ヲタッカーズ3 元カノは大泥棒
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
時空海賊、ギャング、宇宙人の聖都侵略が始まった!
聖都の危機にアキバのCharlie's angels
"ヲタッカーズ"が立ち上がる!
オトナのジュブナイル第3話です。
今回は、主人公の元婚約者が登場、娘を誘拐され彼女は"時間トンネル"の中枢チップを盗んで闇の取引業者に渡します。
しかし、この盗難がバレれば彼女は一生お尋ね者、一計を案じ"ヲタッカーズ"は、この盗難をなかったコトにしようと…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 六本木から来た女
そろそろシンデレラの馬車が出る時刻。
「あ、もう今宵は閉店ですけど」
「貴女が…ミユリさん?」
「貴女は?」
長い睫毛がバシャっと瞬く。
「私、マリサ。テリィの元婚約者」
そして、彼女は挑むように僕を見る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
遊ぶ街毎にプロフィールを変える。
ソレは都市生活者の智慧だが、まぁ、その、時としてトラブルの素にもナリ…例えば今w
「テリィたん、婚約してたのか!」
「おーい!この中で目下テリィたんと婚約してる奴?重婚だから!」←
「きっと御事情がおありでは?みなさん、何か飲みませんか?御屋敷の奢りです。私は、飲みます!」
ヘルプのつぼみんの仕切りだ。
ミユリさんは…凍りついてる←
誰も声をかけられないw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、僕はマリサと超高速エレベーターで地表へ真っしぐら。
御屋敷は高層タワーの最上階だが、専用のエレベーターがある。
「どうしたの?何かあったワケ?」
「いきなりステーキ…じゃなかった、イキナリ姿を現わすには思い切りマズいタイミングだった」
「え?何で?もうサラリーマンはやって無いンでしょ?」
「ソレが色々トラブってる。第3新東京電力がスパッと辞めさせてくれなくて…で、どうやって見つけたンだ、僕のコト?」
「SNSで」
「やってないょw」
「貴方はね、有名人なの。で、どうしても、会いたかったワケ」
「その言葉は10年前に聞きたかったな。今は2度と会いたくない男no.1だろ?因みに、君は僕の会いたくてない女no.1だから」
「困ってる。ピンチなの!助けて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日。旧万世橋駅の赤煉瓦が残る、神田川沿いのオープンデッキ。
マリサに呼び出された僕は"ミユリさんと"白いテーブルでお茶。
「奴の名はテロリ。ブラックマーケットのトレーダーで、元は何処かの国の情報部員。あの川向こうのマンションのベランダにいる女がそうよ(彼女は狙撃兵用の照準スコープを覗いてるw)闇取引業者にして最低の女。で、先月、彼女から仕事を頼まれた」
ミユリさんが突っ込む。
「貴女のお仕事は?」
「物資の調達係」
「ソレじゃわかんナイだろ?テレるコトないから、ハッキリ泥棒って逝えょ」
「秋葉原のTFC産業と言う防衛関係のスタートアップから無人偵察機のチップを盗むお仕事」
「おいおい、フザけろょ?TFCはUAVなんか作ってナイょ。ナショナルプロジェクトの"時間トンネル"中核企業じゃないか!ソレ、恐ろしくヤバい仕事だぞ?当然、断ったょね?」
「…断るつもりだった」
「悪いが、国から技術を盗む手助けナンか出来ないからな!」
「…だから、もう盗んだわ。私1人で」
そして、マリサは安い白テーブルの上に、昔のVHSテープ大のユニットを無造作に置く。
「あらあら。今日は、私のTO主催で元カノの紹介ランチだと思っていたら違うのね。テリィ様の"元"婚約者は、国家計画の"中枢チップ"を盗んだお尋ね者なの?」
「ソレが…未だ誰にもバレてないから、厳密には未だお尋ね者にはなってない。でも、いずれは私だとバレるわ」
「ナゼ?」
「このチップを盗むために、私はTFCの社員になった。その上で深夜にカードキーで侵入したの」
「何てこった!何故ソンな無茶を?!」
