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氷の魔法を使う者  作者: ファイル
17/64

17話 帝ってなんか可哀想だな

ぼんやりと眠気が引いていく、だんだんと起きていく感覚、あー、なんかいいなぁ


感覚が戻ると同時に周りの空気が伝わってくる


「なんですか!また秘密ですかっ!」

「ええ、だいたい樹印を解除した後をあなたに教える理由がありませんわ」


ティアと...ソエルが言い合いをしている


「私は妹です!理由なんてそれだけで充分です!」

「だから、それは理由にはならないってさっきから言ってますっ」


「おはよ、うるひゃぁ...」


「お兄さま!おはようございます!」

「あっティアさんっ」


ティアが駆け寄ってくる

ソエルが後ろでむっとした顔をしている

「誰か来た?」

「セレナさんの所に結果を届けに行った人がいたと思います」

「炎帝は?」

「来てないです、何をしたんですか?」

「ああ、ちょっとね」


いや、ティアなら扉まで見に行ってそうだけど

誤魔化す理由は無いけれど


「...エルはいつから?」

「帰ってないわ」

髪を弄りながらティアを睨む


まぁそうだろうと思ったけど

「あ、フェルさん、どうしてか、ティアさんは私の名前をソエルと呼ぶのでそれでも構いませんわ」

どうしてかを強調して、ティアを睨みながら言うソエル


「なんですか?その言い方は、まるで私がなにかしたみたいですが」


なんでティアは喧嘩口調なんだよ

「...そうか」


朝はものすごく騒がしかった

朝食を取りに長机の部屋に行く


「なんなんだ、二人とも」

椅子に座ると奪い合うように隣に座ってくるティアとソエル


「私はいつもどうりですよ」

「ただ話し相手が欲しかっただけです」


「...そうか」

挟まれたくないのだが


「話し相手なら寮長さんでもいいんじゃないんですか?なんなら呼びますよ?」

「えっ、いや、えっ...」

困惑し出すソエルの前に突如として紙が現れる

『すいません、手が離せないので話し相手になれません、申し訳ございません』


「そ、そうなのね

どこから来たのかしら...この紙」


「む、私は気づいてますよ、あなたの心、まぁ、あれだけ言い合えば誰でも分かりますけど」


そんなやれやれみたいな顔して...

「そう言えば2人は寝たのか?」

「こんなのよりお兄さまと寝たいです」

「ずっと起きてたわ」


変な言葉が聞こえたな…

ティアの両肩に手を置く

「ティア、どうやら、疲れているようだ、寝よう?」

「また一緒にですかっ!?」


「おーう、ダメだこりゃ」


「またって?一緒に寝てるの?」

ソエルが食いついてきた

「いや、もっと幼い時にだよ」

「ふふん」

「うぐぐ...何よその顔」


ダメだ、収拾がつかなくなってきたぞ


「おはよう、賑やかね」

セレナも朝食を食べに来たようだ


「あーセレナー賭け勝負しよー」

助け舟ぇぇ...

「え、いやよ、せっかくの休みなのに...なんて顔してるのよ」

どんなふうに見えたのだろうか


「ま、話なら聞いてあげるわ」

「私も聞きますよっ!」

ガタッと立つティア

「えっ、わ、私も時間があるわ」

ティアに対抗するように立ち上がるソエル

いや、対抗してるんだろうな


「ティアとエルは寝てなさい」

2人の肩を抑えて座らせる


「なに?ギャグ?」

そうじゃないんだ、セレナさんよ



大規模対戦含め、企画して行われる対戦の翌日はだいたい休みになるらしい

授業も無く図書館は多くの人がいるとか


「ふーん、2人はずっと喧嘩してたんだ」

「多分」

「よく寝れたわね」

「...たしかに」


「それで、エルのことは分かってんの?」


「何がだ?」


はぁーと重いため息をする

「ダメねこれ」


「なんでだ?やっぱり、口止めに寝首を狙ってるのか?」


「ちょっと帝の話をしてあげる

帝の子は基本孤独なのよ、親からの教育に周りからはずっと見られてるし、拉致対策にひとりじゃ出歩けない、同じ年の子なんか近寄ってこないわ

学園でも取り入ろうとする子は多くてね

人間不信になるわ、こんなの」


「へぇ、大変だな」

「そうね、みんなあんたみたいなあほズラ晒してれば楽なのに」


「...それは話しやすいって褒められてるのか?シンプルにディスられてるのか?」


「さぁ?」


「うーん、じゃあセレナは人間不信なのか?」

「私は師匠がいたから」

「師匠?」

「魔法を教えてくれてた人よ、機会があればそのうち合わせたいわね」


「帝ってなんか可哀想だな」

「それだけ影響力があるの、だから学園に私は入れられたと思ってるわ」


「ありがとう、貴重な話が聞けた」

「ふーん、あんたはなにかないの?昔話」

「俺は雷帝に拾われるまでの記憶が無くなってるんだ」

「えっ...ごめんなさい」

「ん?なんで謝られるんだ?」

「いや、えー?」

「ティアに聞いた方が面白い話は聞けると思う、うん、2人の様子を見てくるさ」

「......襲うんじゃないわよー」


なにか考え事をしていた様子だったが、からかってきたからいつもの調子に戻ったのだろう


「ないないって」

笑いながらセレナにそう答えた



私は周りからいつも期待されて、見張られていた

全部の行動に付き人がいて部屋も感知魔法をかけられていた


いつしか自由に憧れて1人を望んで

そんな時、炎帝の子が学園に入学すると聞いた、学園では帝の特別扱いは無いと聞いた


私は学園への入学を望んだ


でも、親は学園に寮を建てそこにスタッフを送り込んできた


監視は少し優しくなったけど、周りの生徒の目は厳しかった



入学してから初めての大規模対戦の時だっただろうか、炎帝に会った、会ってしまったのは


人数の規模も実力も上のあいつに私は何も出来なかった


地帝と炎帝の上下関係は自然と広まり、いつしか落ちこぼれとまで言われ始めていた



そして、前回の対戦の時

また炎帝に負けた私にあいつは私自身を要求してきた



「なぁ、おい、俺が勝ったんだからさ、お前、俺のものになれよ」


両膝をついてへたりこんでいる私に

数人も女性を侍らせながらあいつは私に言ってきた


「...勝った?調子に乗らないでください、私はまだ実力を出し切ってないわ」


それは強がりで、言葉はただの油断だ

それであいつが納得してくれたのは自信があるからなのだろう


「ほぉ、いいぜ、次お前が負けたらお前の寮ごと貰ってやるよ、お前、見た目はいいからよ、可愛がってやるよ」


「...これ以上話すことはないわ」

そう言って私は逃げようとした


「まてよ、おらっ」

「きゃっ!熱っ...なによっ!?」

「くっくっ...印だ、帝なら分かるよなぁ?約束は嫌でも守らせてやるよ」


背を向けた私にあいつは焼印を付けてきた

侍らせている女性は全員焼印がついている


時期的に次の対戦は寮ごとだった

印を研究した

炎帝寮の人を脅し、ポイントを分散させるように作戦を立てるようにした

旗は持ってこさせるようにした


上手くいくはずだった



でも、あの人は、フェルは、作戦を台無しにしてきた

私にそれだけの力があればもっと上手くできただろうか



学園の入学条件は緩い、だから歳は基本分からない、でも歳下だろう

そんな彼だけど、もっと甘えたい

優しくして欲しい、求めてほしい


あの氷の球の中の時のように

帝である私といて欲しい

地帝は、ソエルは寄りかかっても壊れない存在が欲しかったんです


背もたれのない椅子は寛げないですもんね

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