010. 君と一緒に行くのは、やっぱり無理かも
朝の寒気に目を覚ますと、そこは草原だった。
異世界転移の初日、僕達は草原を1日歩いて、草原を流れる小川に辿り着き、草原に挟まれた狭い川原で夜営したのだ。
草原広すぎ。
「起きたのね。おはよう」
「ん……おはよう」
5時間交代で見張り役と火の番をしてたんだけど、若干寝不足の感がある。
気温としては春の雰囲気。
転移前の季節は冬だったから、一応厚着はしている。地面にもウサギの毛皮を何枚か敷いたし、何故か大量に山積していた流木(?)で焚き火もしていたから、凍えるほどの寒さではない。
一緒に転移してきた生き残り仲間の山本さんは、ガチャ爆死した転移者仲間がドロップしたダウンジャケットを着ている。【冷気耐性:中級】がついているので、割と暖かいらしい。
「ねむ……」
「朝御飯はどうする? 焚き火も残ってるし、またウサギの毛皮焼く?」
「うー……まずはガチャを回そう」
ガチャではスキルかアイテムが出るので、何かしら役に立つ物が出るかも知れないし。でかいパンとか。
『ピロリッ、ガチャッ、スタートッ!!』
まあ、どうせ出るのはNの木の扉だ。
特に期待も不安もなく、ぼんやりした頭でガチャを回した。
ガチャ音声を聞いた山本さんは一瞬びくりとしたけど、木の扉を見て緊張を緩めた。
扉が開き、カードが飛び出す。
レア度★☆☆☆☆:N。
「【攻撃力上昇:下級】。またスキルね」
握力25キロの僕が、握力25.25キロになるスキルだ。
「解散!」
いや、要らないとまでは言わないけど、今求めてたのはこれじゃないんだよなぁ。
「山本さん、は……引かないよね」
「【危機感知:超級】が言ってるわ。回したら死ぬ」
僕達は、寝床にしていたのとは別のウサギの毛皮を1枚焼いて、2人で分けて食べた。
寝床の方は丸めて回収し、無理矢理デイパックに突っ込む。
いや、改めて見るとウサギの毛皮多いな! 昨日何十匹狩ったんだっけ。
角に気を付ければ蹴るだけで死ぬので、武器有りの僕より山本さんの方が活躍していた気もする。
「でも、こう言うのも楽しいねぇ。何だかんだ、この異世界に来れて良かったって思うよ」
欠伸混じりに身支度を整え、へらへら笑ってそう言った。
「……どういうこと?」
「なんかゲームみたいな世界だし。動物を狩るのも楽しいし。あとほら、デスゲーム見せしめ爆死は見れなかったけど、人の頭が吹き飛ぶのも見れたし」
寝起きでお腹も膨れてぼんやりしていた僕は、山本さんの固い表情にも、同じくらい固い声にも気付かずに、頭に浮かんだままを答えてしまった。
「………ごめん。私、君と一緒に行くのは、やっぱり無理かも」
だからまぁ、今更我に返ったって、こうなるのも仕方ないんだろう。
 




