07話 強奪魔法使い
「そういえば茶髪の名前は?」
「んぇ?言ってないっけ、ロックだぜ」
「ロック...ね、おけ」
ガラッ
教室の扉が勢いよく開けられる
「フェル!」
「...ミスラ?」
「うぅ...」
弱々しくタックルをしてくるミスラ
ぽすんっと抱きとめる
「私の特異魔法が奪われたの...」
「雷帝の...!?」
「どこでですかっ!」
「寮からここに来る途中...」
教室から飛び出すティア
「向こうも躊躇無くなってきたな」
「フェルも気をつけてね...」
うるうるとした目で見てくる
「...どんなふうに使えないんだ?」
雷帝の特異魔法は雷関係の魔法に多くの変化をもたらす、らしい
「雷魔法の使い方がわかんない...」
そう、分からない、なのだ
「ロックは...」
「俺も分からない」
腑に落ちない
「お兄さま」
ティアが戻ってきた
「足跡か?」
「はい」
「寮から校舎のあいだの道で知らない足跡はないです」
「それって」
ミスラも気がつく
「強奪魔法使いはときあめ寮にいる確率が高い」
ときあめ寮の寮生に何をしていたかを聞きに行く
セレナ
「昨日?フェルと別れたあとは先生と新聞作る人達のとこに行ったわ、...こういう時情報料を貰ってもいいと思うのよ」
「...えっ」
「新聞作る人に色々吹き込まれたわ」
「えぇ...10ポイントでいいか?」
「ふふっ、ありがと」
何となくしてやられた気分だ
ミスラ
「ステラと授業を受けてたわ」
「まぁ...なんとかするからさ」
「うん」
ステラ
「情報料も出すから...」
「そう...?まぁミスラといただけなんだけど...」
「んー、そうか、恐らくだけど接触された時に奪われるらしい、少しの量だが、10ポイントでいいか?」
「まぁいいわよ、それで」
スレット
「ロックといたな」
ロックが口を挟む
「おう!おまえら同じ寮だったのか!」
そこからしばらく話に付き合った
ライ
「情報料も出すから」
「えー?うん、色んなところ行ってたよー!大体1人で!」
「...そうか、少しの量だが、10ポイントでいいか?」
「そんなにも!いいよー!」
エクス
「情報料も出すから」
「べつにこんなんならいいさ、授業だ、午後は同じクラスのやつと勝負してたりしてたな」
「...勝負いいな」
「お、そのうちやろうぜ」
「そうだな」
「ライだけ怪しすぎる...」
「むしろどこ行ってたのか気になりますね…」
なるべく裏をとるために他にも情報を集めたが
ライだけは誰も見ていなかった
「...もうライでいいんじゃないかな」
「お兄さま、諦めないでください...確定はしてないですから...」
再びライの所へ向かう
もうすぐ晩御飯だが...
「なぁライ」
「どしたん?」
「強奪魔法使いってライ?」
「ちょっ、フェルさん!?」
ティアが慌てているけど...
「違うよー、はい、学生証」
ライが学生証を見せてくる
いや、それでいいのか
特異魔法の欄には
魔法強化と載っていた
「魔法強化?」
「うん、使う、使われる魔法を強化するんだー」
ボッと火を起こす
「強化っ」
ライがそう言うと小さな火が大きくなる
「こんな感じで強化するんだ」
「へぇ、使われるってのは?」
「身体能力上昇とかの効果時間を伸ばすとか」
「へぇ便利だな」
「でしょー」
「ティア、偽装の疑いは?」
「私が見たところなさそうです」
「ライさーん」
ガチャっとドアをあける
エリンシアさん
「あら、フェルさんとティアさんもいましたか、晩御飯です」
「はーい!」
ライがさっさと行ってしまう
続けて追いかけていくが...
「ライじゃないのか?」
「私の知らない偽装方法があれば分かりませんけど...」
晩御飯をたべる、今日は全員揃っている
この中に...?
「それでフェル、犯人見つかった?」
「いや、わからん」
「犯人って?強奪魔法か?」
スレットが聞いてくる
「ああ、ミスラも奪われたらしくって」
「うぅ...」
随分と気が滅入っているようだ
「何か知らないか?」
「それってフード付きマントが高速移動してるのと関係ある?」
「そうそう」
「あれ、相当速度が早いよな」
逃げている時は周りにも見られているようで
「奪っても使ったらバレそうだけどな」
「他人の魔法を使いこなせるとは思えないけどね」
「奪われたひと可哀想に、使えなくなるなんて...」
「奪われたら戦えないー?」
スレット
セレナ
ステラ
ライ
とみんな口々に話し始める
良いこととは言えないが今までの食事の中で1番会話が弾んだのでは無いのだろうか...
夜も更けて
静まり返る
「お兄さま」
「そうだな、今日来るだろうな」
雷帝の力を奪ったのは間違いだろう
制御出来ずに寮全体が雷魔法をうてる状態になっている
バレバレだ
さて、まずは犯人の答え合わせと行こう
「ティア、おやすみなさい」
「お兄さま、おやすみなさい」
両壁にあるベッドにそれぞれ入る
灯りを消し、暗闇が訪れる
俺は意識を手放した
ロックは気のいい奴です