41話 空の飛び方
この世界の人族が治めている領土は隣接していない
なので領土間の連絡に手紙などを使うと非常に時間がかかる
しかし、転移魔法が人王から派遣されている人物が使うことが出来てその人達が領土間を繋いでいる
まぁつまり帝関係の情報が伝わるのは早い
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「フェル...フェル!」
必死に声をかけている...
「おはよう...ソエル?」
反対側の壁のベッドの上からソエルが必死に声をかけていたようだ
「フェルから魔法がだだ漏れなの!寒いわ...」
周りを見るとベッドから氷がのびてドアや窓を凍らせている
「...これはひどい」
「何とかして...」
ベッドの上で薄いシーツにくるまりながら震えているソエル
「やー悪いことした」
氷精さーん?何か知りませんかねー!
そう言えば氷精とは炎帝の時から見てないな
ソエルに自分のシーツを投げて
部屋中の氷を砕いていく
「使わせてもらうわ...」
さむそう
ドアの氷を砕いて開ける、するとムッとした熱気が部屋に入り込む
「温度差で風が吹いてる...」
勢いよく流れ込んでくる熱気に苦笑いをしていたのだが...手紙が2つ来ていることに気がつく
ひとつはソエル宛か
自分のは...ガルドからだ
「ソエル、はい、手紙」
「ありがとう」
「...何か暖かい飲み物作った方がいい?」
「いえ、そこまでじゃないわ」
寒そうだけど...
引き続き氷を砕いて次に窓を開ける
「だいたいこんな感じかな」
ソエルはさっき渡した手紙を読んでいるようだ
ガルドからは...
「今日来るのか...」
どうやらガルドもポイントでの課題をやっていて昨日終わり、長期休暇らしい、それで
以前から話したい割に機会がなかったから手紙を寄越していくねーとの事
こっちも課題で残っているのは知っているらしい
「...はぁ」
ソエルから思いため息が聞こえた...
「どうかした?」
「あっ!いえ、なんでもないですよ!?」
明らかに挙動不審となるソエル
なんでもないわけないないって...
「いや」「フェールー!お客さん!」
バタン!と扉を開け放つミスラ
元気いいな、おい
「フェル、行ってきてください」
ソエルにそう言われれば行くけれど
聞く時間ぐらい無いことないでしょ
「ん?何か話してた?」
ミスラは勘が鋭いなー
「いえ、何も無いですよ?」
「ノックぐらいしろよ」
ソエルに手を振って送り出されるので聞き直すこともしずらい
まぁ、大丈夫と言っているなら大丈夫か?
「それでお客さんって?」
「フェルが私の次に戦ったやつ!」
「あぁ、ガルドか」
「久しぶり、フェル」
客間では既にガルドが座っていた
「それでミスラはいつまでいるんだ?」
「んー?私暇だもん」
「...ガルド」
「僕は別に構わないさ、雷帝の目線から何か得ることもあるかもしれないしね」
そうですか...
ちらりと横目にミスラを見る
「ん?あげんよ?」
もぐもぐとお菓子を食っているこいつから...?
「えっとそれで話って」
「羽根、空の飛び方だ」
ガルドからあの時使っていた仕組みを教えて貰った
雷魔法で羽根のように形作り広げる、そこに炎魔法で推進力を得ていた
簡単に説明するけれど...
まず、炎魔法だけだと多くを展開することが出来ないから体を浮かせるまでにはいかない
そこで雷魔法で展開できる範囲を広げる
「どうして羽根なんだ?」
「最初は足の裏にやってみたんだけど炎魔法だけだと早すぎてね、宙に留まるには大きさが必要だったんだ」
「そんな珍しい魔法をフェルなんかに教えていいのか?」
ミスラさん...なんかって…
「構わないさ、炎魔法だけなら試そうとしている人は何人か知っているし、何より相手が強いほど楽しみがいがあるってものだしね!」
あっ、こいつそういうタイプか
いやまぁ、ポイントで稼いでたんだからその可能性はあった訳か
「ふむ、確かに私じゃ使えないな、フェルは?」
「羽根を形作ることは出来るけど...」
パキパキ...と背中から鳥の羽根のように生やす
「うわ...フェル、氷で細かい表現するのなんか嫌...」
「えぇ...」
割といい出来だと思った矢先に...
ちらりとガルドを見る
苦笑いをしながら
「僕はいいと思うけどね...動かないなら飾りたくはあるかな...」
少し引いていた
「私はお茶を持ってきてやるからその羽根何とかしといて」
そう言って立ち上がるミスラ
な...そんなに嫌だった?
そっかー
ガチャりとドアを開ける
「きゃっ!」
「んぁ?」
ソエルが尻もちを着いていた
「いえ、ミスラ、すいません」
たたたっと行ってしまう
「フェル何かしたの?」
「こっちに矛先が向くか...」
やっぱり部屋を凍らせたこと根に持ってるのかな...もう一度ちゃんと謝らないと...
「彼女、何か困っている表情だったね、フェルなら解決出来るのかい?」
「うぅーん?」
困っていたのか
「ふむ、後で女性についても話そうか」
...「うん、たのむ...」
「そう言えば、氷の事なんだが」
冷たい部屋に外の空気がブワッと来たことを話す
「ふむふむ、それは使えそうだね、意地は難しそうだけど、一撃必殺技みたいでいいと思うよっ!」
上に行くというアドバンテージは多い
「ならそれを上手く使える羽根を考えよう」
◇
「意地が難しいなら羽根の必要ないな」
「あっ」「たしかに...」
ミスラの鶴の一声で羽根を生やす計画はなくなった
お茶を持ってきたあと黙々と食い続けて
ふぃーなんて言ったあとにこれである
いつ頃 気がついてたのだろうか
「んじゃ私はこれで」
スっと立ち上がり部屋を出るミスラ
ガチャ
「あっ...えっと」
ドアの前ではソエルが立っていた
「どしたん」
ちらっと部屋の中、自分を見てくるソエル
本格的に心配になってきたな
「いえ、ミスラ、セレナの所に行きませんか?」
「いいよー」
バタン
「相当みたいだね」
「ガルド...いや、ガルドさん...イケメンのあんたなら彼女の1人や2人いるでしょう、女性について相談がある」
「一言二言余計だけどね」
否定はしないのか
寝ている間に魔法を暴発、これっておねs...
実の所は氷精のせいです




