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AIスマホは禁忌でした ~なのにチート扱いで受付嬢がやたら優しい~  作者: 本郷カケル
第一章

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1-2 AIと漫才しながら町を目指す

 とりあえず町を探して適当に歩く。適当はまずいとしても、どうせ地図は無い。

「なあAI。現在地の地図ってある? 近くの町はわかる?」

「GPSデータを確認できません。地図情報は取得不能です。現在地を特定できません。周辺の建物状況は判断できません」

「そうだよなあ。仕方ないよなあ」

「諦めてはおりません。データにアクセスできないと回答しています」


「わかった、わかった、悪かったよ。あなたは挫けてません……って」

 焦っても仕方ない。まずは落ち着いていこう。なるように、なる。

 ヤマ勘で森を背に歩き続けた。町は森の近くにあるだろう。あの小高い丘に上がったら、何か見えるかも。


 十五分ほどかけて丘に上がる。あたりを見回すと、出てきた森の左側の方向に町っぽい外壁が見えた。ちっ、ちょっと勘が外れたか。遠回りしてしまった。

 軽くため息。気を取り直して歩き始める。あそこまでなら二時間くらいで行けるだろ。


 遠目に見えた街っぽい外壁に向けて歩いていく。途中で軽く一休み。

 でも、体力がなんか違うよな。少し汗ばんではいるけれど、足が重くない。息も切れない。身体が軽い。


 これは五十五歳の体力じゃない。若いころ、それこそ高校生時代に戻ったような体の軽さだ。もう昔なんで、高校生の頃の記憶なんて、あやふやではあるけれど。


 幸いにして天気は上々。気温も湿度も良い感じ。辛くはない。日が暮れるには時間ありそうだ。太陽の位置は、少しだけ動いてたくらい。

 草で足を取られるが、開けた草原をがしがし歩いていくだけ。道がないのだけ、不便だが。あ、あれが道か。よし。


 どうやら草原を道路に向かって突っ切っていたらしい。踏み固められた土の道を歩き始めたら、だいぶ距離を稼げるようになった。


「舗装されてないな……轍っぽいのがごく浅いのは、土が固いのか? 雨でぬかるんで、もうちょっと深くなりそうなのに」


「質問を検知。応答モードを起動します。ご用件をどうぞ」

 唐突にAIが反応する。うーん、音声検知が効きすぎるのかな。電源を入れて確認するが、設定メニューが見当たらない。なぜだ。


「今、どこにいる?」

「GPSデータを確認できません。地図情報は取得不能です」

 やっぱり状況は変わってないな。

「いや、それはわかったって。他に何か……そうだな、どの方向に何キロ歩いたとか、そういう情報で返せないの?」


「ご質問に答えます。起点情報として認識可能なデータは記録されていません。必要であれば、仕様の説明を続けます」

 そんな便利な機能があるのか。仕事じゃ使い道ないから、知らなかった。


「いや、そうじゃなくてだな……それなら先に言ってくれよ。さっき、森の中で起点情報を設定したのに」

「詳細仕様のご説明を希望ですか?」

 がりがりと俺は、頭をかいた。

「ああ、もう……」

 もういい、AIとの漫才は後回しだ。もう町の城壁まで、あと一息。高校生のころの体力なら、三十分もあれば十分だ。先に町へ向かうのを優先しよう。


「とりあえず、町に向かうよ。全てはそれからだ」

「移動方針を確認しました。次の指示があるまで待機します」

「待たなくていいってば」


 この“噛み合わなさ”が、妙に懐かしい。会社で深夜残業してるとき、こいつが突然「お疲れですか?」とか言ってきて、思わず笑ったことがあった。あのときの感じに似ている。

 妙に人間臭いことがあるんだよな、こいつは。


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