「時間がなくて仕方なかった。娘を誘拐されたの。で、身代金が"中枢チップ"」
「君の娘?」
「マリモ。9歳」
驚く間も無くミユリさんが突っ込むw
「貴女とテリィ様は、いつ別れたの?」
マリサは、唇を噛んで俯いてしまう。
ヤバ…地雷はサッサと踏んでしまえw
「僕の娘なのか?」
「…いいえ。違うわ。だけど、助けて。娘に何かあったら、私、生きていけないわ」
「何をして欲しいンだ?」
「娘と"中枢チップ"の交換は明日。何とかチップは渡さずに、娘は取り戻したい。"ヲタッカーズ"とやらの力を貸して。返さないけど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取引場所を見れば、テロリがどんな女か、凡その見当はつく。
静かな場所なら仕切り屋。賑やかな場所なら目立つのを嫌う。
で、両方を兼ね備えた昭和通り口の"秋葉原公園"なら…相当のヤリ手、と逝うコトだw
「異常なしょ」
「最悪な場所ね。人も四方八方から出入りが出来て動きが予測出来ナイわ」
「コレは、とりあえず取引させて、その現場を取り抑えるしかナイわね」
今回も"ヲタッカーズ"は総動員だ。まぁ、今回は"変身"スル必要は無さそうだけど。
「おいおい。気合い入れて囲んでくれ。前回お世話になった"時間トンネル"の機密が、ブラックマーケットに流れるのを阻止しよーよ」
「ソンなコト逝っても、テリィたんは実の娘の命には変えられないって話でしょクスクス」
「あのな!確かにそうだけど"中枢チップ"を元に戻さないと、マリサは、国に追われて一生逃亡生活ナンだ」
「ハイハイ」
「マタハは、取引に同行してくれ。テロリとか逝うオバさんは、恐らく多少のコトはあっても取引には踏み切るハズだ。エアリはバックアップ。ミユリさんは、娘の無事を確認したら、僕に合図してくれ。オバさんは…僕が捕まえる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ミユリさん。ホントは、僕に質問したくてしょうがナイょね?」
「別に。どうでも良いです」
「全部、僕がミユリさんと出逢う前の話だ。六本木で遊んでた頃、マリサと出会い、恋人になり、婚約した。でも、結婚出来ない理由があって別れたンだ」
「飽きたのですか?」←
余りの塩反応に思わずミユリさんの瞳を覗き込む。
ソコには…覗くだけで火傷しそうな真っ赤な怒りw
「私、お仕事中にテリィ様のそーゆーお話、聞く気がしません」
「時期を見て話すつもりだったけど…」
「出会った時は?私を推し始めた時は、どうナンですか?アキバで初めて出逢った時に逝ってくださっても?彼女が現れる前に話す機会はいくらでもあったハズです。ソレを…ヨリによって元婚約者から直接聞かされるなんて…」
そして、耳を疑うセリフ。
「マジむかつくわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「現場の様子はどう?ミユリさん」
「ネオナチのマタハが機動装甲服で汗まみれ」
「ええっ?」
ミユリさんの凄まじいまでの塩対応に"ヲタッカーズ"の全員が思わズどん引くw
実際に装甲を着け汗まみれのマタハはともかくエアリのクスクス笑いが許せない。
「あ、ゴメンね。みんなの緊張をほぐしたくて。テロリが神田明神通りから侵入」
「もし、僕の方に来なかったら…」
「私が捕まえます」
ホントかwフト今回は上手く逝かないカモと嫌な予感が胸を通過w神田明神ょ護り給へ←
「あらあら。1人で来てと言った意味がわからなかったみたいね?ソチラの女ガンダムは誰なの?お友達を紹介して」
「マタハと呼んで。三国同盟に従い、同盟国の集団自衛権の発動に来たわ」
「何言ってンの?良い?マタハ、ルールその1勝手に来るな。ルールその2黙れ。コッチの女と話してるの。さぁ"中枢チップ"をお見せ」
「娘は何処なの?」
「安心して。養子にする気は無いわ。でも、貴女が"中枢チップ"を見せてくれなきゃ会わさない」
闇取引の手順は何処も同じだ。
先ず金を確認して品物を渡す←
コレが標準的な手順。だが、追加で保険をかける奴がいるから厄介。テロリなんだけどw
公園に面した立飲みコーヒーのスタンドからヤンママが子連れで現れる。ん?マリモか?
その頭のグルグル巻きの包帯は何だ?!
