寿退社した元同僚
お昼休みのチャイムが鳴る。
お腹すいたな。
カオルさんが他部署の後輩にさっき私に話してた内容と全く同じことを話しているのが聞こえてくる。
そっけない私の返答と違って、楽しそうに大笑いしてる。
私に言わずそっちで話せばいいのに...。
そんなことを思いながら私はデスクでコンビニの袋を取り出し、朝買ってきたパンと野菜ジュースをほおばった。
そしてスマホを眺める。
広告メッセージだらけのLINEに人の名前が表示されると嬉しくなる。
アユミと書かれたメッセージを開ける。
『マリアは気にしすぎなんだよー!その上司は悪気もなくて聞いてほしいだけなんだからさ、適当にニコニコしてうなづいてりゃいいんだよ!いいじゃん、正社員として働けるだけでも幸せなんだからさ、だからストレスに負けずがんばれ!』
まぁそうだよね。
高校時代からの友人であるアユミから、私は色々考えすぎて疲れるタイプだと言われている。
アユミは昨年大学時代のサークルで出会った男性とめでたく結婚した。
前までは仕事帰りによく2人で仕事の愚痴を言うために居酒屋に寄っていたのだが、アユミは今年から旦那さんの仕事で会えない距離になってしまった。アユミは入社2年で若手リーダーに任命されるほど明るくしっかりした子で、仕事を離れるなんてびっくりしたし、本当にもったいないと思った。アユミも子供を持てたら産休育休を取ってでもこの会社で正社員としてそのポジションで働き続けたいという気持ちがあったようで、自由に働ける私のことはうらやましいと思っているようだ。
私のような地味で目立たたず、なんの取り柄もないような人間が社員で働いて、アユミみたいな子が非正規雇用でしか働けないとなると本当にこの世の中の仕組みはもったいないづくしだと思ってしまう。