天女の羽衣
半径100kmにコンビニすらない、風光明媚を極めた村がありました。
村には川が流れており、そこで天女が水浴びをしておりました。
都会の女! 見るからにこの辺の人では無い顔をしていたので、偶然水浴びを見つけた農夫は出来心で羽衣を盗んでしまいました。
「これが天女の羽衣か!」
『土井中 二中』と書かれた紺色のジャージは、農夫の心の隙間を満たす何かを持っておりましたが、すぐに農夫は罪悪感に襲われました。
「い、いかん……!」
農夫はジャージを川へと流しました。そして天女に向かって「流されてますよ!」と教えました。
「あっ! 大変!」
天女が川を下り、ジャージを追い掛けます。
ジャージまでもう少しというところで、農夫は川の中の異変に気が付きました。
「ワニだ!!」
飼えなくなった子ワニが大きくなり、川の主へと変貌した姿がそこにはありました。
天女はワニに気が付いていません。
「危ない!」
農夫は天女を庇うように天女とワニの間へ割って入りました。ワニに噛まれたら一巻の終わりです。デスロールで肉を食いちぎられ、すぐさま絶命してしまう事でしょう!
「すぐに川からあがるんだ!」
「はい! ありがとうございます!」
天女は川からあがると、すぐにジャージに着替えました。そしてチャリで帰りました。ギリギリ学区内なのでチャリOKなのです。
「ぐわぁぁ!!」
一方、農夫はワニに噛まれておりました。水の中でワニに勝てるはずがありません。
ワニがデスロールの構えを見せています。
「そうだ! ワニと同じ方向に回れば助かるのでは!?」
農夫は閃きました。
そしてワニの構えから回転方向を見極めます。
「右だ!」
ワニが時計回りに回転を始めました。
農夫も時計回りに回転を始めました。
農夫は普通のデスロールより少し早くちぎれました。