27話 グループの準決勝なのか
「うぅ...」
いつもの天井だ...
ちゅんちゅんと小鳥の鳴き声が聞こえる
部屋の明るさ的に朝日が登り始めるぐらいだろうか、恐らく少し薄暗い
「おはようございます、お兄ちゃん」
真横からティアの声が聞こえる
真横というか耳もと?
「おはようティア、腕が動かないのだが」
顔を横に向けるとティアが腕に抱きついてニコニコとしている
ちなみに寝巻きだ
「まだ寝てても大丈夫ですよ」
「そう、ところで昨日の」
「もう少し寝てましょ?」
「...そうだな」
謎の圧を放つティア、ごっ...みたいな感じ
黙ります...
「今日は対戦の2日目ですね」
「ああ」
「ガルドさんと炎帝...頑張ってください」
不安そうな声になっているティア
炎帝は勝ち上がってくると...まぁそうか
「大丈夫大丈夫」
ティアの頭をぽんぽんとしながら声をかける
ちなみに傍から見れば体制が凄いことになっているだろう
「俺はティアのお兄ちゃんだからな」
「...はい」
一瞬寂しそうな顔をしたのは何故だろうか
◇
まぁ特にこれといったこともなく
対戦の時間が来た
「改めて、フェルだ、よろしく」
「こちらこそよろしく、ガルドだ」
ニコッとはにかみながら手を上げるガルド
ふむ、左利きか、珍しい
今日はグラウンドで場所を広くとっている、大暴れできそうだ
そういえばこれってグループの準決勝なのか
「はじめっ!」
審判の開始の合図が聞こえる
メイスを構える
バチッ!!
電撃の音と共に背中に手が当てられる
「なんだかボッーとしているみたいだね?寝不足かい?」
おいおい、早すぎるだろ...
バヂッ!
零距離雷撃
「うぐっ!?...」
あれ、そこまでじゃない?
衝撃で軽く体を浮かす
着地して膝を着きそうになるのをメイスで堪える
電撃の威力はミスラの方が圧倒的に上だ
なら、問題は速さか
バチッ
「ふっ!」
一瞬にして懐に入り込んでパンチを入れてくる
防御の姿勢をとる暇すらない...!
バチッッ
「せやぁっ!」
せめて
「アイス...アーマー!」
バチッッッ
「オラァ!」
バギっ...氷の鎧が壊れることでパンチの衝撃を和らげてくれる、そして修復に集中する
バチッバチッ...
ひたすらに殴り飛ばしては近づいてを繰り返すガルド
背中からも殴られてマジで痛い
「はぁ...はぁ...なんて硬さしてやがる...」
攻撃の手が止む
少し離れたところでなんか呟いている
見れば拳から血が出ているのが分かる
自分は殴打が主だから出血はほとんどないが、したとしても傷口は直ぐに凍らせるから
あの拳は正直痛そうだ
「最初の乱打で落ちないのとは久しぶりかな...」
ファイティングポーズをとる
先手必勝だもんね
「速いですね、全然見えませんよ」
強がりだが声をかけながらメイスを構える
全然どころか全くだけどなっ!
「まだまだっ!」
ドゴォッ
ガルドのいた所が爆発した、と思いきや目の前に拳が現れる
まだ速くなるのかよっ!?
「ぅぐぁ...」
ガキィィン...
たまたまメイスに当たる
こっわ、こいつこっわ!?
ずざざ...と後ろに押し込まれ始める
ドゴォッッ
「ウオラァァァア!!」
ガルドの後ろが爆発して押し込む力が強くなる
「なっ!」
ザザザッとさらに押される、やばい、かかともげそう
殴ってくる時にバチッバチッと音がするのと力を込めるのに目を瞑っていたのだが
目を開けるとメイスとガルドの腕が凍りづいていた
...乱撃、破ったりっ
「凍れっ!」
足を地面と凍らせようとする...が押し込まれる勢いが強すぎて凍らない
「うおおおおっ!」
「凍れっ凍れっ!」
勢いが弱まる
止まるんじゃないか、ぐらいでガルドが呟く
「ブースト...」
ごおおっ
ガルドの背後が赤く染まり勢いが強くなり押し込んでくる
まじで足がもげそう...
踏ん張る足の感覚が薄くなる
何とかこの状態から逃れなくては
左手を突き出しガルドの拳と合わせメイスを右手で振りかぶる
ガルドは怪しんではいるがこのまま校舎の壁まで押し込むつもりなのだろう
壁とのサンドイッチなんてさせるもんか
メイスをガルドの横っ腹へ殴り込む
「おらぁぁあ!」
どごっ...
鈍い音がしてガルドの体が左に向かい出す、それに合わせて右側に体をずらしてバランスが崩れるようにする
右に体制が崩れ地面を少し転がる
勢いの強いガルドは...
後ろを見ると校舎の壁はすぐ近くまで来ていた
ガルドは壁にめり込んでいると思ったのだが、そんな様子はない
むしろガルドの姿は見当たらない
「...どこいった?」
雷の軌跡が上に伸びている
...うえ?
上、上空には赤い羽根のような魔法を広げて浮いているガルドがいる、肩で息をしているあたり披露は溜まっているようだけど
「それは...杖じゃ、ないんだね」
「...ああ、メイスだ」
魔法使いにとっての杖は制御の補助や使えない属性の魔法陣を仕込んだりと...
けれどこれは杖ではない
殴るのが目的だ
「武器の時代は終わって装備の時代だと思っていたけど、武器もまだまだ捨てたもんじゃないね」
「装備?」
「ああ、この羽もね、装備は守るだけじゃないってこと」
そのまま赤や黄色の塊を落としてくる
地面にぶつかると小さな爆発が起こる
「さて、ゴリ押しは出来なかったけども、ここからは空の時代、ワンサイドゲームと行こうか」
...ティア
ガルドのオレンジ髪は炎と雷が色濃く出てます