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黒白  作者: 真辺 悠
黒と白の2人の世界
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5 ギルドと宿屋

「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?」

「はい。なんでしょうか?」

「ギルドカードに入っているお金を使いたいんですが使い方がわからなくて…」


 彩乃が説明する。同時に宿の位置まで聞き、相手の名前まで聞いてみせた。コミュニケーション力は俺の数倍あるかもしれない。


 受付嬢のカレラさんが言うには、ギルドカードに入っているお金は商業ギルドで現金に変えることができるそうだ。常識である。なんで知らないの、って反応だった。


 このシステムは、冒険者や商人が旅の途中で無駄な金を持ち歩かなくて良いようにあるらしい。ギルドカードは、登録者以外は使えないので防犯対策にもなっているとのことだ。一〇万ドルもあるんだし暫くは大丈夫だろう。


「あともう一つ聞きたいんだけど、ここはウルフの買い取りとかしてる?この街に来る前に三匹ほど倒してね」

「魔物の買い取りはあちらで行っています。討伐依頼は受けていらっしゃいませんか?」

「生憎依頼は受けてない」


 討伐依頼を受けないと依頼達成の見做されず依頼料をもらえないらしい。でも魔物の買い取りはしてくれるとのことなのでカレラさんにお礼を言って先ずは魔物の買い取りをしてもらいに行く。


「魔物を買い取ってもらっていいですか」

「なんの魔物でしょうか?」

「えっと…」


 彩乃がこちらを向いた。ウルフは俺が持っている。ここは俺が話をしなければならないだろう。


「ウルフ三匹。どこか出せる場所はある?」

「ウルフですね。解体はギルドの方でしてしまってよろしいのですか」

「え、うん。できないし」


 普通は自分たちで解体するのか?どちらにせよ、俺たちに解体スキルなどないのでギルドの方で処理してもらうことにする。


 ウルフを買い取ってもらいお金を受け取る。脳天を一撃で仕留めているのでとてもきれいだ。でも、血が流れるから俺には無理。


 ギルド職員には驚かれどのように倒したのか聞かれたが黒い端末というチート装備を使っていますとは答えられないので秘密ということにしておいた。


 秘密があると人から興味を惹かれやすい、これ常識。


 魔物の素材は傷が少ないほど高価で取引されるらしい。確かに傷が多いものを欲しがる人はいないだろう。そう考えると銃と命中補正の組み合わせは魔物討伐においてベストマッチかもしれない。


 俺たちは二一〇〇〇ドル受け取り続いて商業ギルドへ行く。扉一枚隔てた先にあるのですぐに到着する。


「こっちは人が多いのね」


 彩乃が商業ギルドの中に入ると呟く。確かに冒険者ギルドに比べると人が多い。どんなものが取引されているのか調べてみるのもいいかもしれない。


「あそこ、何か売っているみたいだよ。商業ギルドの直売所といったところかな。まだ時間もあるし見てく?」

「そうね。たくさん歩いたからお腹空いちゃった」


 えへへ、とお腹の当たりに手を添えて笑う。微笑ましいものだ。


 日本にいた頃はちゃんと学校に通っていたのに休日遊ぶ相手もいなかった。この世界に来てこんな可愛い女の子と知り合えて一緒にいるのは今でも信じ難い。本当に助けられて良かった。


 ギルドカードに入っているお金を一万ドル現金に換える。これだけあれば当分大丈夫だろう。


 手数料が取られるのは痛いがこういうのはそういうものなのでしっかり払う。税金と同じだ。払わなければ福祉は受けられない。


 彩乃はウルフ代をもらうことに抵抗していたが、半ば無理矢理に押し付けた。ここまで二人で来たのに全額自分のものにするのは気が引けたからだ。


 彼女のためというよりはむしろ自分の良心のためだ。だからそんなに重みに感じることでは決してない。


 現金はアイテム袋に仕舞う。街に来るまでの間で俺が必須だと思ったアイテム袋と地図は彼女も使えるようになっていた。


 商業ギルド直売所には、卵や魔物の毛皮などいろいろなものが売っていた。特に気になったのがいろんな色、形をしたきれいな石だ。色は赤、青、黄色、緑、透明で丸いのもあればとんがったものなどさまざまだ。


 木札には魔石と書かれている。何に使うのか気になったが、多分この世界では子供でも知っている常識を知らない冒険者として馬鹿にされる気がしたのでスルーする。そのうち知ることになるだろう。


 一通り見た後、屋台がある方に行き昼食を食べる。この世界の初めての食べ物だ。俺が買ったのは広島焼?のようなソースが付いた麺を解いた卵で巻いてあるやつだ。


 そして彩乃はサラダや鶏肉がクレープ生地に巻かれたものを買っていた。どちらもおいしそうだ。


「それじゃ頂こう。美味し糧を!」

「あはは。…それ、なんか聞いたことがある」


 頭より上にあげて挨拶すると彩乃も少しだけあげて応えてくれた。いつも一人だったから食事中は話さない。俺は家族と食べる時だってあまり話さない人だったのでこの時ばかりは静かだった。


「おいし?」

「うん」


 こんなもん。初めてのデートで緊張しているカップルみたいだ。いや、そうなのかも知らないほど俺はこういう経験ないんだけどね。気不味い。


 昼食をとった後は、宿屋に向かう。早く行かなければ部屋が埋まってしまうかもしれない。


「二部屋空いてる?どこでも良いんだけど」


 宿屋に着くと早速部屋を用意してもらう。部屋は空いているようだ。俺たちは一〇日分の宿泊代を懐から取り出す、ように見せかける。実際はアイテム袋から出している。


 実は、先ほどウルフを買い取ってもらう時にウルフの綺麗さ以上に驚かれたことがある。それがこのアイテム袋の存在だ。


 白黒の光の渦巻きが突如現れウルフを出したことがこの世界の人にとってはショッキングだったらしい。


 もちろんそれは俺たちも同じなのだが、自分がしていることに驚くことほど滑稽なものなどないので平気を装った。


 近くにいたギルド職員はじめ冒険者ギルドにいた冒険者たちが騒いでいたのも全て無視だ。


 しかし、頻繁に騒ぎになるのも困るので俺と彩乃は相談し、なるべく人に見られないようにアイテム袋を使うようにしようと決めたのだ。


 宿を確保した俺たちはこの街の地図を作るため探索に向かった。


 まずは情報を集める必要がある。家に帰るかどうかは考えない。運営からこの世界で暮らすようにと言われているので帰れる気がしないので足掻いても無駄だと思う。もちろん、高校は卒業しておきたいし、できるなら進学も考えているが、彩乃を置いてひとりだけ帰る気にはならなかった。


 ならば、彩乃としっかりこの世界で生きられるように尽くすのが良いと思うのだ。情報収集はその土台となる。土台は大切。これ常識。だから頑張るのである。

レイは彩乃には普段通りに話しますが、他の人には強い口調で話します。

舐められないために考えたのでしょう…

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