱う」
俺は、思わず聞いた。
「……どの辺が?」
沈黙。
全員が、困った顔をする。
◆ 「普通」の定義が違う
年配の教官が、咳払いをした。
「普通、というのはだな……」
しばし考えてから、
「君が無理をしない状態だ」
(それ、俺基準だよな)
「そして、
周囲が無理をさせない状態だ」
(それ、周囲基準だよな)
「結果として、
全体が安定する」
(それ、結果論だよな)
俺は、静かに言った。
「……つまり」
「うむ」
「俺が何もしない前提で、
みんなが動く?」
教官たちは、
なぜか安心した顔で頷いた。
「そうだ」
(最悪の一致)
◆ 主人公の抵抗(小)
「……あの」
俺は、勇気を出して言った。
「俺、何も考えてないです」
ノインが、微笑んだ。
「知っている」
(知ってるならやめろ)
「だがな」
ノインは、低い声で続ける。
「考えていないという事実が、
周囲を考えさせる」
(哲学やめろ)
◆ 決定事項(覆らない)
教官が、最後に告げる。
「というわけで――」
一拍。
「今後の訓練・行動については、
特別枠として記録する」
(した)
「だが、
“特別扱い”とは呼ばない」
(呼んでる)
「以上だ」
会議、終了。
俺は、立ち上がりながら思った。
(話、通じてないなこれ)
◆ 部屋を出た後
廊下に出ると、フィンが待っていた。
「……どうでしたか?」
俺は、正直に答えた。
「分からん」
フィンは、深く頷く。
「それでこそです」
(違う)
◆ エンディング
その日の夜。
俺は布団の中で、真剣に考えていた。
(特別扱いしない
=特別枠
=逃げられない)
結論は一つ。
「……俺、もう普通に戻れないな」
誰も否定しなかった。
なぜなら。
世界の側が、もう戻る気がないからだ。
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