06. 片道半日の職場
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スーツの中のワイシャツに汗が染み、じっとりとし始める。
上を見上げても終わりが見えない、そしてとにかくこの階段長い。
何よりここまで登ってきたが、踊り場がなく休めないのが気持ち的にキツい。
「あぁ〜、ちょっと休憩!」
その場で階段に腰かける。
石段…だろう。
少しひんやりしていて気持ちがいい。
「足も伸ばしちゃうかなぁ〜っと。」
まるで滑り台を楽しむ子供のような姿勢で、足を伸ばしそのまま体全体を階段に預ける。
ゴツゴツしていて結構痛いが、足腰はかなり楽だ。
駆け上がるような体力もない為、ゆっくり登ってきたのだが、その分時間もかなり使ったようだ。
登り始める前に真上にあった太陽は、既に少し低い位置へと場所を移していた。
「これ、真面目に長いな。ここまで来ると場所の特定が出来そうなんだが。」
日本一高い階段は、たしか3000段を越える。
社員旅行で1度訪れたことがあるため、何となく記憶に残っていた。
しかしそうなると、流されたというレベルの話ではない。
首都圏に向かって車を走らせていたのに、かなり南の方に来ている計算になる。
「しかも鳥居なんてあったっけなぁ。なにより椎間林…聞き覚えがない地名だし。
林が町の中だけの名称として、椎間…?」
自分で独り言に気づき、声を自然に窄めてしまった。
だが、幸いにしてこの場所に人通りはない。
恥ずかしがる必要も無いのだ。
ふっと息を吐いて、立ち上がる。
考えていても仕方がない。
とりあえずは資金調達の為、この階段を登りきらなくては始まらないのだから。
「よぉぉぉし、何千段だろうが何万段だろうがかかってこいやぁ!」
その言葉に反応するように、風が吹き背中を押してくれた気がした。
とは、言ったものの…
「いや、流石に無理。もう危ないわ。」
休憩をとってから、およそ倍近く登った頃だろうか。
既に太陽は姿を隠し、代わりに薄白い光が辺りの闇をやんわりと照らしていた。
再び階段に体を預け、上段の方を仰向けのように見上げる。
すると、目と鼻の先に鳥居があることに気づく。
足元ばかり見て登っていたが、これはかなり上の方まで来ているのでは無いだろうか。
明るい時には気づけなかったが、蝋燭の火に照らされているようだ。
8基の鳥居がおいで…おいで…と揺らめいている様にも見える。
「陽炎ならぬ影炎ってか。」
そういえば、エリナが鳥居が越えられないなんて話をしていたな。
まるで心霊現象のような噂話だが、今はちょうど夜。
まさしく相手の土俵に入ったところだ。
「せっかくだし行くかぁ。」
淡々と鳥居の場所まで登る。
そこからは一基、また一基と鳥居を越えていく。
そして聞いていた通り、8基目を越えるかどうかという所でだ。
再び8基の鳥居が目の前に姿を現した。
思わず足を止めてしまう。
「ほぉ〜、大したもんだ。あるようにしか見えねぇ、いや実際あるのか?
とはいえ、この見えてる物も今の俺じゃ信用ならんなぁ。」
頭がおかしくなっている以上、目に見える景色すら疑わなくてはならない。
しかし、これが噂通りならだ、この後いくら進んでもまた鳥居が現れるとのことだ。
そして中途半端に戻ることは出来るため、皆恐れて逃げ帰ってしまうのだろう。
「こなくそっ、こちとら文無しで頭のネジは外れてる。怖いもんなんてねぇぞ!」
行ける所まで行ってやろうと、八基目の鳥居を越えた瞬間だ。
バリンッ!!
勢いよく硝子が割れるような音がして、目の前の景色が変わる。
まだ先が続くように見えた階段は終わりを迎え、開けた空間に出た。
そこには、神社と西洋風の神殿を掛け合わせたような建物がどっしりと構えている。
その隣には灯台…と言うよりかは木造の見張り台のようなものが立っている。
おそらくここが聖堂だろう。
キョロキョロ見回していると、声が聞こえた。
「誰じゃっ!あの結界を破ったのはおぬしか!」
声の聞こえる方を向くと、聖堂の奥より白髪の老人がこちらを睨んで立っていた。
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