8話 会いたいの
「……? 」
私は少しずつ目を覚ましていくと、周りが静かだったことに不思議に思えた。
「あっ、ここ私の部屋」
私の部屋といっても、四人部屋だ。二段ベッドが二つと貰い物の勉強机と椅子が二つずつと折りたたみの机一つが、ぎゅっと詰まってる部屋。
今は豆電球がされていて、薄暗い。少ししてからドアが開いた。
「おねえちゃん、おきた? 」
「みはるちゃん、起きたよ」
みはるちゃんは小学校の低学年で、私のことを姉と慕ってくれてる。
「せんせい、あかりおねえちゃんおきたよ! 」
みはるちゃんは、後ろにいる先生に報告する。
「みはるちゃん、教えてくれてありがとう! 」
「うん! 」
「みんなのところに、行っててくれるかな? 」
「はーい! 」
みはるちゃんは、元気に廊下を走っていった。彼女の姿を見届けてから、先生は部屋に入りベッドのところに椅子を持ってきて座る。
「彩香里ちゃん、体調はどうかな? 」
「眠い」
「もう、そんなこと聞いてないでしょ」
先生は、体温計を私の脇に入れた。また、数十秒して体温計が鳴った。
「熱も引いてきたけど、明日も一応休む? 」
「うん。行きたくない」
「生未渡くんから、聞いたんだけど」
あっ、これ悪い予感がする。
「あのさんと日曜日に会う予定にしていたけどね。彼に家の用事が出来て、学校にもしばらく来れなくて、当然日曜日も会えないから。ショックとストレスで体調が悪くなったんじゃないのかなって。それはホント? 」
「うん」
生未渡くんが、あのさんのことを誤魔化してくれて良かったと思う。
「分かったわ。あなたは元々人より感じやすいからね」
「うん」
「まだ寝てなさい。あとでお粥を持ってくるわ。それと彩香里ちゃんの大好きなお薬も一緒にね」
「食欲あるから、お粥だけ」
「わがまま言えるなら、大丈夫ね」
先生はホッとした顔を見せて、私の部屋を出て行った。
「あのさんに会いたいな」
私のつぶやきは、薄暗く静寂な部屋に吸い込まれ誰も聞くことはなかった。
先生は少ししてから、お粥といらない薬を持ってきた。それと、電気もつけた。
「はい、お粥食べてね」
「それだけ、食べるから」
「お薬も一応飲んで、熱冷ましをはろうね」
「いや」
「わがまま言えるなら元気ね。生未渡くん、心配してるのよ」
「うん」
「生未渡くんが熱冷ましをはってあげたら、静かに睨んでくるって悲しそうな顔をしてたよ。あとで謝ろうね」
「お粥食べたから、おやすみ」
「コラコラ、はい薬と水! 」
先生に無理やり、薬と水を渡され渋々飲んだ。やっぱり薬は苦手。
「良薬は口に苦し」
「……」
「はい、熱冷ましはるよ」
「……」
私はもう疲れて無抵抗で、されるがままにされた。そして目を閉じて寝た。
翌日は、熱が出て学校を休んだ。
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