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【ガチャでN(ノーマル)しか出ない呪い】が実は最強チートだった!? 99%即死効果の糞ガチャ異世界を生き延びる!!!  作者: 住之江京
Chapter009:聖都シャトーブリアン

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183. 悠々と広場の上空まで飛んできた教皇は、僕達の姿を確認すると、一際大きなブレスを空に放った

「僕が死ぬ?」

「具体的にはわからない! でも、危機感知スキルが言うには、このままだと世界が滅ぶ(・・・・・)って!」


 危機感知スキルの危機(・・)は、本人が受ける被害について判定される。死ぬとか、怪我をするとか、物を盗まれるとか。

 例えば、「コナさんがガチャを回すのを止めなければ、山本さん自身が激しい精神的な苦痛を受ける」といったように。山本さんはその警告内容から未来の状況を推察することで、危機感知の対象を疑似的に周囲に広げている。


「このまま君をドラゴンと戦わせたら、9:1(キューイチ)で世界が滅ぶって言われたのよ」


 それで「僕が死ぬと世界が滅ぶ」と考えるのは、流石に僕を買いかぶり過ぎだと思うけど。ドラゴンの協力が得られなくなって失敗……という可能性もあるし、それから、僕に殺されたドラゴンが大爆発して大陸が消し飛ぶ可能性もある。


〈少なくともドラゴンはそこまでの爆発はしませんよ〉


 それは良かったです。


〈ただ、このままだと貴方が死んでいた可能性が高いのは本当ですね。

 山本に指摘されて詳しく確認しましたが、教皇は近衛兵や枢機卿達を殺害した後、そのドロップアイテムで身を固めていました〉


 ラムダ様はそう言って、僕の脳内に直接、教皇の装備情報を送り込んでくれた。

--------------------------------

■装備一覧

 右手/剣:近衛兵の剣 (【耐性貫通:超級】)

 左手/ペン:文官のペン (【感知抵抗:超級】)

 頭部/兜:近衛兵の兜 (【対人特効:超級】)

 胴体/帯:枢機卿の帯 (【読心】)

 腕部/腕輪:将軍のブレスレット (【改良変異】)

 脚部/

 装飾/耳飾:枢機卿のピアス (【状態異常無効】)

--------------------------------

 装備品の中に【読心】スキルのついたものがある。

 ドリルツーノ枢機卿も亡くなったんだな。


〈教皇自身のスキルは【ドロップ倍加】です。それ単体だと、通常1割程度のドロップ率が2割になるだけのスキルですね。今回は相応に機能したようですが〉


 あの大きなドラゴンは、やっぱり教皇なんですか?


〈はい。【改良変異】スキルでサイズやステータスが大幅に上がっています。

 しかし、対魔王戦を考えると総合的な戦術的価値、戦略的価値は下がりましたし、何よりあれは貴方を殺そうとしていましたね〉


 色々言いたいことはありますが……兜とか腕輪とか、あのドラゴンが装備できるんですか?


〈鱗に挟んだり、引っ掛けたりしてるだけですよ〉


 装備システムも大概いい加減な所ありますよね。

 僕は走りながら、教皇が何をしたかと、その装備スキルについて山本さんに手短に伝えた。


「状態異常が効かないのも厄介ね。貫通スキルは有効だから、正攻法は魔法で撃ち落とす、かな」

「そう言われると勝てる気がしてきた」

「まだ9:1(キューイチ)で世界は滅ぶし、もちろん私も死ぬみたいだけど」

「勝てる気がしなくなってきた」


 走りながらの会話だけど、流石に出会った頃とは違って、この程度ならお互い息を切らすこともない。

 通りをまばらに埋める通行人や屋台を避けながら、時折空を見上げる。

 教皇は逃げる僕達の上でアクロバット飛行をしてみせたり、空に向かって熱線っぽいブレスを吐いたりしていた。


〈対ドラゴン戦の定石は、広い場所で迎え撃つことですよ。ブレスは防げなければ回避するしかありませんし、森や路地に隠れても、見えない位置からブレスで一掃ですからね〉


 確かに、今攻撃されたら避けられずに死にますね。


〈相手も無意味に自国の首都を破壊したくはないでしょうから、逃げている間は待つつもりのようです。かといって、足を止めれば街ごと吹き飛ばされるでしょうけれど〉


 そもそも何で僕達、命を狙われてるんでしょう。


〈さあ……教皇が臣下を皆殺しにする直前の会話を一言一句確認しても、全く理解できませんでした〉


 えええ……そんな理不尽な為政者っています……?


