13. 師匠と弟子
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「な、なんじゃあ?叫び声なんぞあげながら来おって。」
心臓は激しく鼓動しており、肩で息をすることしか出来ない。
無視するつもりは無いので、手で待って下さいと合図を送る。
「ぬ?あぁ、わかったわかった。
ちと待っておれ。氷術、水術」
気づくと目の前に水の入った容器を差し出されていた。
受け取ってゆっくりと飲む。
容器がかなり冷えているため、中の水も冷たくなり美味しい。
何とか落ち着けた。
「ありがとうございます…」
「うむ。それよりも、何があったんじゃ?」
「それがですね…」
集会所で鳥居について聞かれたこと、そして町長の使いを名乗る相手から襲われて逃げてきたことを説明する。
「確認したいことがあるんじゃが、よいか?」
「ええ。」
「気配がしたのに振り向いてもいなかったんじゃよな?」
「…?そうですよ。そこが何か変ですかね?」
「なるほど…不可視の奴らまで使わせたか。かなり本気じゃな。」
「その不可視の奴らというのは?」
「ん?ああ、すまんの。文字通り見えなくなる魔術を使う騎士団の話じゃよ。
しかしお主よくぞ、気配に気づいたの。」
「気配に気づいたのはなんとなくです。しかし魔術を使うのに騎士団なんですか?」
「あぁ、そうじゃ。おぬしの世界でどうかは知らんが、この世界じゃ魔術は誰でも使えるもんなんじゃよ。
だから使う魔術の種類で分けるんじゃ。
普段は刀身のない剣を持ち歩き、戦う時に魔術で相手に合わせ刀身を変える。
それは紛れもなく創剣術。つまり剣を使うから剣士か騎士じゃ。
儂の場合、気配はあれど見えないという話から不可視の騎士団だと判断したんじゃよ。」
「なるほど。」
「しかし儂が同行した時もそうじゃが、あの結界はおぬしにしか通れんようじゃの。」
「っ!鳥居の噂のやつですか!あぁ、だから逃げきれたんですね。しかし、俺にしか通れない?
てっきり師匠がその結界ですか?の魔術をしたので通れるのかと思ってました。」
「儂には治癒術と結界術の複合なんて出来んわ。
まあよい、その話はな。
真面目な話をしたい。聞いてくれるかの?」
そう言って師匠は顔を引き締め、その場に座った。
倣うようにその正面に正座をする。
「お願いします。」
「おぬしも気づいておるかもしれないが、この世界は魔術と悪意に溢れておる。
そしておぬしは魔術をつかえない。
更に呪術という呪いのせいで、治癒術は儂以外にかけてもらうことは出来ぬ。
そのうえじゃ、後で説明するが町長という厄介な存在に目をつけられた。
ここまで言えば何が言いたいかわかるか?」
「このままでは、俺の命が危ない…ということですか?」
「あぁ、そうじゃ。話が早くて助かる。
そこで、正式におぬしを弟子と認める。
儂の元で修業を積んで欲しい。
この頼み、受けてくれないだろうか?」
あぁ……なんて優しい人なんだろうか。
師匠は、俺の命を助けるために俺を鍛えてくれると言う。
そしてそれを頼みと言って俺に気負わせない気遣いまでしてくれた。
これを優しさと言わずなんと言うんだ。
命の危機を初めて感じた日だったからか、思わず涙が溢れ出る。
「お、おでがいじまず…」
「はっはっは。なら儂とお主は正式に師匠と弟子じゃ。
何、礼はいらんよ。数十年の変わり映えしない孤独の日々に、変化をもたらしてくれたんじゃ。
むしろこっちがお礼を言いたいくらいじゃよ。」
「改めて、よろしくお願いします…!!師匠ッ!!」
正座の状態なのも忘れ、頭を下げたことで地面に額がぶつかる。
頭を上げると、師匠は少し驚いた顔をしていた。
しかし目が合うと笑った。
俺も同じく笑っていた。
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