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夢見好し

作者: 皿吉

 ゆめにはしゅうかんがあった。毎朝まいあさしょう学校がっこうへとかよみちにある神社じんじゃへの参拝さんぱいがそれだ。

神様かみさまほとけさま、どうかわたししあわせにしてください」

 神社じんじゃてらべつもつかないゆめまいにち々々(まいにち)そんなふうにねがい、なけなしのぜになんたたいた。

ゆめのいうしあわせというのは神様かみさまちゅうじん出会であうことであったり、こことはべつかいしんじられない不可思議ふかしぎじゅつ出会であうことであったり、あるいはそのべつかいきゅうせいしゅとなることであったり、そのときどき々で様相ようそうえた。そのどれもがかなうことはついぞなかった。


 電灯でんとうやコンロのスイッチをけるたびに、いつもとはなにちがうのではないか――たとえばかいおんひとこえこえてきはしないか、ひかりまたたきがなにかをつたえようとはしていないか――とおもねがってじっとつづけ、ひとつとびらければそのこうにぶん想像そうぞうもつかないかいひろがっていないかとむねをときめかす。いまのところそのたいつねうらられていたが、ゆめ一向いっこうにやめようとはおもわなかった。


 あるどこともれない場所でゆめしろきつねった。みっつにかれたらめかすそのきつねひとことあやつゆめかたりかけた。

 「おまえはわたしやしろひゃくもうでてくれたね。けれども、そのたびにおなじようなことをねがっている」

 「退屈たいくつかたがないの。灰色はいいろかいからわたしして、おねがい」

ゆめ数多あまたりゅうこう使つかわれたようなちんまわしでもってこんこそとせまったが、とうきつねゆううつそうにかぶりった。「わいそうに」

 「まえにあるものをたいせつにしないかぎり、たされることはないだろう」

 ゆめます。つまりはすこ不思議ふしぎゆめ辿たどったにぎなかった。内容ないようなどすうふんにはきれいさっぱりけてしまい、このかいにないものをさがもとめるひび々がつづく。


ゆめ大人おとなになっていた。大人おとなになればゆめてばかりもいられない。せいしてはたらき、真面目まじめだけがえるおとこせきを入れ、ども二人ふたりんだ。いつのにかそうなっていた。

「あたしにはなにこうなのか、これっぽっちもからないね」

すぐうしろでそうささやかれ、ゆめはぎょっとしてかえった。ちょうそんなふうにおもっていたのだ。

大人おとなにはとらえられないよ。いやどもぶんだって、あんたにえやしなかったろうが」

「あなたは妖精ようせいなの?わたしれてって」

「まだっているの。このうちじょうしあわせになれるしょなんてないよ。おっとはあんたがえらんで、どもぶんんだの。ひとでいることだってできた。どもじみたそうを、ぼうっとつづけることだってできたの」

たいをいわないで…」

なにもかもすぐそこにあるのに。らしてるとえっちまうよ」

こえこえなくなる。ゆめぶんくちひらいていることにづき、いまなにくちにしたかしらとかんがえた。


 はく寿じゅむかえようというころゆめとこいたぎりがれなくなった。おもすうくちしかとらず、すわとくかとふるいえしんせきじんぞくぞく々とつどった。財産ざいさんぶんおっときていたころにませており、遺言ゆいごんつたえようにも今更いまさらうことが見当みあたらない。

 (つまらない人生じんせいだったわ。たった一回いっかいきりでもいい、不思議ふしぎなことに出会であえていたら。それだけできてけたのに、せめてお仕舞しまいのときくらい、てん使さまむかえにてくださらないかしら。)

 しかしてん使あくまくらもとにやってはこなかった。しょうしょうゆめをつむり、そのままめないまぼろしえらんだ。


 「本日ほんじつはおあつまりいただき、まことにありがとうございます。ええじんねむりのほうとくとし、せいぜんは…」

 「いやあこんなにていただいて、かあさんもうれしいだろうね。まさにだいおうじょうだ」

あたまのややうすくなったおとこ――ゆめむすかんがいひたった。

 「そうかしらね。あのひとさいまで、まんたらたらにえたけど」

となりせきじんゆめむすめはそうかえし、じゅにぎりなおした。ひもれかかっている。

まんってなんだい。かあさんはこくないでもゆびりの――」

「そういうんじゃないの。おかねとかりょく多寡たかじゃないのよ、あのひとはもっと…

いえ、きっと駄目だめね、どんなファンシーなかいでも」


「ないものねだりばかり、ぶんもといものばかりあのひとさがしていたからね」

むすめはそうっておもだまくうかし、あたらしいひもつななおした。


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