第10話 普通にしたいだけなのに
朝起きた瞬間、俺は違和感を覚えた。
(……静かすぎないか?)
いつもなら、近所の子どもが走り回る音や、
大人たちの話し声が聞こえる。
だが今日は、
気配だけあって、音がない。
嫌な予感がした。
◆ 村の空気が、よそよそしい
家を出ると、すぐに分かった。
視線。
距離。
妙な間。
みんな、俺を見ると、
一瞬だけ動きを止める。
(なんでだよ)
挨拶しても、
「……あ、ああ」
「おはよう……」
返事が、微妙に遅い。
そして、誰も近づいてこない。
(無視より、つらいなこれ)
◆ 「配慮」という名の隔たり
訓練場に行くと、
教官が俺を見て言った。
「……リオ」
嫌な予感しかしない。
「今日から、少し配置を変える」
「……は?」
俺の疑問は無視された。
「お前は、こちらだ」
示されたのは、
全体から一歩引いた位置。
(端っこ好きだけどさ
自動で決められると違うんだよ)
周囲を見ると、
他の子どもたちは、俺の方を見ない。
意図的に、だ。
◆ フィンのフォロー(ズレ)
「……気にしないでください」
いつの間にか、フィンが横にいた。
「みんな、リオさんの“間合い”を尊重してるだけです」
「尊重いらない」
「でも、必要です」
(必要って何だ)
◆ 特別扱いしない(特別扱い)
教官が全体に説明する。
「今日からは、各自の判断を尊重する」
そして、俺を見る。
「特に、リオは……」
やめろ。
「無理に合わせなくていい」
(合わせたことない)
「自分のタイミングでいい」
(それ、自由じゃなくて隔離だろ)
だが誰も反論しない。
むしろ、
当然の処置という顔だ。
◆ 主人公の本音
休憩時間。
俺は、木陰で一人座っていた。
誰も来ない。
静かだ。
理想的なはずだ。
なのに。
「……なんか、居心地悪い」
孤立とは、違う。
排除とも、違う。
これは――
丁重な距離だ。
◆ ささやかな事件(起きない)
その時、遠くで声が上がった。
「おい、順番間違えてる!」
「そっちじゃない!」
少しだけ、混乱。
全員が、ちらっと俺を見る。
(見るな)
俺は、何もしなかった。
そのまま、混乱は自然に収まる。
そして。
「……やっぱり」
「動かないのが、正解だ」
そんな声が、聞こえた。
(違う)
◆ エンディング
その日の帰り道。
俺は、空を見上げて言った。
「……普通にしたいだけなんだけどな」
だが、
“普通”は、もう俺の選択肢から消えかけているらしい。
その夜、母が言った。
「ねえ、リオ」
「なに」
「明日から……
少し遠くに通うことになるかも」
俺は、即答した。
「……面倒?」
母は、少し困った顔で笑った。
「ええ。たぶん」
俺は、布団に潜り込みながら思った。
(ああ、これ
本格的に逃げ場なくなるやつだ)
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




