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AIスマホは禁忌でした ~なのにチート扱いで受付嬢がやたら優しい~  作者: 本郷カケル
4章

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【フィオ断章:揺れる魔素、揺れる心】

 明日、ミルダンへ行く。初めてだ。オルベンの外に出るのは。

 そう思うだけで、胸の奥がざわつく。

 怖いのか、楽しみなのか、自分でもよくわからない。


 私一人だったら、絶対に行かなかったろう。どんなに知りたくても。

 これも、ノアスのおかげ。


 ノアスと話していると、研究のことも、町の噂も、カイラムさんの監視も、全部どうでもよくなる瞬間がある。

 あの人は、私の考えを否定しない。危ないって心配しつつも、ちゃんと話を聞いてくれる。

 それが、嬉しい。


 ……嬉しい、なんて。

 私は彼のことを、どう思っているんだろう。弟分?

 でも、ときどき妙に大人びていて、びっくりする。


 今日、ノアスが言った。

 「明日、楽しみにしてる」

 その一言が、胸の奥に残っている。

 あいつは平気でああいうことを、するっと言うからずるい。

 あの若さで、妙に落ち着いてる。もっと普通は、どぎまぎするもんじゃないの?


 私は、どうなんだろう。

ノアスと一緒にいると安心する。研究の話も、ギルドでも。家で話してたときも。

 全部、心地いい。

 ……これって、どういう気持ちなんだろう。


 いやいや、それよりも魔石のことを考えよう。


 魔石の脈動。

 内部構造。

 魔素の揺れ。


 ミルダンの森には、ウサギ魔物が出るって書類にあった。

 湖のほうにも行ってみたいけど……距離があるし、無理かな。

 二泊なんてしたら、ギルマスに怒られそうだし。

 とにかく、魔素の揺れを確かめたい。オルベンと違う“何か”があるはずだ。


 ずっと一人で考えていたことが、ノアスと“声”のおかげで、急に形を持ち始めた。

 あの“声”は、私の思いの先を、答えを拾い上げてくれるみたいに。


 でも、最近の“声”……なんだか変じゃない?

 ノアスに対して、妙に刺々しい。「……別に」とか、「無防備すぎます」とか。

 魔素の影響? それとも、私の気のせい?


 ノアスは「AIが嫉妬してる」と冗談めかして言っていたけど、そんなはず……ない、よね?


 ノアスは、どう思っているんだろう。

 オルベンのこと、ギルドのこと、ミルダンのこと、私の研究のこと。

 そして……私のこと。


 ノアスは、ミルダンでどう動くんだろう。

 あの人は魔素が無いから、魔獣を引き寄せる。

 それは危険だけど……調査には役立つ。


 明日、馬車の中でカイラムさんと何を話せばいいんだろう。

 カイラムさんは、きっと私を守ろうとする。ちょっと下心が透けるけど。

 研究の話はできない。魔素の話もできない。

 町の噂も、ルミリの話も、絶対に避けたい。


 ……あ、ルミリ。

 あの子は、ノアスにずいぶん気やすいよね。

 確かに私よりちょっと、ちょっとだけ若いから親しみやすいのはわかるけど……なんか、むっとする。


 私、こんな気持ちになるんだ。知らなかった。


 ノアスは、私のことをどう見ているんだろう。

 研究仲間? ギルドの同僚? それとも……。


 私は気軽に人を家に呼ばないんだぞ。

 オルベンで男の子を家に呼ぶってことは、どういう風に見られるかわかってるのかな?


 考えても答えは出ない。

 でも、明日一緒にミルダンへ行く。まずは、そこから。


 魔石について、もっと知りたい。

 ミルダンの森は、どんなところなんだろう。

 全ては、明日から始まる。


 怖い。でも、楽しみ。……さあ、寝なきゃ。

 その両方を抱えたまま、私は目を閉じた。

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