27話 昔の話よ
あのさんの生まれ故郷の場所は、海と山に挟まれた田舎にある。達音さんのおばさんの家は山よりで空気が美味しい。
おばさんの家は、あのさんにとってのはひいじいちゃんに当たる人と彼女夫婦と保健室の先生の兄に当たる人とその奥さんが住んでいる。
元々彼女の家はひいじいちゃんことジイさんの家だか、本人は隠居生活だからといったそうだ。
私たちはこの家と離れに分かれて寝泊まりをする。男性陣は離れで女性陣は保健室の先生が使っていた部屋で寝ることになっている。
「ねぇ!兄貴が来てんでしょ!! 」
その声の主はバタバタと廊下を歩く音ともに勢いよく襖を開ける。
「暁文、全部うるさい」
「それを楽しみにしてた!! 」
「うるさい!!黙れ、抱きつこうとするな! 」
「達の方がうるさい」
「達音は人気だね」
「黙れ、ストーカー」
達音さんは、頭を抱える。隣を見ても前を見ても面倒な奴しかいないと、長年の苦労が垣間見えた。
「だから、来たくなかったんだ」
「それが理由なんだ」
生未渡くんは、いち早く達音さんの気持ちを察した。
「親分、兄貴って相変わらず俺に厳しい!! 」
「そうじゃな」
「彩香里さん、もう帰っていいか? 」
「えっ? 」
「達音さん、来たばっかりだろ」
「じゃあ、暁文を黙らせろ。血圧が上がる」
「えっ? 」
達音さんは大きくため息をした。その時また玄関の方で、ガラガラと扉が開く音がした。
「母さん、もうみんな来てる? 」
「かすみちゃんも帰ってきたら、ただいまでしょ」
「あっ、ただいま帰りました」
「おかえりなさい」
「母さん、私もってことは暁兄帰ってきて、達音さんため息をついてる? 」
「その通りよ、早く行ってあげなさい」
「はーい」
静かに廊下を歩き、静かに襖を開けて保健室の先生ことかすみさんは部屋に入ってきた。
「ジイちゃん、ただいま戻りました」
「かすみは良い子じゃな。兄の暁はうるさい」
「そうだね。カオスな空間になるギリギリに帰って来れてよかった」
「かすみ、早速だが暁文をどうにかしてくれないか」
「はーい、するけど待ってくれる? 」
「……あぁ」
それを聞いて先生は、今度は私とあのさんと生未渡くんの方に身体の向きを変える。
「三人とも、長旅お疲れさまです」
「「「はい」」」
「先生の兄の暁文が達音さんを困らせたら、私に言ってください。別のところで絞めるので」
「先生と達音さんも同じこと言うんですね」
「そうね、達音さんたちのご両親は海外暮らしだったから。達音さんときさきさんはこの家で一緒に育ったからね」
「また、新たな親父たちの過去知った気がする」
「先生も、極道もの好きなんですよね? 」
「はい、でも今落ち着いてるわね。好きと言っても、先生たちが子供の頃にすごく流行ってしばらく我が家でのブームになってたの。今はそれがふとした時にでちゃうって感じよ」
「何かすごいね」
「そうね」
私たちが話してる間にも、暁文さんは達音さんに一方的に何か話していた。達音さんは凄まじいオーラを身にまとっているように思えた。
次にかすみ先生は、明日歌さんに挨拶をしに行った。
「明日歌さん、お久しぶりです」
「久しぶりだね、かすみちゃん」
「ここでゆっくりと休んで、そしてここにいる間は元気に働いてください」
「かすみちゃん、言ってること矛盾してるよ。君たちは俺に辛辣過ぎない? 」
「「「気のせい」」」
オジイさんと達音さん、そしてかすみ先生が見事にハモった。
「やっぱり俺の扱い酷い」
明日歌さんが落ち込んでいると、また襖が開いた。
「お昼ご飯にするから、誰か手伝ってくれないかしら」
「さぁ、お前ら働け」
「俺らよりも若い子たちはね」
「何言ってるんだ。明日歌お前も働け」
「達音はしないの? 」
「僕は運転と暁文の相手で疲れた」
「俺は君たちに酷い扱いをされて疲れた」
「このままだったら埒が明かないね。私たちが料理を運ぶからそれを達音さんと明日歌さんとジイちゃんがテーブルにセッティングよろしく」
「かすみ、ワシを巻き込むんじゃない」
「ジイちゃん、動かざるもの食べることなかれだよね? 」
「クッ……」
オジイさんは悔しそうに顔を歪める。
「暁文ちゃん、頼んでたお寿司は? 」
「あっ、車だ!!取ってくる! 」
暁文さんはまたドタバタと廊下を走る。
「暁兄は落ち着きが無いよ」
「暁は元気だけがとりえだから」
「ジイちゃん、それ諦めてるでしょ」
「まぁまぁだな」
オジイさんはわざとらしく曖昧に答えた。
「彩香里ちゃんたち、この家はにぎやかでしょ」
「はい」
「この家は、みんな俺に辛辣でね。達音はいつもストレスが溜まるからって理由があってね。達音の大学進学に合わせて、きさきを連れてここを出て行ったんだ」
「親父たちの理由がすごいわ」
「程よい距離感って大切だよ」
「でも、かすみちゃんも俺たちが住む街の方に来るって思わなかったな」
「それは、明日歌の心配をしてだ」
「まぁね」
「どういうこと? 」
「明日歌の会社での事件後に、すごくやばくてな。僕ときさきだけじゃ対処がしきれなくて。まだ小さいお前もいたしな。だから応援を頼んだら、かすみが来てくれたんだ」
「達音さん、ウソつかないの」
「ウソついてないよ。半分は」
「ハァ……」
かすみ先生は大げさにため息をついた。
「明日歌さんが大変だったのはホントだよ。子育てもあってより大変だけど。明日歌さんの世話を二人が一生懸命にして、だんだんと開き直りじゃないけど。面倒くさくなって、医療系を勉強していた私にポンって強引に押し付けてきたでしょ」
「ちょっと、達音は嘘ついていたね」
「「明日歌は黙ってろ」」
「みんな、ご飯食べたいなら。お手伝いを早くしてくれないかしら? 」
おばさんが、凄まじいオーラとともにやって来た。それはなかなか私たちが呼びれたのに、話し続けて一向に来ないせいだ。
「「「「はい!! 」」」」
みんなは震え上がりながら手伝いをした。テーブルにはお寿司にお稲荷さんにサラダと並んでいた。
「美味しそうですね」
「美味しそうじゃない。美味しいんだ。みんなが集まったら、必ず寿司を買ってみんなで食べるんじゃ」
オジイさんさんは嬉しそうに言う。
「よくみんな来てくれた。さぁ、ご飯食べよう。いただきます」
みんなで手を合わせて「いただきます」と言ってごちそうを食べる。オジイさんの言うとおり美味しかった。
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