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002. 排出率100%で爆死するとこ見せろよ

 僕達が異世界で最初に降り立った地は、だだっ広い草原だった。

 遠目に牛の群が見えるけど……んん。よく見ると角が三本あったりする。地味に異世界だな。


「おおっ、草原パターンか」


 三十路くらい?のサラリーマンの人が妙な分類を始めた。


 さっきの神域的な所では大人しくしていた人達も、ここに来てようやく異世界転移の実感が湧いてきたのか、混乱して騒いだり泣いたりする人も出て来ようかという所で、この空気の読めない発言だ。

 こいつは多分、会社の同僚とは業務連絡以外で一言も口を利かず、昼休みもずっとスマホを見ているタイプだろう。


 しかし、そんな「何かわかってる」っぽい発言が、この状況をさっぱり理解できていない層の興味を引いた。一部のヤンキーや中高年労働者、登山客の老人グループ等だ。


 気を良くした三十路リーマンは、要出典の解説を始めた。

 草原に召喚されるパターンは、お城パターンと比べると自由度高く、森パターンと比べると安全性が高い。でも、盗賊や軍隊に絡まれる強制イベントが発生しがち、とのことらしい。


 で、初回ガチャはチュートリアルの後かな、ってことで、何か皆で待つ空気になったんだけど、数分経っても誰もやってこない。


「……これ、自力で人里探すパターンかな」

「マジかよ、俺ら水牛じゃねーんだぞ!」

「は? どういうツッコミ?」

「いや、住める場所を探して集団で大移動しないと、みたいな」

「うざ。バッファローかヌーと勘違いしてない?」

「は? 水牛も大移動するやろ」

「は? しねーし」

「うーん、ネットが繋がらないから調べられないわね」


 短気な人達の苛立ちも高まり、揉め事が起きそうになった所で、


「とりあえず皆さん、忘れない内に、今日の分のガチャ回してみませんか?」


 イケメン大学生っぽい人が強引に話を変えてくれた。

 イケメンの上に声も良い。つまり発言力が強いということだ。


「ガチャメニュー、と念じるとガチャメニューが開くみたいですね」


 トートロジーみたいなことを言うイケメンの説明は、ガチャゲーに馴染みのない者も含む、この場の全員に理解できる物だったらしい。

 各人の目の前に、ガチャメニューのウィンドウが浮いていた。


 一応他の人のと見比べてみたけど、内容は同じだ。

 無料1連ガチャと、宝石3000個での11連ガチャのボタン。

 後は何か細かい説明文とか。


「折角なので、初回はせーので押してみましょうか」


 イケメンが朗らかに言うと、何人かから笑いが漏れた。

 イケメンがちょっとした冗談を言うと、普通の人の千倍くらい面白く感じるよね。わかる。


 と、


「おい、いきなり運営に絡んだデスゲームのモブ野郎」


 知り合いでも何でもない、茶髪のマイルドヤンキー野郎が僕を呼ばわった。

 先程、大移動がどうこういう話題で集まっていた中の一人だ。こいつは水牛派だったろうか?


「何だよ」

「お、おう、素直に返事するんだな……。お前、【ガチャで(ノーマル)しか出ない呪い】がかかってるんだろ?」

「らしいね」

「排出率100%で爆死するとこ見せろよ。代わりに俺が運命力でSSR引くとこ見せてやるから」

「んー、まぁいいよ。減るもんじゃないし」


 僕は割と自暴自棄な気分だったので、この見知らぬ男と並んでガチャを回すことにした。


 準備は万端。

 全員が律儀に指を構えて、イケメンの号令を待つ。


「それではせーので行きますよ! せーのっ!!」

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