1 プロローグ
一一月二六日。土曜日。一一時四六分。インターホンの音が鳴る。
「宅配でーす」
インターホンからは調子の良い声が聞こえた。宅配が届いたらしい。調理中の火を止めて、玄関に向かい、荷物を受け取る。
「ありがとうございます」
どうやら俺宛らしいがさてはて。見覚えがない。ここ最近、ネット注文もしていないはずだ。爆弾?とも思ったが、軽い。流石に違うだろう。俺を殺したいと思うほど、憎まれることはしていないし、憎まれた程度で死にたくない。
俺は簡単に昼食を作ると皿に乗せ、テーブルまで運ぶ。
今日は土曜で学校は休みだが、両親は仕事でいない。なので、自動的に昼食は自分で作ることになるのだ。カップ麺でも良かったが、朝からやることがなかったので作った。今日の昼食は、オムライスである。
映画を見ながらご飯を食べ、皿を洗ったら一息つく。午後は何を見て過ごそうか考えていたら、今まで忘れられていた先ほど届いた宅配物の存在を思い出す。今の俺には、その程度の存在だった。
「注文してないはずだけど開けちゃっていいよね?もう受け取ったし、今更どうこうしても遅いよね」
一人で勝手に納得して開封する。
「…スマホ?」
中に入っていたのは、スマホのようなタブレット端末だった。だが、何かおかしい。カメラもない、スピーカーもない。電源ボタンすらないのだ。これでは使えない。
取り敢えず、他に何か入ってないか、段ボールの中身をすべて取り出す。
結果から言えば、役立たずのスマホ擬き以外にもあった。紙が。だが、この紙には俺が知りたいことは一切書いて無く、寧ろ混乱する一方だった。紙には以下のようなことが書かれている。
『 晩秋の候、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
厳正な審査の結果、私共が管理する世界へご招待することが決定いたしました。おめでとうございます。
もちろん参加料及び宅配料金の請求は一切致しません。
以下の日時に招待いたしますのでどうぞお楽しみになさってください。
記
日時 一一月二八日 七時
その他 同封されている端末をお持ちの上お待ちください。』
どこから突っ込もうか。私共が管理する世界に招待?新手の詐欺かなんかだろうか。だが、費用は請求されないらしい。わからん。
「私たちが管理ってどこの誰よ。あなたは誰?君の名は」
そもそも二八日は学校なのでどこにも行くことはできない。強いて言えば、学校に行くので七時では間に合わなくなる。それは困る。
新しいゲームのテストプレイヤーに選ばれたという感じでもない。そもそも応募していない。わからないことしかないがこれについてはもう終わりでいいかもしれない。
俺の物語は始まる前に終わっていた。
それから二日後。一一月二八日。月曜日。六時三〇分。今日は学校だ。例の手紙はでくの坊同然の黒い端末と一緒に机の上に置かれている。もう寒くなってきて布団から出るのが億劫だ。それでもなんとか布団から出た。頑張った。
一一月二八日。月曜日。六時五九分。
もう一度手紙を読み、なんとなく黒い端末に触れてみる。そのとき――
黒い端末が光った。それはもう眩しいほどに。カメラもないスピーカーもない。電源ボタンすらない黒い端末が今までの分を消化するかの如く光り輝いていた。
咄嗟につぶった目を開ければ、そこには知らない景色が広がっていた。