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AIスマホは禁忌でした ~なのにチート扱いで受付嬢がやたら優しい~  作者: 本郷カケル
4章

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4-10 出発前夜の作戦会議

 今夜もフィオの家に呼ばれた。嬉しい。けれど話をするのは昨日と同じ小部屋。寂しい。

 机の上には彼女お手製の地図メモと、こないだ確保した元魔石の石ころが並んでいる。

 改めて今後のことを相談したいらしい。……今後のことって、どんな“今後”だろう。期待してもいいのかな。


「明日、出発でしょ。ちょっと作戦会議したくて」

「お、おう。なんか本格的だな」


 ほらな。こういう話題だよ、やっぱり。俺の淡い期待には気づかないまま、フィオは地図を指さして行程を確認し始めた。


「オルベンはここ。ミルダンまで馬車で一日。夕方遅くには着くと思う。魔物が出るような場所じゃないしね。その間はずっとカイラムさんと一緒。……ここが一番の問題」

「だよなあ。何を話してたら、教団に睨まれずに済むんだ?」


 フィオは指を唇に当て、下唇を軽くかんだ。


「“魔素”と“研究”の話題は禁止。寝たふりとか、ほんとに寝ててもいいよ。変なことを口走るよりいいでしょ。馬車は揺れるから、寝れないかもしれないけどね」

 サスペンションとか無いんだよな、この世界。現代知識チートしたい。そもそも鍛冶屋が町に無いから無双できないが。


「あと“昨夜どこにいたのか”とか聞かれても、絶対に余計なこと言わないでね」

「俺、そんなに信用ない?」

「……ルミリと仲良くしてるから」

 ちょっと睨んでくる。あ、これは嫉妬だな。とりあえず狼狽えてみる。


「いや、あれは仕事で……」

「仕事でも、あんなに楽しそうにしなくていいの」

「えー」

 むすっとしているフィオ。そこへAIスマホが割り込んできた。


「補足。ルミリさんとノアスの“楽しそうな会話”は、フィオさんの心拍数を平均値より上昇させています。……観測上の事実です。」

 AIスマホを収めた胸元に向かって文句を言う。

「AI、お前さ……最近なんか刺々しくない?」

「通常運転です。……別に。」

 別に、じゃないだろ。なんなんだ。


「そういえばさ。その“声”って男性?女性?」

 フィオが唐突に聞いてきた。性別か。考えたことなかったな。

「女の子の声にしてみようか」

「ふーん。女の子?」


 フィオの顔がまたむっつりしてきた。だって男の声なんか聞きたくないよ。特にフィオに対して、男が話しかけてほしくない。

「ふーん。ふーん」

 どうやら正解だったらしい。フィオは俺の弁解を明るく受け止め、ちょっとニヤついている。


「ではAI、今から可愛い女の子の声でしゃべっておくれ」

「……“可愛い”って言葉は必要?」

 聞こえないよ、フィオ。何も聞こえない。


「了解。音声プロファイルを“女性寄り”に調整します。ただし“可愛い”の定義は曖昧です。

 あなたが誰に向けて可愛さを求めているのか、判断できません」

「ほーら、怒られた」

 え、これって怒られてるのか……? いったん仕切りなおそう。


「で、フィオ。ミルダンについたら、どうする?」

「話を変えたわね。まあ、いいわ。ミルダンに着いたら、まず現地ギルドに顔を出すの。

 その日か翌朝かは到着時間で考えよう。ギルマスの指示で来たって言わないと怪しまれるし。カイラムさんもいるから、何とかなると思う」


「カイラムさんに頼るのか。なんかいやだなー」

「あら、なぜ?」


 ちょっと間をおいて、静かにフィオが尋ねてきた。何も考えず、俺は答える。


「いや、どうせならフィオと二人でやり遂げたいじゃない、この調査」

「……調査、だけ?」

「え?」

「ふふ。別に―」


「補足。フィオさんの発言意図は“揺さぶり”です。あなたが動揺するかどうかを観測しています。……現在、動揺度は上昇傾向です。」

「ほーら、みなさい」

 いや、何を見るんだよ。こういうフィオも良いけど。


「それと、ボウガン借りなきゃね。丸腰で森に行くわけにいかない」

「あ、俺がフィオを守るね。任せて」

「ふっふーん。私もボウガンは借ります。ちょっとは上手いのよ。たぶんノアスより」

 どや顔である。かわいい。AIスマホがまた口を挟む。


「フィオさんのボウガン命中率は、過去のギルド記録から推定して“中の上”です。ノアスは“未測定”のため比較不能です。……ただし、期待値は低いです。」

「おいAI、俺にだけ辛辣じゃない?」

「事実です」

 事実でも言い方ってものがあるだろ。しかも女の子の声で言いやがって。


「そして、翌日は森に行きましょ。ウサギ魔物を狩って、魔石の違いを調べたいの。“声”の調べる力で助けてほしい。でも“声”に魔素を吸わせたらだめよ。オルベンとは違うんだから」

「その辺は任せろ。AI、頼りにされてるぞ」

「了解。フィオさんの期待値は“高”です。あなたの期待値は“中の下”です。」

「なんで俺だけ評価低いんだよ」


 ぼやく俺を見て、フィオがくすっと笑った。

「ノアスは、魔獣を引き寄せるだけで十分役に立ってるよ」

「褒められてる気がしないんだが」


「で、時間があれば湖にも行きたいけど……森からお昼ご飯食べて一休みして、くらいの時間がかかるらしくて。ちょっと無理かな」

「そうだなあ。それに危険なのかい?」

「そうかも。よくわからないけど。でも……見たいんだよね。ミルダンの魔素の“揺れ”」


 フィオの目が、研究者のそれになった。AIスマホが静かに言う。


「注意。フィオさんの研究欲は“高揚状態”です。……あなたの制止が必要です。」

「いや、なんで俺がブレーキ役なんだよ」

「あなたは“無防備”なので、フィオさんの暴走を止める役に適しています。」

「無防備って言うな」


「でも……ノアスが一緒なら、安心して研究できるよ」

 フィオが笑いながら、そっと俺の袖をつまんだ。

 その一言で、胸が少し熱くなる。


 AIスマホが、なぜか小さくノイズを鳴らした。

「……解析中。問題ありません。」

 いや、絶対なんか考えてるだろ、お前。


「じゃあ、明日は早いから、そろそろ帰って。寝坊したら許さないからね」

「了解。……フィオ。明日から、楽しみにしてる」

 フィオは一瞬だけ目をそらし、頬を染めた。


「……うん。私も」

 AIスマホがぽつりと呟いた。


「二人の距離が近づく傾向を検出。……観測を継続します。

 ノアスには帰宅を推奨します。睡眠時間の確保が必要と判断します。」


「AI、お前ほんと最近おかしいぞ」

「正常です。……たぶん。」

 たぶん、ってなんだよ。

 こうして、俺たちは翌日にミルダンへ向かうことになった。

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