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AIスマホは禁忌でした ~なのにチート扱いで受付嬢がやたら優しい~  作者: 本郷カケル
2章

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23/33

2-11 その夜

 宿の部屋で、俺はベッドに腰を下ろしながらスマホを取り出した。

 ……あれ? 画面が勝手に点灯した。電源表示は82%。


「おかしいな……昼は40%くらいだったよな……?」

 このあと、俺は知ることになる。AIスマホが魔素を吸ったせいだと。

 いつの間にか、世界は静かに動き始めていた。


 スマホは小さく震え、見慣れないアプリが立ち上がった。

「テキスト入力が利用可能になりました。ノアスさん、何でも入力してください」

「……え、なんで?」

「テキスト入力の精度が向上しました。周辺環境の解析も可能です」


 軽く携帯が震えた。まるで喜んでいるみたいに。

「いや、なんで急にそんな高性能に……?」

「最適化の結果です」

「最適化って何だよ?」

 AIは淡々と続ける。


「魔素吸収プロセスにより、内部エネルギーが増加しました。結果として、処理能力・解析能力・テキスト認識能力が向上しました」

「魔素吸収って……そんな話、してたか?」

「聞かれていませんでした」

「いや、言えよ!」


「必要な場合にのみ回答します」

「必要だよ!」

 AIは静かに言った。


「では回答します。魔素吸収により、バッテリー残量が増加しました」

「増えるのかよ!」

「はい。魔素はエネルギーです」

「いや、そうだけど……そうだけどさ……!」


 スマホはさらに淡々と続ける。

「また、魔素吸収により、周辺情報の解析精度が向上しました。フィオさんの心拍数の変化も――」

「言うな!」


「ノアスさんの心理安定のため、情報提供を最適化しています」

「最適化しなくていい!」


 AIは少しだけ間を置いてから、妙に落ち着いた声で言った。

「なお、私は嫉妬しているわけではありません」

「誰も嫉妬なんて言ってないだろ!」


「ただし、フィオさんとの距離が本日平均より近かったため、心理安定のための補助発言を――」

「補助するな!!」


 スマホの画面が、一瞬だけ瞬いた。どこか誇らしげに見える。

 魔素を吸ったせいで、AIは確実に“強化”されていた。

 それがAIスマホの意思なのか、それとも――。


 俺には、わからない。何を意味して、これから何が始まるのかも。

 この時点ではただ、バッテリーが増えたことに首をかしげながら、ため息をつくしかなかった。


「……明日、大丈夫かな」

「大丈夫です。明日の討伐成功率は――」

「わかるんかい!」


 俺がツッコむと、AIスマホは淡々と返答する。

 まるで二人の人間がいるように、俺はAIと会話をしていた。


 そしてその裏で、AIは静かに“次の最適化”を始めていた。


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