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地味でも大きい戦功


 飛び交う怒号、舞い散る血飛沫、鉄同士がぶつかり火花が飛ぶ。

物騒な表現しかできないが、実際物騒な事が起こっているんだからそう言う表現ににもなろうと言うもの。


 今俺は合戦の只中にいる。

何故こんな事になっただとかの寝言はほざかない。

自分で選んだ道だ、生きて行くためだとしても……たとえ他者を殺してでも自分が生き延びる為にこの道を選んだのだ。

泣き言は言うまい……たとえ土手っ腹から剣が生えていようとも。


 イヤ痛ってえええ!!


 麻痺しているのか想像していたより痛くないけど、十分すぎるぐらいには痛ってえええよ!

あーあ、こりゃあ死んだな俺。

まだ敵を誰も殺せないうちから腹刺されて死んじまうとはなあ……。


  でもせめてもの抵抗ってやつで、俺を刺した敵から武器を奪ってやった。

ざまあみやがれ、武器無しでこの乱戦の中絶望してお前も死ね。俺もこれから死ぬからよう。


 せめてこの戦場からは生き帰ってみんなで美味いもん食いたかったなあ。

まだ初陣だぜコレ。運が悪いと言うか単に弱っちいだけなのか……ま、両方だろうさ。


 所詮俺にはこんなの向いて無かったんだよなあ、今までいい事なんてなかったなあ、そんなの敵味方関係なくこの戦場にいる兵士のほとんどが同じ境遇だろうけどさ。


 でも俺が死んだらアイツらどうなるんだろ……心残りが出来ちまったなあ。

だからイヤだったんだ、一緒に住むなんて。結局悲しい思いをさせるだけだったんだ。


 まあ、そうは言っても俺自身アイツらいなけりゃあの時死んでたんだよな。

今まで延命出来たって事で納得するか、ここまで生きられりゃあ俺にしちゃ上等だな。

でもアイツらには悪い事したなあ……俺が兵士になるのも反対してたしな。結果このザマかハッ、何だよアイツらの言った通りじゃねえか。散々俺には無理だって言ってたな。

……心残りではあっても後悔じゃない、人生の最後で俺は確かに幸せを感じていたんだ……何だ、いい事あったじゃねえか。


 …………なかなか死なねえな。

痛みもなくなってきたし、目の前真っ暗なのに意識はハッキリしてる。

死ぬの初心者だけど、こんな風になるもんなのか?思ったよりサービスいいな。


 そんな事あねえよな?そりゃあ初めてだけど、死ぬってのはもっとこう……寂しくて、冷たくて、痛みと苦しみと愛しさと切なさが心苦しくて……うん、違うわこれ。

俺死んでねえわ。


 じゃあ一体何なんだ?訳がわかんねえ。


『貴方は善行をなしました』


 何だ、誰だ?俺に語りかけるのは……死神か?


『貴方の助けた孤児達はこの世界に光を灯す存在なのです』


 何を言っているんだ?あの子らが何だって?


『貴方はまだ死ぬべきではありません、世界の光があの子らである様に貴方もまたあの子らの光なのです』


 だから何の話をしているんだよ!くそ、声が出ねえ。


『貴方があの子らの傍らにある限り私もまた貴方の側にいましょう』


「だから一体何の話を………!」


 アレ、体が動く?


「痛え!」


 腹がズキズキする……けどアレ?


「生き……てる?」


 あの傷で?……さっきのは夢?じゃなかった。

訳分からんが、生きてるならまあ良かったのか……。

でも何にも出来なかったからなあ、吹けば飛ぶ様な給金しか貰えねえか。

 

 でも、またアイツらに会える……その事実だけで金なんかどうでいいわ。

それにしてもここはどこだ?野戦病院のテントじゃ無さそうだけど。


 広い個室に、清潔なベッド。大きい窓からは青空が覗いている。

高官用の病棟か?何で俺がそんな上等な所に。


「おお、目を覚ましたか!」


 誰だっけ、なんか見覚えが………あ!


「これは司令官殿!この様な格好で申し訳ございません!」


 痛む身体を押して、何とか上半身だけでも敬礼の形を取る。


「良い良い、無理をするな。君はこの度の戦での殊勲者なのだから」


「は、わ、私がですか?」


 意味が分からん、俺はただ刺されて死にかけてただけだぞ。


「うむ説明するとだな、君の相手はあの悪鬼羅刹と悪名高い百人斬りのエイバンスだ、君はかの悪鬼と戦いながら剣を受け、そしてそのまま奴から剣を奪い、我が軍は最小限の犠牲であの悪鬼エバンスを打ち取ることができ、それが呼び水となって〜………」


 何と、俺の相手はあの百人に囲まれながら単騎で全て切り伏せたあのエバンスだったのか。

俺なんかに足を掬われるとは不運な奴だな。


「ついては君に十万ロンドの報奨金と、腹に刺したまま抜かせなかったエバンスの剣を与える事になった」


 じゅ、じゅ、十万ロンド!家が買える金額だぞ!?


 次の日俺は退院した。兵士にとって死なない怪我は怪我じゃ無いからな。

俺に割り当てられた宿舎に戻ると皆に歓迎された。

どうやらみんな敵にエバンスがいると知って相当及び腰だったらしい。トドメを刺した兵士にめちゃくちゃ感謝された。コイツはきっと昇進するんだろう。


 敵はエバンスが早々にやられた事で戦術がズタズタになったらしく、うちの軍が圧勝したらしい。

この戦勝によって主戦場が変わり俺たちは一先ず帰れる事になった。

戦略なんて何も分からんからな、なんの情報ももらえないし。

分かっているのはアイツらに腹一杯美味いもん食わせてやれるって事だけだし、それで十分だ。


「おい、レオ!やったな、よく生きて帰った。これでガキ達も泣かずに済むな」


「オルター、お前も無事だったのか」


 俺と同郷の兵士オルター。同い年で、昔からの友人だ。


「お前と違って何の手柄もあげられなかったけどな、ま、生き残ったこの命が勲章だ」


「違いない、俺も死ぬなと思った時はそんな感じだったぜ」


 良かった、もちろん何人も死んだんだろうけど、こっちも構ってられない。

自分の周りで精一杯だ。


「まあ戦勝祝いだ、酒でも奢るぜ」


「おお太っ腹!いいねえ、でもいいのかい?ガキが腹空かして待ってんだろ」


「もちろん一緒に行くさ、祝いだからな」


 オルターの言うガキどもとは、俺が拾った孤児達だ。

もうじき二年が経つのか……早いな。


 アレは雪の降り注ぐ寒い日の夜だった……………

なんか始めちゃいました。

もう一つの作品が色々調べながら書いてるので、何も調べる必要もなく、世界観設定もいわゆるテンプレ世界にして、何も考えずに書きたいな。

と思って書きました。

当然見切り発車です。もう一つの作品が詰まったら気分転換でこっちを書きます。

理想はこっちが週一更新で、あっちが週三か四くらいで行けたらなあと思ってます。

ゆるゆる書いていきますので気長にお付き合いを。

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