第一話 訴え
おまわりさんおまわりさん。
私が犯したのは罪か否か判断して貰えませんか?
これが罪であると言うならば私を逮捕して貰って構わないのです。
私にはもう、良い事と悪い事の判断がつかないものですから。
だから私は今日、こうやってこんな深夜に警察署に来ました。
私が幼い時の話は人から聞いたものですが信憑性は高いです。
うちの家系は代々学校経営をしています。
ほら、市内に唯一ある大学系列の学校法人ですよ。
おまわりさんも知ってるでしょ?
そうそう、そこそこ。
幼稚園、小、中、高、大学とエスカレーター式に進学できるようになっている学校です。
現在は千人ほど生徒がいる小さな学園であります。
祖父が経営を始め、そんなに有名ではないですが今でも学校を続けています。
今の学長はA田という男なのですが、彼は私が五歳の時、つまり十八年前に経営アドバイザーとして我が校にやって来ました。
今四十歳のはずですから、彼が来たのは二十二歳の時のはずです。
東大卒の美青年になぜ、経営アドバイザーを頼むことになったかと言うと、我が校は赤字に転落しそうになり、困っていたからでした。
それもそのはずです。
当時、学長であった祖父が他界し、息子である父が学長になったばかりだったのですが、父は悪い事に仕事があまりにもできなかったのです。
その上、趣味のギャンブルで学校のお金を使ってしまっていました。
生徒数は減っていないのにも関わらず赤字に転落しかけていたのです。
一緒に経営していた母は親のコネで入ったお嬢様学校育ちで頭の方はお花畑でしたし、何より不倫に勤しんでいましたからそんなことには全く気が付いていなかったのです。
父はこれでは母に怒られてしまうと思い気休めで知り合いに紹介してもらった経営アドバイザーを呼んだのでした。