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氷の魔法を使う者  作者: ファイル
11/64

11話 ふつふつと怒りが沸いてくる

魔帝の寮に向かう


炎帝寮はとにかく広かった

「ここは?」

「まだ炎帝寮です」


...広いなぁ


しばらく雑談をしながら歩いていると

林にはいる、すると前方に建物が見えてきた

「あれか?」

「そうです」


しばらく歩き全貌が見えてきた

なんというか

「普通だな」

「そうですね」


炎帝寮の建物は5つあったが、それが2つで中腹に橋があり廊下のようになっていた


「中は校舎のような感じで部屋があり、近所づきあいはいいみたいです」

「へぇ」



「だけ?」

「だけです」


...いたって普通だな

「魔帝ってどんなやつなんだ?」

「うーん、どこかで見たことあるような気がするんですけど...それ以外には特にないですね」

「...えっ奇抜なセンスとかも?」

「まぁそういうのは特にないですね、普通すぎて普通な感想しか出ませんでした」


普通だ



多くの人族が生きていく上で普通ってありえるのだろうか、何が普通でどう普通なのか、少しこだわりがあるだけで普通から離れるのに


あとからの事だが、ティアが普通と言い張ることにもっと違和感を持つべきだったと思った

【普通の基準】って



「まぁ、何も無いなら次行くか」

「そうですね」


また歩き出す

もうすぐお昼になるだろうか

校舎が中心に位置しているらしく、寮巡りをするのは距離があり、だいぶ時間が経っていた


「次は地帝寮だったか?」

「はい、見たらお昼にしましょう」

「そうだな」


しばらく歩くと前方に見えてくる苗木の壁


「...ティア」

「こちら、地帝寮となっております、正面の門からしか中に入れず、周りは庭にある苗木によって見ることも難しいです


というわけでお昼にしましょう」


「何がそんなに嫌なんだ...」

「だってぇ...」

ここまで嫌がるティアも珍しい

苗木の隙間から見ようと思ったが、庭が相当広いらしく、建物が遠くにあるのが見えるだけだ


「とりあえず正面の門まで行ってみるぞ」

「うえぇ...」

とぼとぼと付いてくるティア、手をぶらんと下げてまで嫌がるっていったい


正面の門らしき方へ来た、まっすぐ進めば校舎なところからもこちらが正門だろう


正門の横には小さな小屋があり門番...?が見張っている


「ブレンド寮に何かごようですか?」

門番らしい体のでかい男に話しかけられる

「ん?ただの観光だ」

「あっ」ティアが小さく声を上げる


「そうかそうか!是非とも自慢のブレンド寮を見て行ってくれ!おうい!寮を案内してくる!門番頼んだぞ!」

「えっ!?いや、少し見るだけでいいんだがっ」

「遠慮すんなって!ほれ、こっちだ!」

グイグイと背中を押される

あちらも善意なことで断りずらい

「うう、ガーデンツアー7回目ですよ...」


ぼそぼそとティアの方から何か聞こえてきた


いや、何も聞こえなかったことにしよう




30分のガーデンツアーはお昼の時間だったこともあり、助け舟がきた

「庭にいる皆さんもお昼をご一緒にどうですか?」

気品さと優雅さが滲み出ている感じ


まず、ガーデンツアーに捕まった別の寮生は俺らだけではなかったようだった

そして寮の扉付近の花壇の説明をされていた時に扉から声がかかった


綺麗な明るい茶色、栗色とでもいうかな

の美人さん


「...あれが地帝です」

コソッと補足を入れてくれるティア


「エル様!エル様からの誘いだぞ!断らないよな?」

あの、門番さん...目が怖いです


断れるわけなかった


広い部屋の長机に座らされる

結局お昼は貰うことになった

寮の人達はニコニコとしているが、連れてこられた自分たちは...

オドオド、が近いかな

テーブルマナーとかあるかな


それくらい雰囲気が緊迫していたが

出された昼食はシチューだった


エルと呼ばれていた地帝さんから質問などはとんできたが「えぇ」とか「まぁ」とかでしか返せなかった


地帝と喋る度に寮の人がものすごく睨んでくるのだ

なんだここ、もう帰りたい


「ところでフェルさん...とティアさん」

「あ、はい」

「この後時間はありますか?」

ニコッと微笑みながら聞いてくる地帝


周りの目線が痛いほどささる

断れないんだよなぁ...