ソレに…何だかヤタラと背が高いけど…
「マリモ!何をされたの?」
「何もしてないわ。落ち着いて、マリサ。別に生きながらミイラにしたワケじゃないの。でも、今後どうなるかはママ次第ね」
「触らないで。タダの包帯じゃない」
「へぇ。女ガンダムは爆薬に詳しいの?もしかして軍人かしら…爆弾が丸見えじゃ外に出せないでしょ?プラスチック爆弾をグラスファイバーで包んで頭に被せてある。私が無線起爆装置を持ってる。電波は1.6キロ届くわ。私が無事に逃げて…そうね。10分後かし
ら、ソレから包帯を取って。でも、その前に取ると…ドカンょ」
テロリは嬉しそうだ。嫌な婆アw
「…しかし、ハロウィンとは言え、秋葉原は不思議な街ね。白昼に女ガンダムに女ミイラが闇取引してても誰も怪しまない…じゃ、御苦労様。チップは頂いて行くわ」
僕のイヤホンにミユリさんの声。
「そちらです」
「ROG。捕まえる」
「ソレがダメみたい。今回はスルーしてください」
「えっ?何で?」
「現場のマタハから作戦中止のサインです。テロリには手を出さないで!」
第2章 萌え上がる嫉妬
結局"中枢チップ"を手にしたテロリにはマンマと逃げられてしまう。
昼下がりの秋葉原公園には"ヲタッカーズ"とマリサ母娘が残される。
「とりあえず、タイへ逃げるわ。テリィ、羽田まで送ってょ」
「あのな。何処に逃げるつもりか知らないけど"時間トンネル"の"中枢チップ"を盗んだとなれば、何処に逃げても、必ず見つけ出されて…始末されるぞ」
「でもね。チップの開発者はネバダの科学センターに出張中。金曜まで帰らないから、盗みがバレない内に消えるわ。今までの人生は全て捨てて、タイでやり直すつもり」
「おいおい。誰の娘か知らないが、マリモはどーすルンだ?恐らくもうすぐの成人式を、タイの熱帯雨林の小屋で寂しく祝うつもりか?この子、童顔だけどハイティーンだょな?僕の娘じゃないドコロか…僕と婚約した時も子連れだったのか?聞いてないケド!」
「だから、テリィの娘じゃナイって言ったでしょ?」
「じゃ何で実の娘と思わせるような芝居をしたんだょ?!人の"家庭"に波風立ててまで!」
「人を救うための嘘…いいえ。嘘ですらない単なるお芝居ょ。テリィも十八番じゃない?
私だって残りの人生、逃げて終わりたくない。"中枢チップ"を元に戻したいけど、もうどーにもならないし」
「うーん。まだ間に合うょ。金曜までに"中枢チップ"を取り返してTFCに戻そう」
「…テリィのそーゆートコ、大好きょ。その眼差しも」
「今さらソンなコト、逝うな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヤレヤレと逝う顔の"ヲタッカーズ"を御屋敷にお招きスル。
既に夕方でポチポチ御帰宅もあるがミユリさんは着替えないw
僕がカウンターに入り、ヘルプのつぼみんと接客w"ヲタッカーズ"にドリンクを出す←
「結局、あのマリモとか逝う娘はいくつなの?」
「うーん。下手したらハタチ過ぎかも?」
「テリィたんは、騙されて婚約したのか。結婚しなくて良かったね!」
余計なお世話だw
その通りだけど←
「で、どーする?テロリのマンションがわかってルンだから襲っちゃう?」
「そーよ。幼気な幼女じゃなかったけど、誘拐は誘拐だもの!」
「そうょ!お仕置きょ!2度とアキバに来れないようにしてやる!出禁よっ!」
最後の雄叫び?はミユリさんだが、激しい語調に思わず全員が顔を見合わせてしまい、御屋敷には異次元断層が発生したような沈黙w
年の功?でエアリが恐る恐る…
「ミ、ミユリ。ソレって…嫉妬?」
「違う。殺すぞ妖精」
「メラメラ萌え上がってるね(嫉妬が)」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、色々考えたけどメラメラ萌え上がってるミユリさんを連れてテロリを表敬訪問スル。
まぁ相手の懐に飛び込むワケだから、ココは強硬路線を取りハードランディングで逝く。
で、ロケット噴射したマタハに空輸された僕とミユリさんは、テロリのマンションを奇襲しベランダを占領!空挺部隊の殴り込みだ!
