05話 この戦闘狂め
「...草原か、3回目だな」
草原のフィールドは相手が見える
ってのんびり歩いてきてんな
「アイスボール」
牽制
「む、渦潮」
ズゴゴッ...
セレナの前に渦潮が生まれ氷の玉を飲み込んで消える
「おー」
「フェル、寝巻きじゃないのね」
...?
「おぉ」
自分の服装は制服になっていた
「あんたには悪いけどそこまでやる気はないわ、ただの力の誇示よ」
「抗ってもいいのか?」
「いいけど...サレンダー制だから降参する意思を示せば終わるわ」
「はーなんだつまんね」
「戦闘狂ね、今日ずっと戦ってたんじゃないの?魔力足りないでしょ?」
魔力は睡眠のタイミングで補充?される
「俺に限ってそれは無いな」
「何言ってんだか、まぁいいや、草原で丁度いいわ」
ゴウッ...
桁違いの魔力が渦巻き波打つ
空の夜空に黒い雲がかかる
「...!?」
「ウォーターランド」
突如雨が降りセレナを中心に大波が発生する
「なっ!アイスシールド!」
大波に大雨、視界も確保出来ない
20秒くらいだろうか、アイスシールドを浮き板にしてやり過ごしていたが...
「湖が出来てんじゃん…」
視界は全部水で埋め尽くされている
「これが水帝よ」
水の上を歩きながらこっちにやってくるセレナ
「正直びびった」
「そう、そんでこれだけできる水魔法使いが...はッ!」
パキパキ...
小さな氷柱がセレナの手にできる
「へぇ、聞いただけだったけど本当にそうなのか」
水の第2段階に存在するのが氷、と
「だから、氷使いと聞いた私はまず鳥肌が立ったわ」
「そんで睨んでたわけか」
「...そうね、でもあなたから水どころか氷以外の属性を感じることは出来なかった、その力はなんなの?」
「...」
まさかこんなにも早く普通じゃないことがバレるとは思わなかった、ただ
まだ、その時じゃない
「アイスボム」
「きゃっ」
「勝負、しようぜ」
「...顔が真っ青よ はぁ、サレンダー!」
「あっ!おい!」
視界が光に包まれていく
なんとなく負けた気分だ、試合に勝って勝負に負けるとはこのことか
「おかえりなさい、お兄さま」
「...ああ」
「お疲れ様、これで15ポイントなら安いわ、おやすみ」
そう言ってさっさと部屋から出て言ってしまった
「...なにを話してたんですか?」
「いや、見せつけられただけだよ」
「むぅ...」
ティアが膨れている、嘘はすぐバレるな
「特異魔法の裏がバレかけた」
「...さすがに帝という感じですね」
「あ、図書館に行ってきました、妖精の記録と資料をまとめてきました、あと学園の勝負についてもまとめておきました」
「ありがとう、あとは...少しくらい授業には出るかな...」
知識と経験の差
今はそこを埋めなければ
サレンダー制なんてあったのか...
大規模対戦というのもあるらしい、
他にはフィールドに移動せずに戦うのとか
了解を取るだけで気軽に戦える
...いい制度だと思う、うん
学園生活が始まって10日ほどたっただろうか、一日のサイクルが出来上がってきた頃
「っほい」
「うべ...」
いつもの教室でいつも通り賭け勝負をしていた、たまに図書館に行くくらいだろうか
挑んでくる70人くらいが固定客になってきた
今では5人組を相手にしているが
「お前らだんだん動きが良くなってきたな、接近戦でかわされたし」
「まぁ毎日通ってますしね」
「そう、それなんだよ」
「それってなんだ?フェルさん」
「未だに挑んでくる理由が正直わからん」
「ん?あーそれか」
「俺は賭けポイントが少ないからだな」
「え、少ないのか?」
「他は50とかだぜ?たかいたかい」
「そうだったのか...」
「僕は戦闘後にアドバイスをくれるからですね」
「アドバイス?」
「...えっ?こうやった方がいいとか...」
「お、おう、そうだな、アドバイスだな...」
「えっ、本当はなんなんですか」
「...」
「フェルさーん?」
む、5人からジト目がとんでくる
「俺は強いやつと戦いたいんだ、なら、弱いやつを強くするのは普通のことだと思う、いや、俺の中だけだが」
「えっ」
「あっはははは!フェルさんあんた面白いな!」
ぼっ...
