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適正ナシ……?

 超絶イケメン公務員こと氷室さんの宣言ののち、全校集会は速やかに解散となった。


 その後は先生たちの指示に従い、教室で待機することになった。


 バッカス先生も検査のために教室を後にしており、教室の中はパーリーピーポーだった。



「そういえば、大事な話ってなんだよ」


「ああ、その件だけど――お前の配信、結構ヤバい感じだぞ」


「え、俺の配信……?」



 なんだろう、俺炎上するようなことしたっけ……? お寿司屋さんの醤油ペロったりしてないよ?


 誰かにぶしつけな発言をした覚えもないし、宝探しで保険証を手に入れたりもしていないよ……?


 震えていると、俺の勘違いを察したのだろう、猿飛が小さく笑った。



「ちげーよ。そういう事じゃないぞ」


「じゃあどういう事なんだ?」


「それは自分の目で確かめてみるといいさ」



 くつくつと笑う猿飛。何が何だかの俺。



「今日携帯買い替えるんだよな? だったらそこで分かるはずだ」


「ふむ……?」



 よくわからないまま猿飛の言葉に頷く。


 いったい何が起きているのか、そんな風な言い方をされると滅茶苦茶気になってしょうがない……!



「おいお前ら、教室から出ろ」



 そうこうしていると、俺たちの適性検査が始まるようだ。


 廊下に一列に並ばされて、設備が急遽設置されたっぽい多目的ホールに連れていかれた。


 いかつい機械たちが並んでいる。何かの数値を計測しているようだ。



「集まったようだね。これから適性検査を受けてもらいます」



 手を広げながらそんなことをいう超絶バリクソガチイケメン……氷室さん。


 間近で見ると余計イケメンだな。やっぱ腹が立つ。



「適性が出る割合は……平均で1クラスから3人程度。仮に適正者だとしても、すぐにどうにかなるってわけではないから安心してくださいね」



 40人に1人くらいの割合ってことか。思ったよりも多い……?


 漫画とかラノベだともっと割合が少ない気がする。主人公の特別感を出すためかな?


 そんなことはどうでもいい。これでダンジョンに潜ったことがバレたら、それは何か問題になる気がする。


 どうにかしてうやむやにできたりは……。



「ちなみにこれは国民の義務として特例的に設置された検査です。拒否はできません」



 無理か~。





「次、斉藤みやびさん」


「――はい」



 死刑を待つような気持ちでいると、斉藤さんの番が回ってきたようだ。


 さすがの斉藤さんも少し緊張しているようで、動きがぎこちない。


 計器に近づくと、検査員の人が検査の説明をしている。


 滅茶苦茶簡単に言えば、この検査は脳波を調べるものらしい。



「では、始めます」



 ヴヴン、と機械が低い音を奏でる。


 すると、数値がいくつか表示され……氷室さんが「おや」と声を上げた。


 これはもしかして、もしかすると、ってやつでは……?!



「おめでとうございます、斉藤みやびさん。あなたには探索者としての適性があるようです」


「……私が?」


「ええ。こちらをご両親に渡してください」



 大きめの封筒を受け取った斉藤さん。ちょっとびっくりしているようだ。


 にしても斉藤さんに探索者としての才能があるのか、こういうのって才能持ちはひがまれる展開あり得るよなぁ。


 ……もともとクラスメイトとの接点が窮極に薄い斉藤さんなら特に変わることはないのか?



「次、東雲秋」



 そんなこんなで名前が呼ばれ、俺も前に出る。


 ……ええい、ままよって感じだ。潜ったことがバレても、いきなり死刑! みたいなことにはならないだろうし……。


 ならないよね?



「では、こちらの脳波計測器をお願いします」



 何もありませんように、と祈るような気持ちで計測器を頭にはめる。


 少しすると機械からヴヴンと低い音が響き、氷室さんは「なるほど」などと言葉を漏らす。


 これは……何かあるのか?! ない反応なのか?!



――いや、でもここで「この人はすでにダンジョンに潜っていますね」なんて言われたらそれはそれで美味しくないか……?



 おいしいな。何ならそういう結果出てくれないかな。



「あなたは特に才能がないようですね」



 氷室さんから告げられた言葉は、しかし俺の淡い期待を裏切るもので。


 ……はい? なんですと? と呆けることしかできなかった。





「……秋くん、大丈夫ですか?」


「ああうん、大丈夫だよ」


「その……適性の件は、残念でした」


「気にしてないから大丈夫。斉藤さんは適性があってよかったね」



 本心からの言葉だけど、斉藤さんは少し悲しそうに顔を伏せた。


 俺が気を遣っているんだと勘違いしているようだった。


 ……否定、できないんだよねぇ。


 ここで「俺にはダンジョンに潜れる能力があるんだ」だなんて言おうものなら頭の病気を疑われる。


 心苦しいけど、斉藤さんには嘘をつき続ける形になりそうだ。



「ちなみに俺も適性あったぞ」



 猿飛には……まぁいいかって感じだ。


 それにこいつには十中八九バレている。なんたってこいつが、俺の活動を知る2人のうち1人なので。


 配信まで見に来るのはこいつだけだけど。母さんが見てなくてよかった~。



「それにしてもこの封筒の中身は一体何なんだろうな」


「両親に渡すまでは開封するなって、氷室さんも言ってました」


「まぁ、十中八九何かの書類だろう」


「そんなことは開かなくてもわかるだろ、猿飛」


「それもそうか。というか音でわかるもんな」



 馬鹿がよ、と笑えば猿飛も小さく笑う。斉藤さんは……うん、笑ってないね。


 っていうかなんか決意した顔だ。そんなことを思ってたら、斉藤さんが急に立ち上がった。


 え、何、どうしたの。急に俺の手を握っちゃって――。



「――秋くん」


「は、はい」


「私がっ……! 貴方を守ります! だから一緒に潜りましょう、ダンジョン!」


 

 ……これ、なんかすごい視線を集めてる感じしませんか?!

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