〈診療記録はありませんが、何かしらの疾患を抱えているのではないかと。

 ……申し訳ありません。私がこの国へ来ることを提案したばかりに〉


 ここまでめちゃくちゃな展開で襲われるなんて、現実どころか、フィクションでも早々ないですよ。

 予見できないのは仕方ないですし、悪いのは教皇です、教皇。

 僕ももっと、感情を無にする練習とかしておけば良かったんです。



 悲鳴や歓声を上げる一般市民の間を抜け、僕達は大通りを走り切った。

 辿り着いたのは聖都の端、都壁の門の内側にある広場。人気(ひとけ)のなくなった広場の中央でコレットさん達が待っている。

 山本さんが視線を向けて頷くと、コナさんとラヴィズさんはすぐに駆け寄ってきた。


「ここまで来たら、少なくとも世界が滅ぶ確率は3:7(サンナナ)まで落ちたわ。ここが一番マシね」

〈承知いたしました、津埜乃(つのの)様。ここで迎え撃ちましょう〉


 山本さんは穂先から放電するすごい強そうでファンタジーな槍をラヴィズさんに渡し、自分は何か冷たそうな空気の出ているファンタジーな杖に持ち替えた。

 コナさんもラヴィズさんに金属製の小さな杖を渡し、逆に重そうな武器を受け取る。

 装備交換を終えると、コナさんは余分な荷物を持って広場の隅へ移動した。


「ラムダ様から、お兄さん達が来てるって聞いて待ってましたですワン。

 状況と装備スキルの話は、あっちの2人にも伝えてますですワン」

「ありがとう。相手が飛んでるから、コレットさんは地上の警戒をお願い。増援が来たら対応して。コナさんが戦えそうなら一緒に」

「はいですワン。でもコナはその辺の一般人より弱いですワン」


 コレットさんは短い間に随分とステータスも伸びたし、ステータス以上の戦闘勘(?)もあると思うけど、空対地の攻撃機に刀で挑むのは無茶だ。

 増援に邪魔をされても面倒だから、そちらをコレットさんに任せよう。

 コレットさんで勝てなさそうな相手が来たら、ラムダ様、すぐ逃げるように指示をお願いします。


〈はい、引き受けました〉


 ありがとうございます。


 後ろを気にする必要もなくなったので、僕は空を見ながら杖を抜く。手持ちの武器は杖だけとは言え、近接武器が届く距離でもない。弓はあった方が良かったかな……。

 青い空の中、教皇にだけ視線を向ける。改めて見ても大きい。遠目だから正確には判らないけど、元のサイズの5倍はありそうなドラゴンだ。


 よく見ると、その腰辺りにはヒラヒラした布切れがくっついていて、角にはボールペンのキャップみたいに兜が嵌めてあるし、両腕には突き立てられた剣が見える。

 あの装備品を打ち落とせば多少楽になるだろうけれど、義手の矢は届かない高さだし、魔法もかなり気合を入れないと難しいな。



 悠々と広場の上空まで飛んできた教皇は、僕達の姿を確認すると、一際大きなブレスを空に放った。


「山本さん。一応の確認だけど、和解ルートってある?」

「きっちり殺さないと、世界は滅ぶみたいよ」


 駄目かぁ。

 この戦いに負けたら――というか、山本さんが言うには僕が死んだら――世界が滅ぶ、というのも変な話だけど。


〈真面目な話、これで貴方とコレットが死んだら、私はこの世界を救う意欲を著しく失いますよ〉


 ああ。それは滅ぶかも知れませんね。


「カウントゼロで左右に避けて! 10、9、8……」


 山本さんの警告。


「愚かなる異世界人共よ……我が怒りと力を、思い知るが良いゴン……!!」


 大音声による宣戦布告と共に、広場を真っ二つに切り裂く軌道で、熱線ブレスが振り下ろされた。


「5、4、ゼロッ!」


 えっ急にカウント飛んだけど!? 避けるけどね!

 ちょっと驚いたけど、口から放たれるのと地面に到達するのがほぼ同時のブレスも、タイミングが判っていれば避けられる。


「ラヴィズさんが【読心】スキルで読まれてる!」

〈……くッ、申し訳ございません……ッ〉

「大丈夫、それも踏まえて対応するわ!」


 僕と山本さんは感知抵抗で読心を防げるけど、口頭で作戦共有ができないのは厄介だな。


「2人共、特に指示がなければ自分の判断で避けて、それで問題ないから!」

「わかった」

〈承知いたしました〉


 短く鋭いブレスが乱雑に降って来るけれど、距離もあるし、瞬時に届く熱線以外は見てから動いても躱せる。

 こちらも御返しに電撃魔法を練ってゆく。

 山本さんも魔法を飛ばしながら僕に耳打ちした。


「壁の近くに誘き寄せるわ」

「うん」


 山本さんの魔法が回避され、姿勢を崩した所に僕の電撃が掠る。

 スピードはあるけど、距離による減衰が大きく、ダメージはあまりなさそうだ。

 それでも不快感くらいは与えたようで、こちらに電撃ブレスを返して来た。掠った。


 右腕が動かなくなった。

 精密機械みたいなものだし、耐性を貫通されたらこんなものだろうな。

 もう修理できる技術者もいない義手を外して地面に落とす。

 重心は狂うけれど、その分だけ身は軽くなった。

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