流石に驚くテロリ。クスクス。
「ねぇねぇ。派手な登場で危険な連中と思って欲しいンだろうけど、どうせヤルなら、娘とチップの交換の前の方が良かったのでは?今さらだけど、怯えたフリでもして欲しい?」
「"ヲタッカーズ"のテリィとミユリだ」
「ハイハイ。引っ越しの手伝いでしょ?ココは用済みだから撤収するトコロなの。あ、家具はそのママで。レンタルだから」
確かにヤタラ生活感のない部屋だ。
日曜日に逝くモデルルームみたいw
「さて。テロリさん、君と僕には共通の知り合いがいる」
「知り合いじゃなくて元カノでしょ?」
「ミユリさん、あのさ…」
いきなり、足並みが乱れる。
とりあえず、用件を急ごう。
「実は、マリサから今回の取引のコトで相談を受けた。因みに、彼女は"中枢チップ"をアンタから奪い返すつもりでいる」
「ええっ?ソンなコトを私に話して良いの?ってか、何でソンなコトがわかるの?」
「僕が彼女を教育して一人前にした。その後しばらく組んで仕事をしてた」
「ベッドの上でね。元カノだから」
「ミユリさん、あのさ…」
ますます、足並みが乱れる。
ミユリさん、お手柔らかに。
「あのね、テロリのオバさん。私は、私の男に元カノの思い出なんて語って欲しくない。もちろん、今さら彼に言い寄ってもらっても困るの。だから、私達は同士ょ。手を組んで貴女のトラブルと私のトラブル、一緒に片をつけましょ?サービス価格にしとくわ」
「断るわ。たとえ今の話が事実でもシングルマザーの1人ぐらい、何とでも出来るし」
「ありゃあ。ソレが間違いだ。彼女は手強いぞ。アンタだけじゃ無理だ。そうそう。"中枢チップ"から部品を抜いたと逝ってたな。そのママ誰かに売れば、アンタ、バイヤーに殺されるょ?誰だか知らないけど」
「ほほぅ。では、私の友達に検査させるわ。ねぇねぇ。まーさか、協力的な態度で検査を申し出て、実は"中枢チップ"の横取りを企んでたとか?ミエミエな作戦ね。とにかく!良く覚えておいて。私はアンタらを信じてないの」
図星だwじゃ好きにしてと僕なら思うが、ココでミユリさんが余裕で名刺を出して粘るw
「でも、貴女がホントに賢い女なら、きっと私に電話をスルと思うの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その足で御屋敷に戻って"反省会"。
"ヲタッカーズ"+マリサ亡命母娘。
「うーん。テロリのオバさんもチップを売ったら高飛びする気なのね」
「ソリャそうだ。国際手配される前に逃げなきゃ」
「でも、チップが売れれば良いけど、売れなければ、一文無しで逃げ出す羽目になるな。こりゃ近々電話して来るゼ」
「催促がてら、あのマンションに催涙弾でも打ち込んでみる?」
いつものイケイケな感じが戻り安心だけど、ココでマリサが余計なコトをミユリさんに…
「貴女、テリィと付き合ってるの?」
「ないわ」
瞬殺かょw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたん?テロリょ。アンタの提案について話し合う準備がアル。4時に来て。今度はドアから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、ミユリさんと出向くと当たり前だけどテロリがいて、僕達にブッキラボーに告げる。
「テリィたんのコト、調べたわ。アンタ、第3新東京電力のサラリーマンなのね?ソレ、早く逝ってょ。で、チップの検査だけど…」
「TEPCO3から誰か手配しようか?」
「もう手配済み。今から検査に行くから、2人にも立ち会って欲しいの。携帯は預かる。車で一緒に行きましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、何処に逝くのかと思ったら…御屋敷のある高層タワーの屋上ヘリポートだw
スゴい風だけど…はて?テロリのオバさん、階下が御屋敷だとわかってるのか?
