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AIスマホは禁忌でした ~なのにチート扱いで受付嬢がやたら優しい~  作者: 本郷カケル
5章

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【カイラム断章:最初の報告】

 ミルダンに着いた夜、カイラムは迷うことなく町の中心へ向かった。

 酒場の灯りがにぎやかに揺れる通りを抜け、彼が足を止めたのは──繁華街の真ん中にぽつんと建つ、地味な二階建ての建物だった。


 教団の事務所は、華美とは限らない。ここは飾り気も荘厳さもない。宗教施設というより、ただの役所のようだ。


 日はすでに落ち、受付には誰もいない。

 カイラムは慣れた足取りで奥の扉を開け、階段から二階へ進む。その先にある扉を軽く叩いた。

「カイラム、参りました」


 魔石灯の明かりは弱く、部屋の隅は影が濃い。

 男が一人、椅子に腰かけていた。机の上には紙一枚なく、ただ水の入ったコップがひとつ置かれているだけ。


「……なぜここに、カイラム。オルベンに行かず、トレッサから直接ミルダンへ来たのか?」

「いえ。オルベンで少々、変わったことがありました。取り急ぎの報告に参った次第です」

「ふむ。聞こう」

 カイラムは一息つき、簡潔に状況を述べた。


「……そうか。オルベンに“渡り人”が現れた。とな。予言には無かったはずだが」

「はい。ですので、次の指示を頂きたく」

「消去を求めないのだな。珍しい」

 男の声は淡々としているが、わずかに探るような色があった。


「……はい。やつ──ノアスは、害を成すよりも……何か光をもたらすような……申し訳ありません」


 男から無言で見つめられ、カイラムはすぐに頭を下げた。その沈黙は、叱責よりも重い。


「お告げを元締めに確認する。儀式の都合もある。明日の朝、もう一度ここへ来い」

「……ノアスを監視せよ、とは言われないのですね」


「カイラムがここへ来たのも、何かの縁だ。渡り人がこの町でできることは限られている。

 だが──別の予言が、お前を必要とするかもしれん。詳しく今は言えんが」


「はっ。ではまた、明日」

 立ち上がるカイラムに、男はふと付け加えた。


「……今夜は飲みすぎるなよ。“揺れ”の時期は、心も足元も乱れやすい」


 カイラムは一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに表情を戻した。

「心得ております」

 扉を閉めて、階段を下りるカイラム。人気のない事務所の空気は、ひどく冷たく感じられた。

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