表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIスマホは禁忌でした ~なのにチート扱いで受付嬢がやたら優しい~  作者: 本郷カケル
5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/77

5-8 ギルド報告

 まだ頭の奥に馬車の揺れが残っている気がするが、なんとか歩ける。翌日、あらためてギルマスへ出張報告は俺とフィオだけで、なぜかカイラムがいない。


「カイラムさんは、別口で報告の段取りですって」

 フィオも理由はよくわかっていないようだ。オルベンを拠点にしないカイラムは、俺たちとは別の扱いなのかもしれない。一度にまとめたほうが効率的だと思うんだが。


「じゃ、二人で楽しんできてね」

 受付でルミリがひらひらと手を振る。苦笑しながら返す。

「ギルマスの報告で、何をどう楽しむんだ」


「補足します。ギルマスへの報告業務に“楽しさ”の要素は含まれていません。

 ただし──フィオさんと二人で行動する場合、ノアスさんの心拍が平均より上昇する傾向があります」

「……いいかげんなことを」


「当たってると思うけどな、“声”さんの分析は。顔が赤くなってるよ」

 そんなにわかりやすいか、俺? 頬を押さえる俺を見て、ルミリがけらけら笑う。

 フィオも恥ずかしそうにしていた。そっちのフィオのほうに、グッとくるな。オヤジ臭いが、我ながら。


「入れ」

 ギルマス室の扉をノックすると、いつもの低い声が返ってきた。

 ギルマスは立ち上がり、横のソファを手で示す。低いテーブルを挟み、俺とフィオの向かいに腰を下ろした。


「ご苦労だった。まずは無事で何よりだ」

「ノアスは馬車で死にかけてましたけどね」

 フィオがにまにまと余計なことを言う。


「いやあ、ひどい目にあったね」

「解析します。ノアスさんの馬車酔いは“重度”に分類されます。次回の乗車は推奨されません」

「いや乗れよ」

 ギルマスが即座に突っ込んだ。……この人、AIの扱いに慣れてきてないか?


「さて、報告を聞こうか」

 俺とフィオは、ミルダンでの出来事を順に説明した。森でのウサギ魔物の狩猟状況、湖に向かっての揺動。ミルダンの森は特筆なし、湖ではわずかな異変の予兆。


「ふむ、なるほどな。特に問題はなさそうだな」

 ギルマスは満足げにうなずいた。あれ、湖の異変はそのままでいいのか?

 尋ねる俺に、ギルマスはあっさり答える。


「それはミルダンの管轄だ。興味がないわけではないが、俺の立場で口出しはできん。  今回の目的は、フィオの懸念──ミルダンの異変がオルベンに影響するかどうかの確認だ。そこが重要だ」

 言われてみればその通り。俺たちは冒険しに行ったわけじゃない。……でも俺、ミルダン側のギルドに湖面の揺動を報告してないな。やば。


「ノアス、わたしが報告してるから。心配しなくて大丈夫」

 フィオが苦笑しながら言う。俺は本当に顔に出やすいらしい。

「で、ノアス。今後どうするつもりだ?」

 来た。予想していた質問だ。


「しばらくオルベンで活動しますよ。魔石狩りを頑張ります。金を貯めたくて」

「旅立つ資金を稼ぐ、ということか?」

「うーん、何はともあれ……その日暮らしから抜け出したくて」

 フィオが、ほっと息をついたのがわかった。


「……そっか。置いていかれるのかと思った」

「え?」

「べ、別に深い意味はないよ。あなたは馬車にまた乗らないといけないしね!」

「それは本気で嫌だ」


「解析します。フィオさんの安心反応を検出しました。ノアスさんが離れる可能性が低下したためです」

「どんな反応だ、それは」

「ちょっと黙ってて!」

 フィオがほほを軽く染めながら、ぴしゃりとAIを黙らせようとする。

 ギルマスは「なんだこのやり取りは」という顔をしていた。


「まあいい。オルベンで稼ぎたいなら、状況を説明しておく」

 ギルマスは立ち上がり、デスクの書類をめくりながらため息をつく。

「まず、ギルドの事務処理を手伝ってほしい。ミルダンの書類処理を頼んだのは覚えているな。ノアスの処理の手際が良かった。

 この間まとめた資料は町長が喜んでな。他の町との地区会議で町長の発表を見て、周辺の町も同様の処理を取り入れたいらしい」


「きりがないですね……」

 フィオが肩を落とす。ずいぶんと評価してくれてなによりだ。俺よりAIのおかげだが。

「いいですよ。貰えるものさえ、きちんと頂ければ」

「出せる額は少ないが、他の町の仕事だ。報酬には色を付けるよう交渉しておこう。……それで、できるのか?」


「そうですね……」

「改善案を提示できます。例えば──電子化、スキャン、データベース──」


「待て待て待て!」

 ギルマスとフィオが同時に止めた。

「……なにか考えがあるのはわかるが、わからん」


 ギルマスが首を振る。いや、無理だろAI。設備が何もない。パソコンがないのにスキャンしてどうする。全部お前が読み上げるのか?


「ちなみに手は足りるか?フィオをべったりつけるわけにはいかん。他の仕事もある。ルミリと交代で手伝ってもらうか」

「ええと」

「私が何とかやりくりしますよ」

 間を置かず、フィオが立候補してくれた。嬉しい。


「補足します。フィオさんを“やりくり要員”として固定化する案は、ノアスさんの作業効率および情緒安定度の向上に寄与します。

 したがって──ルミリさんの投入より、フィオさんの継続配置が最適と判定されます」 よし、AI、よくぞ言った。ギルマスのニヤニヤした表情からして、完全に見透かされている気がするが。


「ちなみにオルベン町内の仕事に興味はないか? 畑の収穫期までは清掃、荷物運び、街の見回りなどがあるが」

「魔石集めより稼げます?」

「仕事ぶりにもよるが……どうかな。安全ではある。お前は魔石狩りが得意だが、普通は博打だ。一日一個取れるかどうかでは仕事として成り立たん。まあ、お前の判断次第だ」

 やっぱりそうか……。別に地味な仕事も厭わないが、俺の場合は魔石で確実に稼げそうだから。あまり目立ちすぎないように、バランスを取る必要があるが。

 ギルマスは話をまとめた。


「報告はわかった。ご苦労だった。もういいぞ。

 焦らずやれ。お前はまだ来て一か月ぐらいだろう。無理に背伸びする必要はない」

「はい。地道にやります」


 フィオが小声でつぶやく。

「……勝手に、どこにも行かないでよ」

「行かないよ」

「記録します」

「記録しなくていい!」

 ギルマス室に笑いが広がった。

 よし、金を貯める。まずはそこからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