正直恥ずかしいことを言ったな
「そーゆうところがいいんだぜっ」
「フェルさんは話しやすいんだよね、なんか」
「あっーもう恥ずかしいからさっさといけっ!」
「あ、怒ったわ」
「はいはいよ」
「また来ますねー」
5人を追い出すように廊下にだす
いや、追い出したんだが
あっはは...
廊下からも笑い声が聞こえてくる
うわぁはっずかしい...
コンコンっ
「失礼、フェル、暇かしら?」
「お、セレナ、賭けてこうぜ」
「...この戦闘狂め、寮に集まって、会議するわ」
2人で寮へ向かう
「フェル、その賭け勝負はいつまで続けるつもり?」
「お、セレナは興味がおありで?」
「茶化さないで」
「あーまじめちゃんは怖いぜ」
「...俺が負けるまでだな」
「えっ?なんて?」
「なんでもない、それよりもなんで今集まるんだ?夕食時でもいいじゃん」
朝と夜には自然に集まって食べている、まぁ全員が揃った時はないけど
ステラはほとんど合わないし
「全員集めるならこの時間帯がいいのよ」
もうすぐお昼時
予定がなければ集まれる時間帯というわけか
「なぁ周りがちらちら見てくるんだが」
「セレナさんだからですよ」
後ろから声がかかる
「わっびっくりした、ティアか」
「はい、私です」
「なんでセレナだから?」
「成績優秀なんです、あ、声掛け終わりました」
「ティアちゃんありがとう」
「む、ちゃん呼びは」
「声掛け?」
「...あ、はい、寮生の皆さんに会議することを伝えてきました」
「ティアちゃんはなんでも知ってるもんね、頭撫でてあげよっか?」
「むぅ、子供扱いしないでください」
ティアの髪色は黒に青みがかった色、セレナは深い青、まぁ2人の方が姉妹には見えるな
「お兄さま何か変な事考えていませんか?」
「いや、変ではないぞ」
そんなことを話しているうちに寮に着く
いつもの長机の部屋
「みんな急に呼び出してごめん」
目の前にお昼ご飯がスっと置かれる
「あっ、ありが...」
誰もいない...
「フェルさん聞いてますか」
「あっはい」
「今エールさんがお昼を準備してくれたようです、それはいいとして、この寮の名前が決まりました、ときあめ寮です」
「ふむ」
数日前に寮名を募っていた、というかなかったのか
「そして、寮名が決まったので寮ごとの大規模対戦に参加出来ます」
「大規模対戦...!」
やりたい、ものすごく
「チーム戦になります、詳細は追って説明するけど、これについて何かある?」
まぁ追って説明するで質問なんかないわな
「そしてっ!寮の渡り廊下の先の!別館で!お風呂に入れるようにしましたっ!」
「やたー!」ぱちぱちぱち
女性陣のこの盛り上がり用である
そもそもお風呂は帝ぐらいの人じゃないと入れない
水帝と雷帝の2人は馴染みあるんだろう
ステラも拍手しているけど
うーん、そんなに盛り上がるものなのか
まぁティアが喜んでるならいいのかな
そんな感じでお昼の会議は終わった
大規模対戦にワクワクしながら
学園生活がのんびりと続いていく、と思っていた矢先のこと
いつもの教室、最近はお昼にティアとセレナに加えて挑んでくるヤツらも教室で昼食をとるようになり始めた
まぁ賑やかなことはいい事だ
「そういえばフェルさん」
周りに人がいる時はティアはフェル呼びになる、たまに忘れているけど
「ん?ティアどした?」
「特異魔法の強奪の噂は聞きましたか?」
...え?
ときあめ寮です
しぐれじゃないです