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AIスマホは禁忌でした ~なのにチート扱いで受付嬢がやたら優しい~  作者: 本郷カケル
第一章

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1-4 審査盤とフィオ、そして渡り人

 現れたのは、淡い栗色の髪を肩で結んだ女性だった。落ち着いた雰囲気だが、そっけなさはない。どこか柔らかい。目が合うと、軽く会釈して微笑みかけてきた。


 横にいた門番が彼女に声をかける。

「フィオさん、この方は“渡り人”の可能性があります。今から審査盤判定をいたしますので、立ち合いをお願いします」

「承知しました。よろしくお願いします」


 フィオと呼ばれた女性は、視線を俺に戻して丁寧に会釈した。

「初めまして。ギルド事務のフィオと申します。門番から、少しだけお話は伺いました。……大変でしたね」

「あ、はい……まあ、いろいろと」


 曖昧に笑うと、フィオはほんの一瞬だけ眉を寄せた。同情でも憐れみでもなく、状況を正確に測ろうとするような目だ。


「……では、念のため審査盤を使います。ええと……まだ名前も伺ってませんでしたね。これは当門で入門いただく前の定型審査と思ってください」

 門番の一人が俺に説明し、腰に下げていた木箱のようなものを取り出した。


 蓋を開けると、薄い金属板がはめ込まれている。表面には細かな紋様が刻まれ、淡く光っていた。

(なんだこれ……タブレット?いや、違うな)

「ご存じとは思いますが、審査盤は教団が管理している“渡り人判定具”です。犯罪者や魔術の暴走者にも反応しますので、安心してください」


 その説明のどこら辺が安心できるかは別として、門番は真剣そのものだった。怖いな。なんだよ、渡り人って。犯罪者かどうか警戒するのはわかるけどさ。

 横にいたもう一人の門番は長槍を構えたまま。ちらと見ると強い視線でにらみつけてくる。フィオも真剣なまなざしで審査盤を見つめている。


「では、いくつか質問します。名前は?」

「ノアス……だと思います」

 本名は思い出せない。とりあえず、さっき浮かんだ名前を名乗ってみるか。失敗しても、その時はその時だ。


 ありがたいことに審査盤は無反応。ただ、表面の光がほんのわずかに揺れた。

 フィオか門番か、誰かがスッと息を吸う音がした。そういや他の物音はしないな。この部屋って防音がしっかりしてるのかな。

 こんな時だというのに、些細なことが気になる。


「出身地は?」

「覚えてません。気づいたら森の中で……」

 また無反応。だが、紋様の一部が淡く点滅した。やだなあ。なんだろ。


「犯罪歴は?」

「ないと思いますけど……」

 審査盤は沈黙を保ったまま、今度は別の紋様がゆっくりと光った。


「……ふむ。犯罪者反応はなし。魔術汚染もなし。ただ……渡り人の兆候が少し出ていますね」

「兆候?」

「はい。完全一致ではありませんが、“外の世界から来た者”に見られる反応です」

(外の世界……異世界転生ってことか?)


 門番は審査盤を閉じ、フィオに向き直った。

「やはり渡り人の可能性があります。フィオさん、ギルドでの受け入れをお願いします」

「わかりました。こちらで引き取ります」

 フィオは軽く会釈し、俺に向き直った。

「では、ノアスさん。ギルドでお話を伺いますね」


 初めて気が付いた。ここまでAIが黙ったまま。できるじゃないか、空気読むこと。

「空気を読んだという評価を記録してもよろしいですか」

 ……台無しだよ。


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