「彼が、私の雇った検査員」
貧相な男がアタッシュを持って立っている。
とんでもない突風に吹き飛ばされそうな男。
「こんなトコロにチップを保管してるのか?故障するぞ?」
「まさか。今、届くトコロょ。待って」
「えっ?」
テロリが指差す先の黒点は見る間に飛行船の形になりグングン接近しヘリポートに着陸。
突風+突風で、文字通りヘリポートにへばりつく僕達を尻目に、パイロットが降り立つ。
「終日、空に飛ばして泥棒から守ってるのょ」
「そりゃまた御大層なこって」
「さ、早く検査して頂戴」
降り立ったパイロットは、アタッシュからチップを取り出し、貧相な男に手渡す。
貧相な男は自分のアタッシュを開けコード類をチップに接続したら…万事休すだ←
「あらら?テリィたん、部品は揃ってるみたいね?このまま問題なくバイヤーに売れそうょ?」
「ちくしょう。マリサに騙された!サスガは僕の元カノ」
「混乱してきたわ。マリサがテリィたんを、テリィたんが私を騙したワケね?さて、私は誰を信じようかしら。とりあえず、私はテリィたんの頭をブチ抜けば良いの?」
テロリはニコリともせズ、手にした拳銃を僕の頭にグリグリする。良い気持ちはしないw
「待ってょ!ソレじゃマリサの思う壺じゃない!全然、面白く無いンだけど」
「でもね、ミユリさん。私は、やっと誰が泥棒なのかが解りかけたトコロなの」
「ソレは…フェンスの向こうにいる誰かのコトかしら」
「下手な嘘ね?"ヲタッカーズ"のお友達を呼んだの?」
「"ヲタッカーズ"なら"飛んで"るわ。アレはスーパーヒロインじゃなくて生身の人間ょ。大方、マリサの雇った傭兵でしょ?貴女がチップを出した途端に現れたのは、偶然だと思う?」
次の瞬間、目にも止まらぬ速さでテロリが拳銃を乱射!いや、僕の頭にじゃなく傭兵に…
ところが!ソレに倍するハデな連射が返って来て、逆にテロリは射すくめられてしまうw
突撃銃のフルオート射撃だw
僕達は、緊急離脱を図り、滑空を開始した飛行船に命からがら飛び乗る。テロリが叫ぶ。
「出して!」
パイロットが頷き、急上昇スル飛行船から、貧相男の死体が大の字になり転がってるのが見えたが、ソレも直ぐに点となって消えるw
第3章 襲撃と潜入のテーゼ
早速、飛行船のキャビンで商談だw
「なぁ?マリサは本気だろ?僕等に売り上げの5%を払わないか?"ヲタッカーズ"がマリサからチップを守る。よく考えろよ。あの女は厄介だ。助けが必要だろ?」
「うーん。今回は最後まで話を聞くわ」
「あのヘリポートは、マリサに知られてる。また、必ず嗅ぎつけてチップを奪いに来るから、取引場所は変更すべきだ」
「御親切にどーも。でもね。取引場所は代えられないの。だから、その時こそ"ヲタッカーズ"の出番ょ。知恵を絞って。バイヤーは気軽に電話出来る相手じゃない。簡単に計画変更なんて言えないの。マリサを近づけないで。それだけで良いわ。成功したら報酬は払う」
「好きにやって良いか?」
「任せる。ヘリポートを閉鎖して。マリサの教育係なら、彼女の行動は読めるでしょ?警備を強化し、バイヤーとの取引は、私が知り尽くしたヘリポートで予定通り行う。OK?」
「OK。ヘリポートにアリ一匹入れない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再び御屋敷。今度は作戦会議だ。
「取引前にはチップを奪えないわ。場所も日時も変更出来ない。タイの熱帯雨林に小屋を借りた方が良いかしら?」
