10話 私にだって知らないこと
強奪魔法事件から数日経って、落ち着いた日々が少しだけ続き始めたある日
ステラも昼には一緒に食べるようになっていた
「もうちょっとしたら寮ごとの大規模対戦をやるみたいよ」
「キタコレっ!」
ガッツポーズをしながら席を立つ
盛り上がるやつがいると冷静になったりすることってあるじゃん
多分周りのみんなはその状態だと思う
「うわ、なに舞い上がってんのよ戦闘狂」
「いや、ごめん、今のは自分でもないと思うわ」
「...ふーん、まぁ昨日の会議で言ってたから確定でしょうね、詳細はそのうち来ると思うわ」
「あーいいねぇ、大規模対戦、響きがいい」
「フェルさん、もうちょっと落ち着いてください」
「やーわかるぜ、こう、なんというか熱くなるよな!」
「わかるかロック!」
「おうよっ!」
ガシッと手を握り会う俺とロック
「うーん、男子ってほんとバカね」
ステラ、聞こえてる
「ん?ロックはどこの寮なんだ?」
「んあ?えーっと、炎帝の所になるんだっけか」
「ほぅ、みんなは?」
周りの昼食を取っているみんなにも聞いてみる
「炎帝のとこっすね」
「魔帝の寮です」
「自分も炎帝のとこだわ」
「炎帝のとこは多そうだな」
「1番大きい寮ですね」
「炎帝、魔帝、俺ら...地帝はいないのか?」
周りに聞いてみるが誰もいないようだ
「ティア」
「地帝の人達は関わりずらいのと、正直気持ち悪いのでここに誘いませんでした」
「えぇ...」
「まぁ、うーん、じゃあ勝負のルールも変えていいか?」
「構わんぜ」
「まぁ」
「フェルさんについてきますよ」
1人嬉しい事言ってくれる奴がいるな
「ルールはランダムで、3対3でいいかな」
「おーけー」
「面白そう」
「じゃあ賭けは1人につき5ポイントでいいんじゃないかな」
「お、それいいね」
...最近気がついたんだけど賭けの報酬の氷魔法へのみんなの興味が薄れてきたと思うんだ、いや、ナイツに色々と教え始めてから
氷魔法の慣れとか説明してからなのかな?
そのうち誰かに聞いてみよう
◇
この学園は校舎などの他に学生寮がある、建物の使い回しはあるが寮ごとの結束は深い、と思う
炎帝の寮は5個の建物が管理下で間の広場や近くの畑も炎帝寮の土地らしい
地帝は...ティアから聞いただけだが立派な庭とがーでにんぐ?とやらをしていたり、お茶会と呼ばれる会を開いてたりするらしい
魔帝は以前に闇帝がいた寮をそのまま利用しているらしく、とりあえず帝だからトップねみたいな感じらしい
名前も各々あるらしいけど、自分は知らない、ときあめ寮はステラも仲良くなろうと努力しているから、まぁいいんじゃないかな
つまりはこの学園の土地面積はすっごい広い、森も川も湖もある
山はないらしいけど
他の領土に行くには特別な時にしか使えない転送陣で王都に行く必要がある
学園内のことは学内で処理する、独立に近い状態だ
賭け勝負をグループ事にやり始めて数日経った休日の朝
ティアからある提案をされた
「お兄さま、学園の探索、してみませんか?」
「んー?別にいいけど」
こういうのは最初にやる...いや、十分最初かな
「少し準備してきますね」
パタパタと部屋から出ていくティア
休日...もいつも通り教室に行って賭け勝負してるからな...
みんな何してるんだ?
「はっ...服は学生服じゃない方がいいのか!?」
「あ、いえ、いつもので大丈夫ですよ」
いつの間にか戻ってきていたティア
まぁ他の服なんて寝巻きとかしかないんだけどね
いつもの学生服を身につける
ここの学生服は青の濃い色がメインの服で個人的にかっこいいから気に入ってる
うん
女性の学生服も...どうなんだろう
可愛いんじゃないかな
「それでどこ行くんだ?」
「建物をめぐり回ってみようと思いまして」
ときあめ寮から出る、周りは森に囲まれていて、木の隙間からちらっと校舎が見える、洋館風の建物で古びたらゴーストハウスになるのだろうかと思うような風貌
いつもの道を歩いていく
「こっちは校舎だけど?」
「ときあめ寮は何も無い森に建てたので、校舎を1度通らないと他のところに行けません」
なんと...
校舎、4階建てで特別な土魔法を使って出来ている、正直なところ建築技術がどうなってるのかさっぱりだ
「でかいよな」
「それに広いです、まぁ炎帝寮の方が広いんですけどね」
「そうなのか、じゃあ炎帝寮に行ってみたいな」
「わかりました、こっちです」
いつも自分たちは裏門から出入りしている
だから正面の門から出るのは割と違和感があったりする
「...あれのこと?」
「はい、前方に見える建物が炎帝寮でもう少し歩くと炎帝寮の土地になります」
ひっろ
同じような5個の建物が形取るように並んでいて中央には噴水のある広場が見える
いったい何人同時に住めるんだ...
「学園の生徒の半分近くがここの寮を利用していると聞きますね」
多いな
「あら、二人とも、おはよう」
「先輩、おはようございます」
「おはようございます」
赤髪ポニテ先輩が後ろから声をかけてくる
「先輩は休日って何してるんですか」
「私はー休日ってなんだったかしらね...」
おっと、思った以上に黒い返事が返ってきた
気まずい空気が流れる
「休日もずっとあっちこっちに行ってるんですか?」
ティアが聞きづらいことを聞いていくぅー
「...そう、ね いやー下っ端は辛いわー!ティアちゃんみたいな移動魔法持ちが手伝ってくれると助かるんだけどなーチラッ」
チラッまで口で言ったぞこの先輩
「あ、無いです、行きましょう、フェルさん」
途中から沈んだ雰囲気から明るくなった先輩の誘いに断ると手をグイッと引っ張り先に行こうとする
「あ、おう、失礼します、先輩」
「はいよー」
手をヒラヒラとする先輩
少し歩き炎帝寮の建物の近くまでくる
「...割といきなりだったけどどうかしたのか?」
「あの人は怪しいのです、下っ端なはずありませんし、私が、あの人をよく知らないのです」
...
ティアの情報量は異常と言ってもいい
ここの生徒のプロフィールくらいなら
聞けばすぐ出るくらいには集めてあるだろう
そのティアが知らない
「...お兄さま、私にだって知らないことぐらいありますよ」
むっ、としながら見てくる
「氷精の弱点とかな」
「もぅ!からかわないでください!」
本当にあの先輩は何者なんだろうか
氷精と氷の女王さんは同一人物です
人ではないけど
空き教室はフェル達に独占されつつありますが他にも空き教室はあるので問題はないです
空き教室が多い理由はいずれ...