「ええ、ありますよ」

どこからかチッと舌打ちが聞こえた気がする


どうしろと


「こちらに」


流されるままついて行く、この誘いは2人だけのようだ

寮生もついてきておらず少しだけ気分が良くなる


庭の少し行った先に鳥籠のような建物?小さなテーブルがあり、上には甘味が置かれている


午後のお茶会


どこぞで聞いたことのある言葉だが、それが1番当てはまる


「どうぞおすわり下さい、先程はうちのものが失礼しました、どうぞエルとお呼びください」

「あ、いえいえ、では失礼して...」


「どうしてここに?」

ティアが攻めの質問をしていくぅ


「あなた達と会話がしたかっただけですよ」

「お兄さまにこんなものまで付けておいてですか?」


そう言ってティアは右の内側の手首を出す、そこには淡く緑色に光るマークがあった

ふと、自分の右手首を見てみると同じように緑色に淡く光るマークがある


「なんだこれ」

「お兄さま、これで多くの情報がこいつに伝わっています」


「あらあら、こいつだなんて、失礼ね」

そう言うと エルの手のひらが淡く光る

「ひうっ」

突如声を上げるティア


見るとティアが手首を押さえてエルを睨んでいる


「...何をした」

「少し、刺激を与えただけですよ」

笑みは崩さずに言うエル


「どういったことを盗み取られている?」

「行動、会話、特異魔法のことも恐らくは」

ティアが答えてくれるが、だいぶ筒抜けになる内容だ


「そうそう、それで改めて聞きたかったの、氷魔法使いのフェルさんの特異魔法が【魔素生成】だけなのはどうしてかしら」


筒抜けすぎるだろう

「...この印について教えてくれるなら教えよう」

苦し紛れすぎる、そもそも向こうの方が今の立場は上だ


はぁ、といった感じで答えるエル


「まぁそれくらいなら教えますけど、それは樹印って言います、この寮に入った時に門番に種をまくように言ってあります、盗聴、盗撮と特異魔法を知ることが出来ますね」


ティアの言った通りか

「ティア...いつ気がついた?」

「ごめんなさい、2回目に入った時なのでだいぶ初めの頃です...ごめんなさい」

もはや泣きそうな顔で謝るティア


ふつふつと怒りが沸いてくる


「この樹印は呪いの類いで、樹印について喋ることが出来なくなるんです、ティアさんは悪くないんですよ?今は呪いを弱くしてますけど、離れるほど強くなります」


「消せないのか?」


「随分と怖い顔になってますよ?

...消せないことはないですけど」


「なら!」

勢いがついて立ち上がる


が手首の印の光が強くなり、動けなくなる


これも樹印の力なのか?



「なら、なんでしょうか、立場を考えて発言してくださいね?」

にこりとするエル


こいつ...!


動けるようになり、力なく座る

下手なことは聞けなくなった

まずはここから立ち去ることを考えたい


「要求は?」

「まずは特異魔法の説明を」


「...元々は【魔素生成】だけが自分の特異魔法だ、氷精に殺されかけた時、呪いをかけられた、それが氷魔法だ」

「妖精に会って良く生きてましたね」

「運が良かっただけだ」


「ふーん、【魔素生成】は常時?」

「ああ」

「優秀ね」


魔法を使う時、周りの魔素と、自身の魔力を使い魔法を使う、魔素はそこらに溢れてはいるが魔法を連続で使ったりすると周囲の魔素は尽きる


魔力があっても魔素が尽きたら魔法を使うことは出来ない


だから自分の【魔素生成】は公にするべきでは無いものだ


「それで、要求は?」

「うーん、もうすぐ大規模対戦があるのは知ってるかしら」

「ああ」


「寮同士の戦いだけれど、あなた達は私たちの近くで陣取りなさい」

「陣取る?」

「えぇ、どうせまたフラッグ戦でしょうからね」


フラッグ戦は最初に自分たちの旗を固定して相手の旗を持ち帰る戦いだ

奪われた時点で得点が発生して敵の旗を自分たちの旗まで持って帰ればさらに得点が増す

数チームある時はポイントで順位を決める



「場所は決まってるのか?」

「ブレンド寮は屋上に陣取るわ、4階辺りにはいてね」

「...わかった」


「他の所から旗を奪ってきたらギリギリで私たちに奪われてしまう、そういった感じよ」


ギリッと歯をくいしばる

しかし動けなくするほどの樹印がある今、何も出来ない


「屋上への階段は2つあるけどそっちの守りは大丈夫なのか?」

「あら、私は地帝よ?それくらいなんてことないわ」

にこにことしながら答えるエル

もはや煽っているようにしか見えないが



「わかった、こっちのことは勝手に盗んでろ」

そう言って立ち上がり

そのまま後ろを振り返らずに庭から出ていく




ちなみに途中からティアはぐすんとしながら甘味をちびちび摘んで、紅茶を飲んで

「あ、おいしい...」

と呟いていた


可愛いなおい

魔法は魔素を消費して使います

ティアはしょんぼりしてます

かわいい



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