「何とか取引の最中に奪って逃げられないかな?」
「警備は厳重、ヘリポートを閉鎖する気なのょ?難しいわ」
「でも、その厳重警備の責任者は僕だから出し抜ける。鉄骨とか色々資材も持ち込めるから…ホラ、あの手が使えるだろ?」
「前に末広町でやった奴ね?」
「そーだ」↑
「狸穴坂でもやったわ」
「そーか」↓
見ると、ミユリさんとマリサは互いに激しくガンを飛ばし合ってて…
どーゆーワケだか、ふたり共"ドヤ顔"をキメキメで睨み合ってる←
めんどくせぇw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ねぇねぇ。しばらくは忙しいだろうけど、色々解決したら、おしゃべりしながらお食事でもどうょ?」
僕とミユリさんが外した隙に妖精のエアリと女ガンダムのマタハがマリサに声をかける。
「…そうね。多分、私が奢らなきゃかな?」
「テリィたんって意外に口が固くて、プロポーズした話とかも全然聞いてないの」
「プロポーズは…私からだし」
「え?本当?良かったら教えて!どうして別れたの?」
「先ずソレ?…さぁどうしてかしら。最初は上手く行ってたわ。テリィは、私を理解してくれた最初の人だったの。でも、突然終わったわ。ワケも言わず、彼は別れを告げて、六本木から消えた」
「…テリィたんっぽい」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
警備を強化しろとのコトだが、強化する警備の基本は約4000年前から進歩がナイ。
敵よりも高い場所に登って見張り、襲撃に備える。その点、今回の現場は簡単だ。
アキバ1高いタワーの屋上ヘリポートだ。
ココより高い場所は他にナイ。空以外…
「さぁ。私が大儲けスルのを見届けてね」
テロリは上機嫌だ。タワー内部からの昇降口を厳重に施錠しながら、ミユリさんが呟く。
「笑える。馬鹿な女」
ところが、ソコへテロリの飛行船がフワリと舞い降りて来て泡を食う。予定よりも早いw
「おい?どうなってんだ?取引時刻を守れ。危険だぞ」
「いや。コレで構わないわ。ヘリポートの警備は完璧だけど、計画変更で取引は空中でやるコトにしたの。テリィたん達も飛行船に乗って頂戴。離陸スルわ」
「空中で取引だと?アンタ、わかってナイな」
「ソレはソッチょ。封鎖された格納庫を見てマリサがスゴスゴ引き下がると思う?逆に準備万端でヘリポートに忍び込まれたら、もう打つ手がナイでしょ?」
その通り!笑
「12時方向。同高度。飛行船が接近」
「バイヤーの船ょ。接舷用意」
「アイアイサー」
ソレは幻想的な光景だ。
全てを黄金色に染める夕陽を背に、超高層タワーの上空で2隻の飛行船が漂う。
アキバのストリートで何人が空を見上げてたかは知らないが素晴らしい絵だ。
スチームパンクだねw
「やぁアミーゴ。待ってたよ」
「じゃ始めるか?」
「先ず金を貰おう。チップはココだ」
でも、交わされる会話はエゲツない闇取引業者同士のビジネストークなンだが…その時!
「RPG!RPG!」
タワー屋上の物陰から一筋の白煙が飛行船へと伸びて逝き、張り出したエンジンに命中!
爆発四散したエンジンは残骸から火を噴き、バイヤーの飛行船が大きくバランスを崩す!
「ハメやがったな!くそ、覚えてろ!」
飛行船キャビンの窓と逝う窓からロケット弾や突撃銃が突き出されてコッチに一斉射撃!
たちまち全弾命中、コチラのキャビンがハチの巣になり火の手が上がる!テロリが叫ぶ!
