04. 仕事を探して 前編
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青年に連れられて少し歩くと、沢山の人々で賑わう広場のような場所に着いた。
「お待たせしました!ここが賢者の見守る町シーマーリンの集会所ですよ。」
「………あっ、はい。ありがとうございます。助かりました。」
「では僕は仲間を待たせているので、ここで失礼します。またどこかで!」
「ええ、また。」
流石に我が耳を疑った。
けんちゃんの見守る町椎間林の集会所。
いや、どんなキャッチフレーズだよ。
まずけんちゃんって誰だ。
なんでそんなちょっとした友達感覚の奴に見守られてるんだ、この町は。
それにここ海の近くの町じゃないのか。
どうして海近くで地名に林が入るんだ。
椎間って椎……ブナか!ブナ科だけにブナかっ!
どうやらおかしくなったのは頭だけじゃなくギャグセンスもらしいな…。
ともかく今日を生きねば命の恩人のあの二人にお礼はできない。
今日を生きるためには食い扶持を稼がないとだ。
「案内をしてくれる職員さんはいないかなぁ。」
「何や、困っとるん?」
無意識に出ていた独り言に対して思わぬ返事が返ってきた。
声をかけられた方を見ると、小柄ではあるがきっちりとした制服に身を包んだ茶髪の女性がいた。
いや、まあ犬のような耳が付いてはいるんだがな。
どうやらここに来るまでに、特殊な見た目に慣れたようだ。
というか、俺の頭がおかしく見せてるだけで実際は普通の人なのだ。
そんな獣と人のハーフなど、現実にいるはずがないんだから。
「なぁ、ウチあんたに話しかけてるんやけど…」
「あっ!すみません!!あまりに可愛らしい方に話しかけられて、少しどぎまぎしてました。」
「何言うとんねん…ウチそんなかわいくないやろ。アホ。」
「す、すみません。一応本心だったんですが。失礼しました。」
「…ま、ええわ。なんか困ってそうやし、声かけたんやけど。」
「それが、仕事を探そうとここまで来たのはいいんですけど…自分の浅学さ故に文字が読めず、どこに何が書いてあるのかさっぱりでして。」
その言葉を聞いていきなり女性は吹き出した。
そんな文字が読めないことで笑わなくても…。
いや、笑うか。今時小学生でも漢検を取得する時代だ。
そんな中でスーツ姿の大人が字が読めないなんて、冗談にしか思えない。
「あんたそんな上品な服きて、カッコつけすぎや!
文字が読めないなんて別に普通やん!何をはずかしがっとるん。」
「えっ。」
「えっ、やあらへんよー。自分も読めないのになんでそこで驚くんや。おかしいわー。」
「は…ははは、そうですね。」
どういうことだ…。
ノッてくれてるのか、それともこの町の識字率が平均的に低いのか、全く分からない。
だがまあ、笑いごとで済ましてくれる相手だということは僥倖だった。
「まあ読めないってことなら、ウチに声かけてもらえたんは運が良かったってことやな!感謝しいや。」
「ありがとうございます…?ということは、教えてもらえるんですか?」
「自分、しっかりお礼言えて偉いなー。せやで。
まあ1から10まで教えるって訳やなくて、代わりに読むぐらいやけどね。」
「いやいや。それで十分です。」
流石に字が読めないからか、微妙に馬鹿にされている気がする。
だが、まあいいだろう。
「仕事を探してるって言うてたよな。」
「はい。日雇いでも、住み込みでも、とりあえずお金が欲しいので。」
「んー、仕事の募集用紙ある所まで行こか。ウチも見ないことには読めんし。」
「そうですね。じゃあ…すみませんけど、案内と代読お願いします。」
「ん。あっ、その前に自己紹介しとこか。
ウチはこの集会所で働いとるエリナや。よろしく頼むで。」
「俺は、大和辰己と言います。よろしくお願いします。」
その場でサッと自己紹介を済ませ、人混みの中を歩いていく。
住み込みで飯付きの好条件があればいいな……。
そんな期待に胸を膨らませて。
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