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流れ着いて異世界 〜仕事が忙しいので世界平和は他の人に任せます〜  作者: 幸運を殺す者
第一章 賢者の見守る町
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02. 流れ着いて異世界

毎週火曜と土曜0時に一話ずつ更新です

よろしくお願いします

「よおおぉし!!引き揚げるぞおおお!!」


「「あいよおお!!」」


勇ましい男の掛け声に呼応するように、数人の男達が声を上げ海中に放たれた網を手繰り寄せていく。

陽の光に照らされ、小さな銀色の魚の大群がその中に見える。


「結構獲れましたねぇ!」


「最近不漁ぎみでしたからなぁ、お祈りをしたかいがあったかもしれないですよ。」


「いやぁー、よかった!こりゃ数百は下らねぇぞって…おい!お前ら、中になんかいねぇか?」


そう男が指差した先に、明らかに魚影とは思えない黒い何かを男達は捉える。


「なんだありゃあ…大物ですかねぇ?」


「ん?いや!ありゃ人だ、落ちてんだよ!助けるぞ!」


「よっしゃ、俺がいっちょ潜りますよ!」


男達の手によって助けられた人は、全身黒づくめの格好をしており、この辺りで売られている衣類ではないことが見て取れた。


「死んでんのか…?」


「こりゃ、気失ってるだけですな!」


「しかし見た事もない格好ですねぇ、異国の人かなにかでしょうか。」


「まあ、なんだっていいさ。放っちゃおけねぇだろ。」


「それもそうですな!」



漁を終えたこともあり、男達は拾い上げた人を船に寝かせ港のある町へと戻る。

賢者の見守る町、シーマーリンへと…




──────────




「あ、起きたみたいよ。」


「おっ大丈夫か、おめえさん!」


目が覚めた時目に映ったのは体格のいい男性と、向かい合うように椅子に腰かける女性だった。

恐らくあの状態から助け出してくれた方達だろう。


「助けていただいてありがとうございます。こんな格好で申し訳ありません。」


「礼はいらねぇよ!たまたま海へ漁に出てたら網に引っかかっただけだからな。」


「いや、それでも命の恩人ですから…っと痛っ!」


改めて立ち上がってお礼を言おうとしたが、右足を怪我しているのを忘れていた。

踏ん張ろうにもバランスを崩してしまい、なんとも格好がつかない。


「あなた大丈夫なの?あー…その足怪我してるのね。」


「おい、お前治してやれよ。治癒術得意だったろ。」


「もちろんそのつもりよ、ちょっと見せてくれる?」


「治癒術?え、ええ、お願いします。」



なんだろう、応急手当のことだろうか。

そう思っていると女性はこちらに歩み寄り、俺の右足に手を当てたと思うと…


「主なる神よ。我が祈りに応じて彼の者の傷を癒したまえ。治癒(ヒール)


「は?」


女性の体から黄色い光がポッと湧き出たかと思うと、その光が俺の足を包む。

そしてその光が足に触れた途端、バチンッと弾ける音がして光が掻き消えた。


「あれ?」


「お?」


何故か困惑し目を合わせる二人。

なんだろう、マジックか何かだろうか。

流石にそんな子供騙しでは痛みはとれないのだが。


「えぇと…なんですか?今の。」


「ん?あぁ、どうやらこいつ失敗したようだ。すまんな、その痛みどうにかしてやれない。」


「そうねぇ、なんでかしら。普段はこんなことにならないのに。」


「そ、そうなんですか。」


助けてもらったのになんだが、もしかしたらこの人達は少しアレな人なのかもしれない。

まあ、人には色々いるだろう。


「…では、何から何まで申し訳ありませんが塗り薬やテーピングはありませんか?」


「わるいな、塗り薬は今切らしてるんだ。てーぴんぐってのはすまん、聞いたことがない!」


「薬草と包帯ならあるわよ、それでいいかしら?」


「あっはい、お願いします。」


薬草とはなかなかに渋い、亡くなった祖父母を思い出すな。

そしてテーピングを知らないとなると…もしかしたらかなり辺境の土地まで流されたのかもしれない。

そう考えると先程の行動にも納得がいく。

この土地に根付いた風習やおまじないの類だったのだろう。

これは先程の失礼な考えに反省しなければな。


「よしっと。」


「おい、もう行くのか?」


「もっとゆっくりしていっていいのよ?」


「いえ、ご心配には及びません。それに、ここまでしてくれて居座るなんてできませんよ。」


「じゃあとりあえずこの杖もってけ、そんなんで道端で倒れられてでもしたら寝覚めが悪い。」


「ありがとうございます…落ち着いたら、またお礼に来ます。」


そう言って扉に手をかけ、一旦振り返り2人の目を見てから頭を下げる。

顔を上げた時2人はにこやかに笑い、頷いていた。

無事家に帰り、会社に連絡を済ましたら、休みをとってでもここに来よう。

そう思える優しい笑顔だった。


扉を開け外に出る。潮の香りが鼻をくすぐる。

しかし見えた景色は、まるで夢の中にでもいるようだった。


家の庭には馬と牛の混ざりあったような大柄の獣。

小さな小屋の中には、見たこともない鮮やかな羽をした首の長い鶏のような生き物。


そして道の反対にある家の庭には、角の生えた毛むくじゃらの男と、耳が長く露出度の高い女が仲良くお茶を飲んでいる。


「はは…なんだこれ。」


死に近い体験をしたせいで、見えるものがおかしくなってしまったのだろうか。

はたまた、これは本当に死後の世界で、自分の姿も違うものになっているのだろうか。



どちらか分からない、いやそのどちらも違うのかもしれない。

だが少なくとも流れ着いたその町は、まるで異世界としか思えない場所だった。

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