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続きです。なかなか、進みませんね。一応、一話3000字くらいになればいいなと思って更新しています。(完結済みですので安心してください。)

 両家の顔合わせは、ドリアス家にティアナとホマンが招かれる形で行われることとなった。


 屋敷に着くと案内された客室には、一級品の絵画や骨董品が並んでいる。頭上には豪華なシャンデリア。家具の一つをとっても、ガイラ家とは質が格段に違った。家の格の違いを見せつけられているようようで、ティアナはその手にほんのりと汗をかく。


 ノックの音が部屋に響いた。その後に入ってきたのは、ドリアス家当主のヤニスと端正な顔立ちの青年だった。初めて見る顔に、ティアナは長男のルイスであると確信する。


 ホマンとティアナはすぐに立ち上がり礼をした。そんな2人にヤニスは小さく笑い首を横に振る。


「いやはや、かしこまらないでください。今日は遠いところありがとうございます」


「いえ。お招きいただき、ありがとうございます」


「立ち話もなんですから、座りましょうか」


「ええ」


 そんな会話とともに形式的な自己紹介が行われた。


 ドリアス公爵家現当主、ヤニス・ドリアスはにこやかな笑顔でティアナたちを迎え入れた。40代半ばから後半であろう彼は、少しだけふくよかで、柔和な顔をしていた。貴族の、それも公爵家の現当主とは思えない柔らかな雰囲気にティアナは少しだけ驚く。


 ヤニスの隣で興味深そうにこちらを見るのは、ルイス・ドリアス、21歳。シルバー色の髪は長く、低い位置で結ばれている。その髪型は、綺麗な顔によく似合っていた。身長も高く、スタイルもいい。


「長男であるルイスがどうして家を継がないのか、不思議にお思いでしょう」


 少し重ねた雑談のあと、ヤニスは一番気がかりだった点について自ら触れた。


「ええ。もちろん、思惑があるのだと思いますが、正直に言いまして、気になっておりました」


 ホマンが素直にそう告げると、ヤニスは微苦笑を浮かべる。


「思惑、なんて大それたものはないんですよ、実は。ただ、私はもうそろそろ爵位を息子に譲りたいと思っているんです」


「まだお若いのに?」


「そうですね、まだ若いと言える年齢でしょう。けれど、息子も自分の足で立つことのできる年齢になってきましたのでね、息子を裏から支えつつ、妻と2人でゆっくりとした時間を過ごしたいと思っているんですよ」


「そうですか」


「ええ。若い頃は、王家を支えることや領地を広げることばかりお考えておりましてね、妻や息子を顧みることなんてしてきませんでした。それが貴族と言えばそれまでですが、人生を振り返ってみてもったいないなと思ってしまったのですよ。だからこそ、これからは息子の成長を一番近くで、妻と支えたいと思っているのです。私の唯一にして、最大のわがままなんです」


「わがまま…ですか」


「それなのに、長男であるこいつときたら、『自分にはやりたいことがある』と私のわがままを一刀両断しましてね。弟の方に聞いたら、学校を卒業次第、爵位を継いでくれると言うので、その言葉に甘えたのですよ」


「やりたいこととは何なのでしょう?」


「息子は事業を立ち上げておりましてね、それを軌道に乗せることで今は頭がいっぱいのようです」


 困ったように、けれどどこか嬉しそうにヤニスは言った。

 

 けれど、ティアナは彼の本音がどこにあるのかわからなかった。世の中には体裁というものがある。長男ではなく次男が爵位を継げば、周りは好き勝手噂するだろう。それが事実でも事実でなくても。それでも次男が継ぐならば、それ以上に継げない理由があるのではないだろうか。


「息子の願いを叶えたいと思う親心ですよ」


 ティアナたちの考えを読んだようにヤニスは付け加えた。


「私は若い頃、王家のために、領地を守るために、必死でした。悪事に手を染めたことはない、なんて決して言えません。でも、だからこそ息子には自分の力で自分の願いを叶えて欲しいと思っているんです。まあ…これも私のわがままですな」


「…」


「いやはや、若いお嬢さんに聞かせる話ではありませんね。ティアナさん、申し訳ない。…不肖の息子ですが、優しい子でもあります。どうか、息子をよろしく頼みます」


 急に呼ばれた自分の名前に一瞬思考が追いつかなかった。頭を下げるヤニスにティアナも慌てて頭を下げる。


「堅い話はこのくらいにしておきませんか?」


 今まで黙っていたルイスが初めて口を開いた。低すぎもせず、高くもないその声はその場によく響く。


「ホマン様、ティアナ嬢と2人で話をしてみたいのですが、庭に連れて行ってもよろしいでしょうか?」


「ええ、どうぞ」


「それではお借りいたします」


 ルイスはソファから腰を上げ、ティアナに手を差し伸べた。


「レディ、私と一緒に来てくださいますか?」


 ホマンが頷いた以上、ティアナの答えは一つしかない。


「喜んで」


 その顔に綺麗な笑みを浮かべ、ルイスの手に自分の手を重ねた。その反応にルイスも笑みを浮かべる。


 庭に出ると気持ちの良い風が静かに頬を撫でた。ティアナの長い黒髪が風で靡く。一面の花畑に、それを見渡せるガーデンテーブル。日よけのパラソルの下に案内され、椅子を引かれた。ティアナはお礼を告げ、腰をかける。ルイスもティアナの対面に座った。


「自慢の庭なんだ。どうかな?」


 赤、青、黄色、いろんな色の花が咲き誇っていた。手入れの行き届いた庭に思わず感嘆の声が漏れる。


「素晴らしいですね」


「そう言ってくれると庭師も喜ぶよ」


「本当に素敵」


「…ティアナ嬢、突然、婚約なんて驚いただろう?」


 少しだけ真剣味を増したルイスの口調にティアナは一瞬、反応に迷ったが、すぐに笑みを浮かべて首を左右に振った。


「貴族の娘ですから」


「でも、貴族の社会も、昔に比べたら恋愛結婚が圧倒的に増えてきてるよね。こんなにわかりやすい政略結婚でいいの?」


「ええ、かまいませんわ」


「ふ~ん」


「恋や愛でつながるよりも思惑でつながる方が、わかりやすいと思います」


「そう」


「…?」


 どこかそっけない反応に、ティアナは首を傾げた。


「俺の周り、恋愛結婚が多いんだよね。みんな、嬉しそうに奥さんの自慢話してきてさ、すっごいうざったいんだけど…本当に幸せそうなんだよね」


「…ルイス様?」


「だからさ、ティアナ嬢、君に一つお願いしたいことがあるんだ」


「何でしょうか?私にできることなら何でも」


「俺の好きな人になってくれる?」


 想定外の言葉に、表情に出さずにティアナは驚く。言葉の意味を理解するのに、少しだけ時間がかかった。


全然関係ありませんが、キーボード買ったばかりなのに、テンキーの2が壊れました(笑)

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