15. 騒乱の朝
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部屋のベッドに腰掛けながら魔術の文献を読んでいると、子供の頃ゲームの攻略本を読んでいたようなワクワクする気分になる。
それもそのはずだ。
元いた世界では到底理解できなかったような分野の研究等が、この世界では魔術の研究となっている。
どの魔術同士なら組み合わせて使うことが出来るか?
その時空気中にどれだけの魔素原子が必要であるか?
この魔術とこの魔術がぶつかりあった時には空気中にどれだけの魔素原子が発生するだろうか?
そんな魔術を使う上での疑問と、その答えが本になっている。
ついページをめくる手が止まらない。
気づけば窓から見える空は黒から群青色へと変わりつつあり、新しい一日がもう始まっていることを教えてくれた。
「あっ朝何時からか聞き忘れてた。」
社会人失格だ。時間も場所も何もかも聞かずに解散してしまった。
慌てて聖堂内を駆け回るが不思議なことに部屋が見当たらない。
自分が借りていた部屋と聖堂の出入り口以外の扉がないのだ。
少なくとも昨日まではあったはずの大広間への入口や、その他の部屋への扉すらなくなっていた。
「どういうことだ?」
とにかく中に居ないなら、師匠は外に出ているのかもしれない。
聖堂の外へ出ると、凄まじい破裂音が連続して聞こえてきた。
どうやら音は聖堂の裏から聞こえてきているようだ。
「今日はヤケに多いのう。なんとか起きる前に片付けたいもんじゃな。」
師匠の声の聞こえてくる方を見ると、翼の生えた大柄の生物が何匹も師匠に襲いかかっていた。
あれは…竜だろうか?
師匠は一歩も動くことなく杖を振りかざす。
すると、空を舞う竜達は羽ばたく事すらままならなくなり地に落ちた。
師匠はそのまま、落ちた竜達に手を触れていく。
触れられた竜の呻き声が聞こえた後、体の中心辺りから赤い光が迸る。
その光が竜の姿を包んだ時、光はその輝きを増していく。
あまりの眩しさに目を開けていることも出来ず、ギュッと目をつぶった瞬間だ。
風船の割れるような音が連続して響き渡る。
目を開けた時、竜達の姿は影も形も無くなっていた。
「師匠、おはようございます…なんと言ったらいいのか、凄すぎて言葉が見つかりません。」
「ぬおっ!なんじゃおったのか。ぬぅ、見られてしまったな。」
そう言いながら師匠は何かを隠すようにして、腕を組みながら後ろを向く。
後ろから見た様子だと、首飾りだろうか?
見えている限りだが、簡素な麻紐をかけているようだ。
何かをぶら下げているのだろうか。
「あの、師匠?なんか隠してます?」
「なんの事じゃ?それよりも早起きじゃのう。」
「いやぁ、師匠。それは無理がありますよ。
流石に露骨すぎますって。」
「うぐ!そ、そうかのう。…そうじゃ……のう。」
師匠は指先で頭を掻く。
しかし、やがて何かを決めたかのように一人頷き、こちらを振り向いた。
首に下げている何かを、両の手で水をすくい上げるかのようにして大事そうに持っている。
「ええっと…それなんです?」
「これはな……世界に13個しかないと言われている物じゃ。」
なんだろう。微妙に噛み合っているようで噛み合っていない。
師匠は的を得たことをあえて言わずにいる気がする。
「すみません、俺はこの世界の人間ではないんです。
いくらなんでもその情報じゃ、分かりませんよ。」
「そうじゃったな。これはな…神魔結晶石と言うものじゃ。」
「神魔結晶石?魔術適性を調べた時に使った魔結晶のようなものですか?」
その答えを聞いた師匠は嬉しそうに笑った後、顔を引き締めた。
「近いが違うな。魔結晶は、神魔結晶石が精製された周囲に出来る物。
言わば魔素原子が集合して魔力だけが取られた抜け殻じゃ。
対して神魔結晶石は、周囲に魔素原子を生み出す効果を持つ。」
「それをなぜ隠す必要が?」
「これは人の手に渡るには強力過ぎる代物なんじゃよ。
特に魔素原子を生み出す以外のもう一つの効果がな。」
「もう一つの効果ですか?」
「うむ。それを話す為には少し歴史の勉強をせんとじゃな。
まあ適当なとこに腰掛けるといい。」
師匠が近くの切り株に座ったのを確認し、適当な石を見つけて腰掛ける。
こちらが腰掛けたのを見届けた後、師匠は目を瞑りながら語り出した。
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