15話 もう少し、このままでいて
地帝が決壊してしまった
ほんとごめん、マジごめん
「何をコソコソと話している?」
炎帝の独り言が終わったようだ
「地帝、降参しろ、すぐにだっ」
「なに?あなたも弱みを握ったからやらせろって言いたいの?」
うーん?
「違うっフラッグ戦を終わらせるんだっての」
「嫌よ、炎帝の女になんてっ」
...複雑だな
どうする?
いや、どうしようなくないか?
『話は聞かせてもらったわ!』
『はいっ!』
突如セレナとティアの声が響く
「なっ!?」
「えっ!?」
俺と地帝はビビる、そりゃビビる
話は聞かれていた訳だから...
炎帝は...
やれやれのポーズとニヤニヤとしたゲスい笑顔をしながらこちらに歩いてきていた
「何とかなるのか?」
恐らく樹印と水紋と予想し、口に出す
『地帝が私たちの傘下になればいいのっ!』
「それはっ...でも、うぅ...」
『地帝の旗は取りました、フラッグ戦は終わらせれますっ!』
ティアは旗を確保したらしい
「そうね...炎帝よりかは...あっでも...これどうしよう...バレちゃう」
足元に広がってしまっている
「セレナっ凍らせるっ!」
大声で叫ぶ
「ウォーターワールドっ!」
反対側の扉のほうからセレナの魔法が発動する
「あ?協力技か?」
炎帝は真ん中より少しこっちに来ているぐらいだった、なら見えてないはず
「地帝、防音室を作る、そこで言えっ」
炎帝の周りの水は蒸発していくが、大量の水は炎帝を回り込んでこちらに来る
「アイスボール、氷晶っ!」
地帝をボール型の氷に入れ、印で蓋をする
氷の中では動いて喋っているみたいだ
上手くいった
「なんの意味もないようだなっ!」
上機嫌の炎帝に氷の塊を撃ちまくる
「はっ!きかんっ!出直してきなっ!」
氷の塊は炎帝に当たると白い煙をたてながら消えていく
「それは擬似煙幕だ、そうだな出直してくるよ」
「あ?なに訳分から...」
炎帝の話が途中で聞こえなくなる
視界が一瞬白くなった
フラッグ戦が、終わった
視界が戻り始める
完全に視界が治る前に、後ろをむく
「氷雪世界」
今日1番の魔法を使う
天候、地形ごと変える魔法
まぁこれも炎帝には効かなそうだなぁ
「氷獄」
目につく人を片っ端から...
閉じ込めようとしたけど
うん、また、悲劇を生むところだった
そして最初の犠牲になったのは地帝だった
大規模対戦が終わった、しかし外は季節外れの悪天候により、皆はすぐに室内に戻っていく
この天気、この吹雪は魔力を凍らせる
つまりは生き物を殺すのに直接影響のある天気だ
魔力が凍り、無くなると体温維持が困難になる、やがて凍死という形で息絶えるだろう
まぁ生き物の本能が危険信号を出すから
うまく決まることなんてよっぽどないが
フラッグ戦が終わると対戦の開始場所に戻る、破損し、消滅した屋上扉は戻らないので
屋上に向けて魔法を放った
運が悪いと第二の地帝を生み出す可能性があったが
ブレンド寮の奴らが屋内の方に、つまりは階段への扉に走り出す、すれ違いざまにものすごく睨んでくるのがマジで怖い
「ちっ...」
「クソが」
「簀巻きにしてやろうか」
すれ違いざまに言いたい放題だなおい
氷の檻...ボールの形だがに入っている地帝の方へ行く
上から穴を開け入り、閉じる
「よっと」
「ひぐ...もぉいやぁ...」
体育館座りで横になって涙を流して弱音を吐いている地帝がそこにはいた
「もうムリ、寒いし、凍えじのう...」
自分は火魔法が使えない、あっためる方法は無い
「あ、すぐ解除する」
というか自分で体温調節してくれないかな…
「やぁだぁ...解除しないでぇ」
足に絡みついてくる地帝
帝の威厳なんて感じられないが
「あの、えっと、地帝さん」
「はいはい、私がもうすぐ凍死する帝ですよぅ」
どうしろと
どうしろと!
「いや、本当にどうしろと...」
「抱きしめて」
はい?
「いや、あの」
「はよ」
涙目で頬を膨らませ
前に手足を伸ばし
腕をカモカモッとやっている地帝
...
地帝を抱きしめる
明らかに体温は向こうの方が高い
いや、熱いじゃん
「ひっつめたっ」
「はい、なんで...」
離れようとする
が手足でホールドされる
「冷たいけど暖かいの」
なんじゃそりゃ
「うぐ...もう、地帝やだ」
愚痴が始まるみたいだ
「そうですか」
「立場が辛い」
その立場が自分は欲しいのだけれどね
「...そうですか」
「みんなついて来てくれるんだけどね」
寮でのみんなは笑顔だった
「はい」
「期待が辛いの」
...それは
「...」
「頑張りましたね」
頭を撫でる
「...!」
ビクッとした後
顔を押し付けて泣いている
地帝は...いや、この人はどんな人生を辿ってきたのだろうか
雷帝は...ミスラは一日中ずっと色々なことを教わっていた
人の上に立つものとして
恐らく地帝もそうなのだろう
しかし今日
心が折れた、折ってしまった
ブレンド寮で見た気品さも優雅さも
今はどこにも見当たらない
「地帝...エル、は頑張ったよ」
何も知らない、無責任な言葉だ
「たまには休んでもいいさ」
どうして自分は適当な甘い言葉を掛けてしまったのだろうか
心を折ってしまった罪悪感だったのだろうか
「また、帝として頑張れるまで、休んでも、誰も責めないって」
「...ほんと?」
「ああ...」
「もう少し、このままでいて」
氷の玉の中からは吹雪が激しくて周りをよく見ることは出来ない
しかし、だいぶ暗くなっているのは分かる、日はもうすぐ完全に落ちそうだ
おちたな
この物語のヒロインです
実はフェルが来る前に
閉じ込められて出られないと分かった時の絶望を味わってたり