16. 世界の歴史と師匠の過去
毎週火曜と土曜0時に一話ずつ更新です
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「まずな、この世界は今13の大陸に分かれているということを知って欲しいんじゃ。」
「分かれている?ですか。」
「うむ、そうじゃ。よし分かりやすいようにしようか。地図作成術」
師匠が魔術を使うと、半透明の世界地図のようなものが現れた。
それを見る限りだと、分かれていると言うよりかは単純に区切られているだけにも思える。
「この大陸間の黒い線、これは区切る為の線ではないぞ?実在している溝じゃ。」
「溝…?というのはなんです?」
「そうじゃなぁ…大陸と大陸が巨大な峡谷のようなもので簡単には渡れなくなっている、と言えばよいかの?」
「うーん、理解はしました…しかし全ての大陸間がそんなことに?」
「そうじゃ。そこにこの神魔結晶石が関わっておる。」
こんな拳大の石に一体どんな秘密があるというのだろうか。
いや、まあ魔術があるような世界なんだ。
普通の常識では物事を語ることは出来ないんだろう。
「昔話みたいなもんじゃがな、元々一つだった大陸の中心部にはな?
人のような形をした神石と呼ばれる物があったんじゃ。」
「神石…ですか。」
「うむ。いくら魔術を使おうとも、そこまで精巧な人の形への加工は不可能じゃ。
この世界の人々は皆、これは神にしか創りえない石だと大切にしておった。
事実、その石を大切にするほど神の起こす奇跡としか言えないような出来事が起きていたんじゃ。
枯れた大地には雨が降り、吹き荒ぶ嵐は姿を消し、荒れ果てた大海は静けさを取り戻したのじゃ。」
「なるほど、それで神石ですか。」
確かに世界には、人の手では絶対に作れないような物や起こすことの出来ない現象が溢れている。
それは魔術という特殊な技術力があっても同じという事か。
「うむ。しかしある時その神石を、強大な力を我が物にしようとする者が出たのじゃ。
その名は魔王ベルゼ。奴は突如神石の保存されておる王国に現れ、王の目の前で持ち去ろうとした。」
「魔王…ですか。」
「うむ。心の底を悪意に満たされた者達を悪魔という新たな種族とし、それら全てを圧倒的な力でねじ伏せて統治していた王じゃ。」
「凄まじいですね…しかし持ち去ろうとした、というのは失敗したということですか?」
「あっているようで微妙に違うのう。まあ聞くんじゃ。魔王がその神石に触れた瞬間の事じゃ。
凄まじい魔力を含む光が神石から溢れ出たのじゃよ。
それに対抗するように、魔王は神石をその身に取り込もうとした。
しかし、神石は人々から大切にされていた、言わば愛が込められた物。
それと悪意の塊のような存在である魔王が、完全に混ざり会うことは無かったのじゃよ。」
「もしかしてその力同士の反発で…?」
「うむ。大陸は凄まじい地鳴りと共にひび割れ出したのじゃ。
そして魔王と神石が混ざりあって反発したものは13の石に砕けた。
それは四方八方へと散り散りになり、それが落ちた衝撃でひび割れ始めていた大陸は分かれることとなる。
そして神石と魔王の混ざった石であり、落ちた周囲に大量の魔結晶を生み出すことから神魔結晶石と呼ばれる事となったんじゃ。」
本当に古い言い伝えや伝承を聞いているようだった。
しかし、この語り方はまるで目にしたかのような…
いやまあいい。
それにしてもなんでそんな物を師匠は持っているんだろうか。
「その…なんで師匠はそんなものを?」
「……この神魔結晶石は神石の別れた物であり、魔王の別れた物でもあるんじゃ。
そして魔王復活を目論む者は13ある神魔結晶石を一つにする為に集めようと企んでおる。
そんな中でも悪魔と人間が結託し、進化することで生まれる魔人と呼ばれる者は強大な力を持っていての。
そんな魔人に滅ぼされた大陸から、儂がなんとか逃げ出した時に守り抜いたのがこれじゃよ。」
とんでもない話だった。
師匠は過去に生まれた土地を滅ぼされていたのだ。
好きこそ物の上手なれで賢者と呼ばれるようになったんだろうと、軽く考えていた過去の自分をぶん殴ってやりたくなった。
師匠はきっと、いつかその時の復讐をする為に途方も無い研鑽を積み、賢者と呼ばれるまでに努力を重ねて上り詰めたのだろう。
「なんじゃ、そんなに熱い目で見つめおってからに。
儂にはそんな趣味はないぞ?」
「なっ!そんなわけ無いじゃないですか!俺は…!」
師匠は俺の言葉を遮るように手を伸ばし、俺の肩をポンと叩いた。
「安心せい。既に過去は割り切っておるわ。
出来損ないの弟子に心配されるほど老いてないわい。」
「そ…うですか。分かりました。」
「ふぅ、久々に長話したせいで疲れて腹が減ったのう!
今日は手伝ってもらうぞ?共に朝食の準備を済ませて食ったら修業を始めるのじゃ。」
「…はい!分かりました。」
誰かに話すことで、報われなくとも、救われることは少なくともあるんだと思う。
師匠の足取りが、見た目から感じる年齢よりもどこか軽快に見えた気がした。
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