02. 流れ着いて異世界
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「よおおぉし!!引き揚げるぞおおお!!」
「「あいよおお!!」」
勇ましい男の掛け声に呼応するように、数人の男達が声を上げ海中に放たれた網を手繰り寄せていく。
陽の光に照らされ、小さな銀色の魚の大群がその中に見える。
「結構獲れましたねぇ!」
「最近不漁ぎみでしたからなぁ、お祈りをしたかいがあったかもしれないですよ。」
「いやぁー、よかった!こりゃ数百は下らねぇぞって…おい!お前ら、中になんかいねぇか?」
そう男が指差した先に、明らかに魚影とは思えない黒い何かを男達は捉える。
「なんだありゃあ…大物ですかねぇ?」
「ん?いや!ありゃ人だ、落ちてんだよ!助けるぞ!」
「よっしゃ、俺がいっちょ潜りますよ!」
男達の手によって助けられた人は、全身黒づくめの格好をしており、この辺りで売られている衣類ではないことが見て取れた。
「死んでんのか…?」
「こりゃ、気失ってるだけですな!」
「しかし見た事もない格好ですねぇ、異国の人かなにかでしょうか。」
「まあ、なんだっていいさ。放っちゃおけねぇだろ。」
「それもそうですな!」
漁を終えたこともあり、男達は拾い上げた人を船に寝かせ港のある町へと戻る。
賢者の見守る町、シーマーリンへと…
──────────
「あ、起きたみたいよ。」
「おっ大丈夫か、おめえさん!」
目が覚めた時目に映ったのは体格のいい男性と、向かい合うように椅子に腰かける女性だった。
恐らくあの状態から助け出してくれた方達だろう。
「助けていただいてありがとうございます。こんな格好で申し訳ありません。」
「礼はいらねぇよ!たまたま海へ漁に出てたら網に引っかかっただけだからな。」
「いや、それでも命の恩人ですから…っと痛っ!」
改めて立ち上がってお礼を言おうとしたが、右足を怪我しているのを忘れていた。
踏ん張ろうにもバランスを崩してしまい、なんとも格好がつかない。
「あなた大丈夫なの?あー…その足怪我してるのね。」
「おい、お前治してやれよ。治癒術得意だったろ。」
「もちろんそのつもりよ、ちょっと見せてくれる?」
「治癒術?え、ええ、お願いします。」
なんだろう、応急手当のことだろうか。
そう思っていると女性はこちらに歩み寄り、俺の右足に手を当てたと思うと…
「主なる神よ。我が祈りに応じて彼の者の傷を癒したまえ。治癒」
「は?」
女性の体から黄色い光がポッと湧き出たかと思うと、その光が俺の足を包む。
そしてその光が足に触れた途端、バチンッと弾ける音がして光が掻き消えた。
「あれ?」
「お?」
何故か困惑し目を合わせる二人。
なんだろう、マジックか何かだろうか。
流石にそんな子供騙しでは痛みはとれないのだが。
「えぇと…なんですか?今の。」
「ん?あぁ、どうやらこいつ失敗したようだ。すまんな、その痛みどうにかしてやれない。」
「そうねぇ、なんでかしら。普段はこんなことにならないのに。」
「そ、そうなんですか。」
助けてもらったのになんだが、もしかしたらこの人達は少しアレな人なのかもしれない。
まあ、人には色々いるだろう。
「…では、何から何まで申し訳ありませんが塗り薬やテーピングはありませんか?」
「わるいな、塗り薬は今切らしてるんだ。てーぴんぐってのはすまん、聞いたことがない!」
「薬草と包帯ならあるわよ、それでいいかしら?」
「あっはい、お願いします。」
薬草とはなかなかに渋い、亡くなった祖父母を思い出すな。
そしてテーピングを知らないとなると…もしかしたらかなり辺境の土地まで流されたのかもしれない。
そう考えると先程の行動にも納得がいく。
この土地に根付いた風習やおまじないの類だったのだろう。
これは先程の失礼な考えに反省しなければな。
「よしっと。」
「おい、もう行くのか?」
「もっとゆっくりしていっていいのよ?」
「いえ、ご心配には及びません。それに、ここまでしてくれて居座るなんてできませんよ。」
「じゃあとりあえずこの杖もってけ、そんなんで道端で倒れられてでもしたら寝覚めが悪い。」
「ありがとうございます…落ち着いたら、またお礼に来ます。」
そう言って扉に手をかけ、一旦振り返り2人の目を見てから頭を下げる。
顔を上げた時2人はにこやかに笑い、頷いていた。
無事家に帰り、会社に連絡を済ましたら、休みをとってでもここに来よう。
そう思える優しい笑顔だった。
扉を開け外に出る。潮の香りが鼻をくすぐる。
しかし見えた景色は、まるで夢の中にでもいるようだった。
家の庭には馬と牛の混ざりあったような大柄の獣。
小さな小屋の中には、見たこともない鮮やかな羽をした首の長い鶏のような生き物。
そして道の反対にある家の庭には、角の生えた毛むくじゃらの男と、耳が長く露出度の高い女が仲良くお茶を飲んでいる。
「はは…なんだこれ。」
死に近い体験をしたせいで、見えるものがおかしくなってしまったのだろうか。
はたまた、これは本当に死後の世界で、自分の姿も違うものになっているのだろうか。
どちらか分からない、いやそのどちらも違うのかもしれない。
だが少なくとも流れ着いたその町は、まるで異世界としか思えない場所だった。
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