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流れ着いて異世界 〜仕事が忙しいので世界平和は他の人に任せます〜  作者: 幸運を殺す者
第一章 賢者の見守る町
10/20

10. 賢者との約束

毎週火曜と土曜0時に一話ずつ更新です

よろしくお願いします

肩を落として箒で掃き掃除をする弟子を眺めながら、物思いに耽ける。

魔術適正無し。

それはこの世界において生きることをほぼ諦めろと言われたのに等しい。


彼が初めて訪れたのが、この町で良かったと心底思う。

町の外部の約半分を海に覆われ、実質的に魔物の侵攻をされづらい。

地上はかつて儂の築いた壁と関所があり、そちらからも魔物は滅多に入って来れない。

つまりここは世界一番の安全な町であると言える。


しかしどうだろうか、1歩外へ踏み出したなら魔物や野盗の餌食となる可能性があるのが常識。

そんな中、魔術適正がない。

つまりは戦う手段を持たないというのは、絶望的じゃ。


そのうえじゃ、彼は全身を呪術に侵され、治癒術の効果を受けられない。

絶望的なんて言葉で済ませられる問題ではないじゃろう。


全くもってとんでもないやつを弟子にしてしもうたわい。

これで嫌な奴なら知らんぷり出来るんじゃがな…


──────────


笑い飛ばして来た割に、チラチラとこちらの様子を不安気に伺う師匠の真剣な顔は一体なんなんだろう。

まあ…気にしても仕方がない。

この辺りを終えたら、掃き掃除は終了だ。

あとは拭き掃除をして、水周りの掃除を終えればいい。

恐らく普段から師匠は几帳面なんだろう。

少なからず掃除は行き届いているようで、あまり手入れの必要はない。


しかし今の会社に入ってから、転職もせず一つの仕事しかしてこなかったからだろうか。

この清掃という仕事はなかなか楽しく感じる。

これでお金を貰っていいのだろうか。

いや、違うか、これでお金を貰うのだからもっと丁寧にやらないとだな。






「おぉーい、いつまでやっとるんじゃ?もうそんくらいでええじゃろ。」


「はい、分かりました。」


気合いを入れ直して、既に終わっている所も見直す。

そんな流れで2周ほど聖堂内を回った頃に、師匠から声をかけられた。

個人的にはまだやり足りないのだが、暮らしている本人から言われたのだから素直に従うのが道理だろう。



「集会所の方からは、終わったら灯台の火を灯すように言われました。

マッチか何か借りられませんか?」


「ぬ?あーあれは儂じゃないと無理じゃよ。魔術でないと灯せぬからな。」


「あぁ、そうなんですか。ではお願いします。」


「うむ、ええじゃろ。聖炎術(ホーリー)



師匠の手から白い光が瞬いたと思うと、気づけば灯台に火が灯っていた。

真っ白な綺麗な光に少し見蕩れてしまう。


「ありがとうございます。しかし、気になっていたことがあるんですけどいいですか?」


「なんじゃ?スリーサイズなら秘密じゃぞ。」


「いや。そんな趣味はないんですけど、なぜ師匠は詠唱…?と言うんですかね?をせずに魔術が使えるんですか?

町にいた俺を助けてくれた方は、主なる神よ…みたいな言葉を言っていた気がするんですけど。」


「そんなことか。

儂が天才じゃから、なんてのは冗談での。

そんな怖い目をするでないわい。

まあ魔術ってのはイメージが大事なんじゃけどな?

詠唱ってのは、そのイメージを補助するのに使うんじゃよ。」


「師匠は好奇心だけでなく想像力も豊かだから、詠唱をせずとも魔術が使えるということですか。」


「そうじゃ。なんか馬鹿にされてる気がするのは気のせいかのう。」


「気のせいでしょうね。

なるほど、よく分かりました。ありがとうございます。」


「うむ。」


さて、気になっていたことも解決した。

ひとまず集会所に報告に行かないとな。命の恩人の方や師匠への一宿一飯のお礼も買いたい。


「では、俺は仕事を達成したので、集会所に戻りお金を受け取ってきます。」


「もう行くのか?もっとゆっくりしていいんじゃぞ。」


「いえ、今自分は文無しなので。ひとまず安心が欲しいんです。」


「そうか…なら一つ。しがない老人の頼みを聞いてくれんかの?」


「ええ、なんですか?」


「報酬の金を受け取って、用事を済ませたらでいいんじゃがな。またここに来てはくれんかの?

もちろん宿は貸すし、飯は出そう。」


「師匠…もしかして、ここに人が来たのが久しぶりだから寂しいとかですか?」


「まあ、そういう事じゃ。じゃからなるだけ急いで来て欲しいんじゃ。」


「ははは、いいですよ。師匠と話すのは楽しいですし、せっかくなので魔術のお話も聞きたいです。」


「それは嬉しいのう。なら約束じゃ。帰ってきたらいくらでも話してやるわい。

ささ、行った行った。

とりあえず、結界のところまでは見送ってやるわい。」


そう言うと師匠は先に階段を降り始めた。

俺も続くように降りていく。

バリンッと、ガラスが割れるような音が一つ。

目の前から師匠はいなくなっていた。

前をよく見ても、振り向いても、そこには鳥居があるだけだった。



「なんだ、師匠。帰るなら一言くれてもいいのに。」



きっと魔術で帰ったんだろう。

別れの挨拶をしなかったのは、またここに来る約束をしたからだと思う。


しかし、やけに気に入られたようだ。

出会ってすぐは勘違いから色々あったが、凄くいい人なのは間違いない。

悪い気はしないからな、用を済ませたらまたすぐ戻ることにしよう。


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