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AIスマホは禁忌でした ~なのにチート扱いで受付嬢がやたら優しい~  作者: 本郷カケル
4章

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4-5 静かな数日と、妙な優しさ

 ギルドマスターの話から解放されたのは、昼前のこと。フィオは結局、そのままギルドから帰宅を命じられたようだ。しばらくは謹慎らしい。そんなに厳しい処置を命じられるとは、甘く見すぎてたな。彼女には合わせる顔がない。


 俺のほうは具体的に縛る権限が、そもそもギルド側に無い。せいぜい仕事のあっせんをしないくらい。このまま町を歩いたり、門の外へ出て森に行くことも止められないだろう。

 問題は、もういちどオルベンの中に入れてもらえるか、だが。


・・・ん?ふと、気づいた。オルベンの門は町全体を囲っているわけじゃない。

 つまり、正式な出入り口を通らなくても外へ出られる。

 そう考えると、案外この町は“ゆるい”のかもしれない。ふむ。


 大人しく宿の部屋に戻る気にもなれず、図書室へ行く。なんとなく目についた本をパラパラめくったり、紙面をスマホで撮影してAIに読み込ませたり。

 正直、本の内容はほぼ頭に入っていない。気を紛らわせてただけだ。


 ギルドの空気は明らかに変わった。俺に対する物珍しさよりも、隔意が強くなった。

 図書室にいても、司書の視線はほとんど俺を素通りしていた。まるで存在を消されているみたいだ。


 その夜はAIと話をしてみたが、まだ考えがまとまらない。AIは色々とアイディアは出してくる。しかしフィオをさらって別の町へ、なんて極論には走れない。


 よく考えたら俺は、18歳くらいの肉体らしい。感情のままにフィオと手に取って逃避行って選択肢がわかりやすいのかもしれないな。フィオもそれを望んでたりして。ないかな、それは。


 改めて翌日にギルドに顔を出してみたが――仕事を回してもらえなかった。仕事がない、と言われたら食い下がりようがない。

 受付のルミリは申し訳なさそうに目をそらした。フィオのようすを聞くが、口を濁される。あまり俺とかかわりを持ちたくないようす。


「……まあ、仕方ないか」

 宿に戻っても、やることがない。日銭もない。フィオは謹慎で会えない。

 部屋の天井を見つめながら、ため息が漏れた。


「提案します。暇な時間は“自己研鑽”に使うと効率的です」

「だから、昨日も言ったろ。そういう問題じゃないんだ。そもそも研鑽ってなにをする。魔石を取って、お前に吸わせて能力を上げろってか」

 その刹那、このアイディアがひらめいた。何かAIが言っているが、耳に入らない。

 俺はむくりと体を起こす。悪くない。


 魔石を集めて、AIを鍛える。ボウガンがいるな。素手や棒切れでウサギ魔物を倒すのは、さすがに辛いか。

「おい、AI改めて聞く。一人で森に行ってお前に魔素を吸わせて機能アップを図る。そのメリットとデメリットは何だ。簡潔に答えてくれ」


「回答します。簡潔に三点ずつ提示します」


「まずメリット。

 一つ、魔素吸収により“解析精度”と“推論速度”が向上します。

 二つ、魔石の脈動パターンに対する理解が深まり、フィオさんの研究支援能力が上がります。

 三つ、ノアスの単独行動能力が向上し、“依存度の低い運用”が可能になります」


「次にデメリット。

 一つ、森での単独行動は“遭遇率上昇”のリスクがあります。

 二つ、魔素吸収の過程で“魔石の質”によっては効率が低く、成果が不安定です。

 三つ、教団の監視網に引っかかる可能性は低いものの、“ゼロではありません”」


「総合評価。

 実行は“中リスク・中〜高リターン”と分類されます」

 細かいところで、詰めたい点はある。しかし・・・俺は真剣に考え始めた。ああ、紙と書くものが欲しい。いや、AIにまとめさせればいいか。

 俺は AI に向かって、今後の作戦を話し始めた。


 とりあえず毎朝いったんギルドへ行き、仕事の有無を聞く。特に仕事はないと聞かされ、肩を落として宿に戻る。繰り返した。午後は暇なので、図書室へ行く。これを二日、繰り返した。


 今更だけど、俺って前の世界でリストラされたんだっけ。職安に行って同じような気分を、あっちの世界でも味わってたのかな。


 二日目の午後に、カイラムに図書室の前で呼び止められた。尋問か、と身構えるが、ちょっと違うようだ。昨日のような怒気はない。むしろ妙に静かだ。

「……先日の件は詫びる。少し取り乱した。我ながらフィオへ入れ込んでいたようだ」

 カイラムは窓の外へ目をやる。俺も視線を投げるが、草原しか見えない。遠くには、オスラムの森。


「教団は……おそらくお前が思っているより、ずっと厄介だ。俺も昔、逆らえなかった。いや、今もだ。渡り人は教団に縛られない……それが、羨ましい時もある」

 そのままカイラムは俺に視線を合わせず、去っていった。……ふむ。


 その夕方、部屋に戻りドアを開けると、見知らぬ紙切れが落ちていた。ドアの下から投げ込んだらしい。期待通り、フィオからのメモだ。

『ごめん。巻き込んでしまった。しばらく会えない。……気をつけて』

 いや、謝るのも巻き込んでしまったのも、俺の方さ。ごめん。


「AI、フィオに対して、どうしたらいいと思う」

「提案します。フィオさんの心理状態は“落ち込み+罪悪感”です。適切な対応は“距離を置く”です」

 お前からそう言われるとはな。


 窓の外では、森の方角が夕日に染まっていた。

「……行くか。森なら、誰にも迷惑かけないしな。明日、ボウガンを借りられるかギルドに正面から聞いてみよう。だめなら、次の手を考えよう」


「了解。森への最適ルートを提示します」

「いや、嬉しそうに言うなよ……」

 こうして、俺は森へ向かう決意を固めた。

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