「離脱!直ちに離脱して!反撃開始!」
「だから、ヘリポート以外は危険だと逝ったろ?警告したハズだ!空は封鎖出来ないからな!」
「ちくしょう…あ、あら?アレは…」
萌え上がる2隻の飛行船の間を羽音を立て飛ぶ影?妖精か?目の前の空中で振り向く…
「マリサ!…貴女、妖精だったの?」
答えの代わりに火炎ビンが飛んで来るw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
炎上しながら退避スル飛行船のキャビンで、テロリは煤けた顔のママで、怒声を上げる。
「マリサは、コッソリ盗み返しに来るンじゃなかったの?!死ぬ気で攻め込んで来たじゃない!しかも…妖精だったなんて!」
「だから、わかったろ?マリサには、チップを奪いTFCに戻す以外に逃げ道が無いンだ。ソレに失敗すれば、政府のスパイに殺されるのが目に見えてる。そのチップを持ってるアンタも同じ運命だぞ!いや、もっと運命は過酷カモ」
「犯罪者に優しいオフショア国家で豪邸に住んでも楽しくナイっしょ。ってかチップ売り損ねたから、アンタ、金ナイじゃん」
ミユリさんの"じゃん言葉"は激レアw
「一刻も早く次のバイヤーを探せ。内調、公安、J2、別班が24時間以内に厳戒態勢で追っ掛けて来るぞ」
「マリサと組んでたのょね?テリィたんがマリサに盗みを教えたのょね?」
「YES。男と女の、アンなコトやソンなコトも教えた」
「ソッチはどーでもOK。で、テリィたんならTFCが気付く前にチップを返せる?ねぇ、どこまで私をコケにする気?コレが"ヲタッカーズ"の望みなの?私を追い詰め、チップを横取りスル。どーやら、テリィたんにチップを渡すしか無くなったじゃナイ。お見事よっ!」
「最後まで口の減らないオバさんね。チップを返さなきゃ、アンタは殺されるか終身刑。で、どーすんの?」
「…信じようがどーしよーが勝手だが、僕達全員がヤバいってコトだ。誰かに頼むって話ならココで手を引くけど」
「…待って!もしも、もしもょ?チップを横取りして売りさばいたと知れた時は、テリィたんを地の果てまで追い詰めるわ。どんな嘘もゴマカシも通用しない。銃弾で頭を打ち抜いて、脳味噌を吹っ飛ばしてあげる!交渉成立?」
「モチロン引き受けるさ。じゃココで船を降ろしてくれ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「"ヲタッカーズ"のみなさま、TFC産業へようこそ。人工衛星、ミサイル追跡システム、無人偵察機のチップを製造しておりますが、手違いで"時間トンネル"も作ってしまいました…」
流れるようなマリサのプレゼントーク。
閉店後の御屋敷で直前ブリーフィング。
「ココが無塵室。チップを戻す場所ね。明日3時に開発者が戻りチップのプレゼンを行う予定」
「ソレまでに片付けよう」
「私達はチップを返し、テロリは消える。何しろブチ切れたバイヤーに追いかけられてるから。あとはTFCの警備システムを突破出来れば万事解決だわ」
「保安体制は?」
「正面ゲートにカードリーダー。従業員名簿が変わってなければ、私のIDカードがまだ使える。テリィたんの分は、偽造すれば良いでしょ?」
「その次のココは生体認証?」
「YES。でも、手をかざすだけ。私が何とかスルわ。問題はクリーンルーム。9桁の暗証番号が毎週変わる。チップを盗んだ時は、夜中で45分もかかったけど…5分で侵入して怪しまれずに消えるなんて到底無理ょ」
「ソコは裏ワザ使ってサクっと済まそう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"時間トンネル"は神田川のアキバ側河岸、地下700階に設置された国家プロジェクト。
まぁ地下だが、中はオフィスビルみたいなモノで、サラリーマン的には違和感ない建築。
ココは普通にサラリーマンのフリで入る。
守衛さんが自動小銃を持ってはいるけど。
「IDを拝見」
「あ、彼は私の連れたがらサインしとくわね。後で登録に行くと警備本部に伝えて。お世話になってる取引先よ」
「了解」
こーゆー時は、アクビして無害な顧客を装うのがオススメだ。
そもそも、職員の連れなら、警備員はゴチャゴチャ逝わない。
入ったら真っ先に休憩コーナーを目指す。
最新の警備システムを採用してても、肝心の鍵の管理は結構適当だったりする。
さらに、職員の危機管理は驚くほど甘い。置きっぱなしのカードキーやバッグ。
暗証番号パスワードを書いたメモ。
指紋がべったりついた缶ジュース←
「まだ残ってるけど…飲む?」
「コロナが鬱るょ」
「ダイエットマウンテンデューょ?」
マリサは、空缶を特殊フィルムの上で転がし指紋を転写する。
その特殊フィルムをリーダーにかざして、指紋認証をクリアw
点滅スル"入室許可"サインの先には、防護服のお着替えルームがある。
マリサがお茶目な顔して下着姿になる。ん?真っ赤?勝負下着って奴か?
警備レベルが高いエリアに近づくほど、監視カメラは気にしなくて良い。
情報リークを防ぐため、許可された警備員しか映像を見られないからだ。
「さぁ!ソコがクリーンルームよ。どうやって開けるワケ?奥の手プリーズ」
「ネタは仕込んで来た。指向性爆薬の導爆線を爆発させる。強化ポリエステルのホースなんだけど…まぁ見てて」
「新ネタばかりね。仕事も女も」←
警備が厳重な場所では、なるべく騒ぎは起こさズ仕事をしようと思うか?
その逆だ。小さな騒ぎでは速攻で見つかって捕まってしまうのがオチだ。
1箇所センサーに引っかかればアウト。
でも、同時に100箇所引っかかれば…
果たして、導爆線が爆発し無塵室の鉄扉が吹っ飛ぶや、警報が鳴り響いて避難が始まる。もはや誰もがパニックになり、防護服もオフィスワーカーもヲタクも泥棒も出口に殺到w
同じくパニックに陥ってる警備員の制止や金属探知機を振り切って我先に地上へと走る。
で、後で聞いたら偵察衛星のカメラレンズだったらしいンだが、トボけて小脇に抱える。
「このレンズ、高そうだな」
「ちょっとテリィ。何してるの?」
「アイドルの水着撮影会で使おうと思って」
ところが好事魔多しw
警備員が声高に叫ぶ←
「ハイ!列に並んで。指示に従って避難してください!」
「検査が済んだ人から、外へ避難してもらいます。バッグを開けて待って!」
「お?ヤバっ!」
僕は、盗んだレンズを慌ててダストボックスへと投げ込むwソレを横目で見たマリサが…
「テリィ、さすがね。そのレンズを盗んだ人が、この騒ぎを起こしましたって展開?」
「どーせホントの理由に気づく奴はいない。万事被害ナシで片付くレベルにするのがポイントだ。ま、せいぜい怪しい社員がクビになる程度だね。ホラ、バッグ見せて」
「え?バック?ヘンなコト言わないでょ。何のために?」
「マリサ、頼むょ」
「…だって、プラチナのワイヤなのよっ!クリーンルームでチップを戻したら隣にあってつい…800万円はするわ。あ!あ、何スルの…」
ダストボックスに投げ入れる。
「ハイ!次の人!そう、ソコの防護服の女子!金属探知機だ。こっちへ…前へどうぞ。ハイ、OK。外へ出てください」
第4章 推しは愛より強し
「テリィたん。アンタ、ホントにコッソリと仕事するコトの出来ない人なのね…見直したわ」
「文句アルのか?コレでアンタは命拾いだろ?」
「テリィたんの仕掛けたゲーム、いつか裏を取るからね!」
「え?裏なんかないょ。ソレよりも、早く国外へ逃げてくれ。アンタ、あのバイヤーに狙われてる。飛行船で追いかけてくるぞ!」
「私の身を案じてくれるとは驚きね。また、いつか会いましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「うん。ママも愛してるわ。じゃあとでね…テリィたん、娘がよろしくって」
「じゃ今すぐ逝ってあげなょ。すぐにアキバを離れるんだ。未だテロリはパニクってるけど、僕達がグルだってコトは、いずれバレる。マリサは、泥棒やめてカタギになるンだ。今回は助かったけど、この次は…」
「わかってる。次は、エアリさんも私のお面を被ってくれないしね。でも、最後に仕事でドジ踏むなんて自分が情けなくて」
「マリサは、自由に暮らせるんだ。もう誰にも追われないし、娘も無事だ」
「テリィたんが…娘のパパなら良かったのに」
「じゃ僕の分まで幸せになれ。そー思うのなら」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィ様。うまく逝きましたか?」
「うん。全部片付いた」
「では、もう遅いし帰りますね」
「ミユリさん、待って」
「今さら、六本木におられた頃の話を伺っても仕方ナイですし」
「そうだね。でも、ミユリさんには、聞いて欲しい」
「何を?」
「僕とマリサは、似た者同士だ。嘘をつくのが僕の仕事と知って、彼女は喜んでた。彼女も嘘つきだから、お互い気楽だったンだ。だけど、僕は君達と出会った。アキバのメイドには真っ直ぐな人も多くて、喧嘩もいっぱいしたけど、君達といる時は、僕は素直になれた。それで、マリサとは別れた。アキバのメイドを推してるのに、結婚なんか出来ないだろ?」
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"ブラックマーケット"を軸に、主人公の元婚約者、彼女に盗みを強いる闇取引業者、そのバイヤー、元婚約者の娘などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、パンデミックに揺れる秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。